SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPゾンビ病戦 6

 地上に残る軍隊の目を引きつけながらファフルディーン城へと向かっていく。クリーム色の大地と青空の狭間を進む。

 城のある丘の上空へと達した。丘の上にぽつんとそれだげが建つさまは存在感がある。

 そこから足下に目をやれば、城壁の内側に十五体のゾンビが徘徊していた。

 その中には、軍人の姿もある。

 守人は急降下し城の中に入る。両足を地面に着けゆっくりと立ち上がった。城の中央に立ちゾンビたちに囲まれている。全員が空から振ってきた守人に振り返り視認した。

「今の状態は、お前たちも辛いだろう」

 誰もすぐには動かない。認知能力の低下のせいか、それとも彼らも守人の存在に驚いているのか、それは定かではない。だが、やることに変わりはない。

「終わりにしよう」

 ゾンビたちの意識がようやく回り守人へ襲いかかってきた。観光客から現地の人。そして今回の作戦に参加した軍人たち。それらが自我を持たずただ人を襲う化け物となって襲ってくる。

 そんなの、誰一人望んでいないはずだ。誰だって、ゾンビになんてなりたくなかった。

 他人を、家族を、誰でも襲う化け物なんかに。故郷に残した家族と別れたまま化け物なんかになるなんて。

 そんな悪夢を一瞬でも早く終わらせるために。

「はああ!」

 守人は拳を振るった。蹴りを放った。群がるゾンビを全員念じて浮かせると地面に叩きつけた。

 城を壊さないように注意を払いながら一人ずつ確実に潰していく。

 これが通常の人間なら不可能だったろう。頭部以外は有効打にならないというタフネスとリミッターが外れた筋肉は車を持ち上げられることもできる。

 それを一人で引き受けるのだ。化け物を倒す、兵器として。

 守人の戦いにより敵は残り一体にまで減っていた。辺りには死体ゾンビの遺体がいくつも横になっている。

 守人は一足で最後の目標のもとまで飛び手刀により首をはねた。頭が落ちる。今度こそその生涯を終わらせて。

 守人は立ち尽くす。辺りは死屍累々でただ一人守人だけが立っていた。

 この作戦に三分もかからなかった。

「そこまでだ」

 そこへ声がかけられる。見れば城の周りをぐるりと兵士に囲まれ全員から銃を向けられている。
 そこには司令官の男もいた。

「両手を上げ膝を地面につけろ。これよりお前を拘束する」

 見れば彼は本気だ。こんなことを冗談でできるはずもないが味方でもないらしい。

「お前には感謝している。しかし分かるだろう。お前にはいろいろ聞かなくてはならない。ここで逃がすことはできん」

 突然ゾンビが現れ、そこに通じているらしき男が現れたのだ。さらにその力も常軌を逸している。そんなものを見逃せるはずがない。

 彼は正しい。守人には彼の判断を否定するつもりも非難するつもりもなかった。

 するとプロペラ音が城の上空に現れた。

「ファースト、乗れ!」

 藤森だ。扉を開け大声で真下にいる守人に叫んだ。

 守人は数メートル飛びヘリへと搭乗する。守人を乗せたことでヘリは動き出した。

 が、逃がすまいと兵士たちが一斉に銃口をヘリに向ける。

「撃つな! 墜落したら城が壊れるぞ! 撃つな!」

 ヘリはファフルディーン城を離脱していった。丘を越えていこうとする。

 が、城から離れたことで兵士たちも動き出した。携帯式防空ミサイル、スティンガーを担ぎ発射してきたのだ。

 藤森は後方を確認しミサイルが来るのを知らせる。

「撃ってきたか。ファースト、止めれるか」

「無論だ」

 守人は座席に座っておりミサイルに背を向けていたが、こと剣や弓、銃器に対しては敏感だ。目をつぶっていても感じ取れる。

 守人は向かってくるミサイルを念じ、それによりミサイルはくるくると回りはじめ軌道を外れると爆発していった。

『作戦領域を離脱して。そのまま帰還してちょうだい』

「了解」

 敵からの追撃もなくなり守人は無事作戦を終えていった。 

 そんな守人たちが乗るヘリを指揮官は複雑な表情で見つめていた。彼方へと消えていくヘリを見つめる彼に部下が近づいてくる。

「すみません。逃げられました」

「分かっている。全員よくやってくれた。どのみち誰がやっても駄目だったろう」

 正体不明の男の戦力は目の当たりにしている。内心では逃げてくれてホッとしている面もあった。

 もし戦っていればどうなっていたか。それにタダで逃げられたわけではない。

「逃げられはしたが得るものは得た。写真は撮れているんだろうな」

「はい」

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