SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPフェルナンド戦

「作戦内容を確認します。本任務で討伐対象となるSCPはオブジェクトクラス、ユークリッド。

 食人鬼フェルナンドよ。このSCPは巨体の男性であり身長は二メートル四十センチ以上、両腕は特に発達しているため格闘戦はおすすめできないわ。

 その耐久性も高く通常兵器では歯が立たない。

 そのため彼を倒す手段として君が持つ精神攻撃を推奨します。精神感応とは逆に君の精神を流出され相手にダメージを与える。

 しかしこの攻撃を行うためには君自身がバッドトリップに近い状態になる必要がある。どの道危険であることに変わりはないわ。

 また彼がいる場所はイラク首都であるバグダッドであり被害は最小限に抑えてとのことよ。勝つか負けるかっていう勝負だっていうのに条件が多すぎるわね。

 作戦内容は以上。強敵だけど帰ってくるのを信じてるわ』



 守人はヘリに搭乗しバグダッドを目指していた。サマーワからではタドムルもそうだがバグダッドも遠い。

 ヘリで急行したとしてもすぐには着けない。守人の飛行行動ならもっと早くにたどり着けるが暴走の危険性を考慮すればそれもできない。

 守人は座席に座り移動時間のじれったさをじっと待っていた。時刻は昼を過ぎている。表面上は静かでも内心ではまだかと燃えたぎっていた。

『見えてきたわ』

 麗華からの報告に守人は顔をあけた。扉の窓から見てみれば進行先に大きな町が見える。イラク首都バグダッド。

 その町並みはサマーワやタドムルのような中東都市に比べ文化的よりも近代的だ。整備された建物にホテルだろうか、十数階建ての建物もある。

 道路には街路樹が並び緑も見えきれいな町に思える。

 しかしこの町にいるのだ、恐るべきSCPが。食人鬼フェルナンドは文字通り人を食べる。現在は活動を停止しているらしいが腹を空かせば何をするか分からない。

 危険極まりない相手だ。

『バグダッドは今現在でも頻繁にテロ事件が起きている町よ。イラク戦争以来この町で十五万人以上がテロによって命を落としている。

 今回もその事件の一つとして発表されているわ。SCPのいる地区周辺は封鎖しているけれどこの町全土から市民が避難しているわけじゃない。

 作戦区域からの撤退、また対象の逃走を許すことはできないわ』

「了解」

 守人は扉を開いた。入り込んでくる強風を受けながら地上を見つめる。敵の位置情報からフェルナンドの場所を探すが、そこでふと守人はつぶやいた。

「……十五万人か」

『?』

 さきほど麗華が言っていた話。この町でテロはまだ終わったものではない。今もなお日常に潜む脅威に怯えて過ごしている。

 いつ、また自動車が爆発するのか分からないのは恐怖でしかない。

 自分の境遇が幸福だと思ったことはない。自分の人生が恵まれていると思ったこともない。だがここに住んでいる人々に比べればまっとうな生活だったのだろう。

 そして、犠牲となった者の中に、いったい何人彼女のような人がいたのだろう。人のために笑うことができる人が。 

 守人は追憶から現在に目を向け、熱の入った声で言った。

「これ以上増やせないな」

『……ええ!』

 その言葉に麗華も力強く答えた。

「もうすぐ降下ポイントだ!」

 パイロットが背後にいる守人に大声で呼びかける。それと時同じくして守人も敵を視認していた。

 小さな公園に立つ大きな人影。上空七十メートルからでは小さな点にしか見えないが確かに見える。
「ん?」

 しかし、よく目を凝らせば影は二つあった。互いに動きあっているように見える。

『すでに誰かが接触している!?』

 麗華はすぐにキーボードを叩き守人が見る映像を拡大させた。そこにはタキシード姿の大男と、青い髪をした軍服の女性が映っていた。しかも戦っている!

『すでにフェルナンドと何者かが戦闘中! いったい誰が?』

『戦闘中……?』

 守人は意識を集中させた。二つの影は素早く動き地面は爆発でも起こったかのように砂煙を上げていた。

 怪力と耐久力を併せ持つフェルナンドと互角に戦っている。普通の人間ではない。

「まさか、彼女もG4か?」

 ISILと戦ったあとで対峙したフード姿の男を思い出す。この町にいる超然的存在はSCPだけではない。守人と同じ超人もだ。彼女もその一人なのか?

 事情が変わった。麗華は急遽牧野に確認を取った。

『牧野、どうするの?』

 質問に牧野は思案するが一刻の猶予もない。すぐさに判断を下した。

『本作戦の主目的はフェルナンドの討伐です。彼の撃破を優先して戦闘をしてください。それ以外と敵対する意思はありません。しかし戦闘中の女性が友好的とも限りません。最終的な判断は現場に委ねます』

「了解」

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