SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

SCPゾンビ病戦 2

 ヘリはそのまま進んでいった。

「藤森隊長! このままではこちらも気づかれます!」

「高度をもっと上げろ! そのまま直進だ!」

 ヘリが跡地上空に近づいていく。守人は立ち上がり扉の前に立った。吹き抜ける強風を一身に浴び眼下にあるクリーム色の大地を見る。

 戦場だ。自分が行くべき場所が足下にある。守人は身を乗り出した。

「守人!」

「ん?」

 すると藤森から声をかけられた。振り返り彼を見てみると、彼は小さく笑みを浮かべた。

「俺に撃たせるなよ? 弾がもったいないからな」

「……ふん」

 気さくに言われるあいさつに守人も小さく笑う。

 体を正面に戻す。その後、表情を引き締めた。

「ファースト、作戦を開始する」

 そして、体を宙に投げ捨てた。

 地面がみるみると近づく。落下の速度は増していき着地まで数秒。

 守人は着地の直前、念動力で自分の落下を停止した。勢いをなくし静かに着地する。あの勢いのまま衝突していたら自分が無事でも遺跡が崩れかねない。

 守人は砂の大地を踏みしめる。見渡す限り砂漠が広がっている。思っていた以上に遮蔽物が少ない。ほとんど更地だ。

「アー……アー……」

 が、そこへ似つかわしくない声が聞こえてきた。道の曲がり角から人が現れた。現地の人と思われる男性だった。

 緩慢な足取りで道を歩き、両腕はぶら下げ顔は正面を見ているが瞳はうつろだ。

 その顔が、守人を見た。瞬間、隠れていた顔の半面が露わになった。

 まるで激しく殴られたかのようにアザとなり、頬はくずれ口内が見えている。血液はゼリー状となり傷口にくっついていた。全身の肌は腐食しており怪我だらけだった。

 まさに思い描くゾンビそのもの。しかも曲がり角からぞろぞろと他の人たちも現れた。観光客だろうか、白人の女性、黒人の男性もいる。

 年齢も人種もさまざまだが、みな共通して細胞の壊死によって肌が崩れ落ちている。

 そんなゾンビ数人が守人を視認した。しばらく見つめたあと、こちらに襲いかかってきた!

『戦闘行動開始! ファースト、頼んだわよ!』

「了解!」

 走り向かってくるゾンビに向かい守人は片手を伸ばす。先頭を走ってくる男を念じて壁に激突させた。車に衝突したかのような勢いだ。

 が、男は揺らめくものの再び走ってきた!

「ち」

 これが普通の人間なら今のでダウンしている。それをなかったかのように走り出す敵に普通ではないことを実感する。

 これがゾンビの耐久性か。守人は苦虫を噛んだように表情がひきつった。頭部以外有効打にならないというのは対処が難航する。その間に感染が広がれば対処が間に合わない。

 まずい! ここで確実に潰さないと、後がない!

 頭部に確実にダメージを与えるなら直接戦闘しかない。

 守人は覚悟を決め敵の攻撃に備える。

 先頭の男が守人に近づき腕を伸ばしてきた。肩を掴もうとしてくるが、守人はその手首を掴むとそのまま男を振り回すようにして地面にぶつける。

 重機でも使ったような音が響きこれが常人なら行動不能は間違いない。

 だが相手に利いている様子はなく守人にも油断はない。手首を掴んでいる手とは反対の拳を振り下ろし男の頭部を完全に破壊した。

 これによりようやく男の活動が止まり伸ばしてきた手がばたりと地面に倒れた。

「アー、アー!」

 が、後続がやってくる。数は五人。目の前で仲間がやられたというのに動揺はない。認知機能の低下でそれすらも分からないか。

 組むのは駄目だ、もし噛まれでもしたら一発でアウト。しかし一人ずつ殴っていればその隙に捕まる。

 直接殴れば確実だがリスクも高い。一戦一戦が緊張の連続だ。

 そこで通信が入った。

『ファースト、獅子王だ。敵は筋力が向上しているといってもしょせんは人体だ。君を覆うエフェクトスーツの耐性なら十分防ぐことはできる。安心して戦ってくれ』

「了解!」

 守人は走った。敵を迎え撃つ。相手の頭部を殴り、次を殴り、腕に捕まってきた男を振るい落とす。そして五体のゾンビどもを全員始末した。

 大丈夫、どこも噛まれていない。敵の返り血も凝固しているためかほとんど掛かっていない。
 すると今度は麗華から通信が入った。

『お見事よ、ファースト。でも油断しないで。感染者の把握は現地部隊の映像からこちらでも行っているけど、完全とはいかないわ。気をつけて』

「大丈夫、やつらの気配は感じている。見逃したりしない」

 守人は走った。曲がり角を進み目に付くゾンビたちを横切り際に破壊してさらに突き進む。

 柱が並ぶ列柱道路に出れば何人ものゾンビがゆらゆらと立っているのが見える。迷いはなかった。守人は走り敵を殲滅していく。

 急がないと!

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