SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

お祝い2

「ずっと気を張ってたら、いつか潰れちゃうよ。そんなの、お姉さん嫌だな」

「姉さん……」

 強引ではあるが彼女は優しい。その気持ちが守人の胸を染めていく。

「おめでとう。君はすごいことをした。誰にもできないことをしたんだよ? たくさんの人を救ったんだよ?」

「俺が?」

「そうだよ!」

 救ったという自覚はない。そのため聞き返す。

「今回の作戦で敵は混乱、組織的な行動はとれなくなるだろうし、そうなれば戦闘の規模も小さくなる。被害が減る。ぜんぶ君のおかげよ? 君が救ったの」

 そう言えばそうなのかもしれない。実感は沸かないが、守人の行いは見えない場所で大勢を救った。

「もう」

 そうした考えが出来ない弟に麗華はやれやれと肩を落とす。

「そんなことも分からなかったの?」

 もし守人がこの作戦を成功させていなければもっと戦いが長引いていたかもしれない。そうなれば犠牲者はもっと出ていた。

 そうした仮定の犠牲を、守人は救ったのだ。

「……でも」

「でもはなし」

 それでも受け入れない守人を麗華は遮り、落ち着いた声で言う。

「認めてあげて。そして自分を褒めてあげるのよ」

 自分を厳しく律するのは立派だ。だが時には甘やかしてもいいはずだ。頑張ってきた分褒めてあげる。

 姉にそこまで言われ、守人もようやく受け入れた。

「自分を褒めてあげる、か。そうだな」

 戦場という過酷な環境にいつになく気を引き締めていた。それをこのときだけは緩め、守人は麗華に振り向く。

「ありがと。気が楽になったよ」

「ほんと?」

「ああ」

 声からも緊張が解ける。ここは二人の好意をありがたく受け取ることにしよう。

「よかった。なら食べよ食べよ」

「食べる?」

 と、麗華が獅子王から箱を受け取る。その箱を守人に向けふたを開けてきた。

「ジャジャーン!」

 テンション高めに言われて中身を覗いてみれば、そこにはイチゴのケーキが入っていた。

「よく見つけたな」

 まさかイラクで見かけるとは思わずのぞき込んでしまう。ここが日本ならともかく来たばかりの外国で買ってきたのはなかなかすごいことではないだろうか?

「近場にケーキ屋がないか必死に走り回ったんだからね? これもぜんぶ君のために頑張ったんだから」

 実際かなりの苦労はあったようで麗華がこれ見よがしに言い寄ってきた。

「どう、私すごいでしょ? 褒めていいのよ?」

 というよりも褒めて欲しいのだろう、期待を込めた上目遣いで守人を見つめてくる。

「検索はワシがした」

「アシストもあったけどすごいでしょ?」

「運転もワシがした」

「愛の勝利ね」

 獅子王がいろいろ言ってくるがどうも独り占めしたいらしい。

「二人ともありがとうな」

 麗華は自分だけの手柄にしたかったようだが守人は二人にお礼を言った。自分のためにケーキを買ってきてくれたことをうれしく思う。

 この部屋にはあいにくと三人が腰掛けられる家具はない。仕方がないので床にそのまま座り一緒に持ってきてくれた皿に切り分けた。

「ちなみに宗作は甘いのは大丈夫なのか?」

「私は酒も飲むし甘いのも食べる」

 三人の前にケーキの乗った皿が並べられる。

「それじゃ、守人君の作戦成功をお祝いして。おめでとう」

「大勢の者が参加した作戦ではあるが一番の功労者は間違いなく君だ。守人君、おめでとう。この作戦に参加できたことを誇りに思うよ」

 二人が向けてくれる賞賛の言葉に守人は気恥ずかしく笑いつつもゆっくりと頷いた。

「ありがとう。二人もいろいろとありがとうな。姉さんには助けられたし、獅子王の発明品にも世話になってる」

「ううん」

「なに、当然のことさ」

 オペレーターの麗華とエフェクトスーツの獅子王。二人のサポートにもお返しと礼を言い、三人は互いの功績を確認した。

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