SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPゾンビ病戦 5

「ゾンビの次になにが出るかと思えば。いつからここはハロウィン会場になったんだ?」

「そう言うあんたはコマンドーのコスプレか?」

「ハ。ムカつくやつだ」

 指揮官はそう言ったあと改めて守人のことを舐めるように見つめてきた。頭部はヘルメットで保護し胴部や四肢を守るアーマー部分。

 けれど体積は大きくはない。いったいどんな技術でこれができたのか想像もできない。

「名前と所属は? 目的を言え」

「目的だけ言おう。現在遺跡跡地に展開しているゾンビ病感染者の殲滅、それだけだ。知っての通りやつらの攻撃を許すとそこから感染する。部下をこれ以上敵にしたくはないだろう、俺に任せて欲しい」

「お前はそんな冗談を言いに来たのか」

「本気だ」

 両者互いに相手を睨みあう。ヘルメット越しの視線でも相手には守人の本気が伝わっているはずだ。

「俺はここを任されて立っている。それが正体不明の外部の人間に好きにさせると思ってるのか?」

「それは承知している。その上で頼みにきた。そちらの作戦の邪魔はしない。代わりに五分でいい、目をつぶっていて欲しい」

「五分で終わらせるって?」

「そうだ」

 協力は求めない。相手にも立場がある。彼の言う通りいきなりやってきた不明な人物と共闘というのは組織的にも無理な話だ。

 だからこそ、見なかったことにしてくれればそれでいい。それだけで十分だった。

「なにもしなくていい。互いに問題を起こしたくないだけだ」

 守人の主張をどう思ったか。指揮官は黙っていたが、静かに話し出した。

「一つの部隊が突入したのち敵と戦闘をした」

「…………」

「優秀な連中だったが慣れない敵に不意を打たれたのか噛まれてしまってな。そいつらから通信が入ったんだ」

「…………」

「敵を引きつけながらファフルディーン城へと行くとな。この作戦は俺の部下たちが命を捨てて繋げてくれたバトンだ」

 彼の言葉、そこには譲れない強い思いを感じた。これは組織的な問題だけではない。彼の心情の問題でもあった。

「そのバトンタッチをお前に譲れって? 俺には責任がある。素性も知らないやつに任せられるか」

「なら利用しろ」

「なに?」

 その彼が、守人の一言で眉をゆがめた。

「任せられないなら利用すればいい。空爆の許可申請が下りないのは聞いている。かといって戦闘となれば犠牲が出る。俺が一人でやる。その後俺が不審な行動を取れば俺を撃てばいい」

 彼にもこの作戦に対する思いがある。それを譲れと言っているのだ、わがままなのはこちら側の方。

 でも、こちらにも譲れない理由がある。

「この作戦に対する熱意は受け取った。だがそれだけで危険を冒すのが良策でないことは分かるはず。今生き残っている部下のために、俺を利用しろ」

 危険なのは自分だけでいい。守人の言葉に込められた熱意を今度は指揮官が受け取った。

「なんでお前はそこまでする? そういう命令か?」

 自分だけでいい。下手に同行させると仲間が敵になるリスクがあるからというのもある。しかし、だからとしてもここまで高い目的意識はなんなのか。命令か? いいや違う。

「俺の意思だ」

 守人は決めた。この力の使い方を。それを今こそ使うべきだから。守人には一切迷いはなかった。

 そこへ慌てた様子で一人の軍人が駆け寄ってきた。

「司令官! 部隊から報告が。包囲した敵が動き出しています!」

「ちぃ!」

 時間がない。このままではせっかくの状況が崩れてしまう。空爆の申請許可はまだ下りず、このままでは部下たちによる戦闘だ。

 指令官は苦渋の面もちを浮かべ、守人を睨みつけるように見た。

「本気で撃つぞ?」

「俺も本気で戦うさ」

 守人は反転した。ヘルメットに手を当て歩き出す。

「許可が下りた。ファフルディーン城にいる残党は俺がやる」

『了解よファースト。ぜーんぶ聞いてたけどね』

 目的地はファフルディーン城。そこでこの作戦を終わらせる。

『時間がないわ。ファースト、能力制御の上限を上げて。飛行行動により急行!』

「了解!」

 守人はアスファルトの地面を蹴りそのまま飛んでいった。

「まじか」

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