SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPゾンビ病戦 4

「はい、それは、まあ」

「おい」

 守人の質問に男が答えるが、隣の男が口を挟んだ。

「この男だろ、正体不明の侵入者って。捕獲対象にそんなこと教えていいのかよ」

「お前は黙ってろ」

 小言で話しているがこの距離なのでばっちり聞こえている。どうやら自分の捕獲命令が出ていたようだが命を救ったからか実力差を知ったからか捉える気はなくなっているようだ。

 教えてくれた男が守人を見る。

「我々は現在作戦区域内にいる敵性体を一カ所に集め、そこで一斉に倒す掃討作戦を展開しています」

「なるほど」

 戦闘箇所が分散しているよりも一点にまとめた方が包囲しやすいのは確かだ。それだけで人員も変わってくる。

「場所は」

「ファフルディーン城です」

 男が指を差し守人は指先を追った。そこには山のような丘がありその上にお城の遺跡があった。

「あれか」

「あそこに全敵性体を集めたあと空爆を行う予定なんです」

「空爆?」

『空爆ですって?』

 麗華が聞き直す。たしかに空爆なら感染の危険はないが破壊の規模が大きくなってしまう。

「大胆だな」

「はい。しかし軍部とイラク政府との話し合いがまだ済んでおらず。難航してるんです」

「そうだろうな」

 この事態をすぐさに解決したいのは両者同じだがただでさえ争乱の中で残った遺跡を失うのは容認できないのだろう。調整がうまくいかないのは簡単に想像できる。

「ここは遺跡の跡地ですからね。これ以上壊すなというのが向こうの言い分です」

「そのせいで俺たちは銃こそ持ってるが爆薬のたぐいは一切の所持が禁じられてる。まったく、ふざけやがって。こんなところまとめて吹き飛ばしてくれよ」

 男の言い分も分かる。命をかけて戦っている彼らからすればすぐにでも実行してほしい気持ちだろう。

『ラークンシティの再現ね』

 いよいよバイオハザード染みてきた。

『空爆による掃討は合理的ではあるが文化的損害は修復できないからな。どちらにも利害がある以上話し合いは終わらないだろう』

「だが、そんなものを待っている時間はない」

 獅子王の言葉に応えつつ守人はヘルメット越しに耳に手を当てた。

「指揮官」

『牧野です、聞こえています』

「俺が現地の責任者と話をつけてくる。俺ならやつらをまとめて倒せる。被害は出さない」

『ファースト、それ本気?』

『…………』

 麗華の質問には答えず守人は牧野の返事を待つ。牧野は黙考しすぐには答えない。数秒の時間を経て彼女が答えた。

『多国籍軍はすでに我々の存在を認知しています。また室長はそれを踏まえた上で今回の指示を出されました。接触による被害はないでしょう。彼らと交渉を。合意を得られればそのまま実行を。もし断られた場合、ここは撤退します。くれぐれも口には気をつけてください』

「了解」

 牧野と話を終え守人は正面にいる三人に向き直った。

「俺が話をつけてくる」

「え」

「現場の責任者まで案内してくれ」

「ええ!?」



 守人は三人に案内され遺跡前にある道路まで来ていた。きちんと整備されたきれいな道路の両側には木々が並んでいる。

 が、そこには装甲車などの軍車両が列をなし物々しい雰囲気だった。突如として発生した異常現象にただでさえ異質な緊張が走る中さらにこの場は騒然となった。

 守人の登場だ。その見たこともないバトルスーツに大声を出す者、唖然と黙り込む者と反応は様々だ。

 装甲車の扉が開けられ中から軍人が降りてきた。部下を引き連れ守人の前に立つ。

 五十代くらいの男だった。軍服と軍帽をかぶり体格はしっかりしている。目つきからも気迫を感じる。

 彼がここの指揮官であることは一目で分かった。

「まさかな」

 その彼の第一声は、落ち着いていたものの驚きだった。無理もない。戦場を経験してきたといえど彼の登場やこの事態は驚きの次元を越えている。 

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