SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

ISIS本部襲撃6

 人が、するようなことじゃない。人がしていいことじゃない。どんな理由があったとしても。 

『こんなこと、許されることじゃない』

 麗華の震えるような声がヘルメットから伝わってくる。こんなことをする人がいる。そのことに正義感の強い彼女は怒りを抱いていた。

「俺は」

『ファースト?』

 そこへ呟かれた守人の声は反対に落ち着いており、寂しそうな響きさえ持って話していた。

『俺は、彼らと同じなのだろうか?』

 守人は今し方倒した男を見た後もう一度周りを見つめてみた。カプセルの中液体に浸された異形の者たち。戦うために作り出された彼らと自分が重なって見える。

 自分はG4。次世代兵器として作り出されたアザゼルを取り込み超人となった者。設計思想は彼らと同じだ。

 自分たちはみな、戦争のために作り出された兵器に過ぎない。

『ううん、それは違うわ』

 麗華の答えが聞こえた。そうではないと、小さく、けれど断言する決意があった。

『彼は兵器だった。戦うための道具でしかなく、そのためだけに生きる兵器だった。でも君は違うわ。君は人間よ。自分の意思がある。そうでしょう?』

 その言葉に守人はゆっくりと口を開いた。

「そうだな」

 守人は胸の中で頷いた。

 ここで倒れている男。彼と自分に違いがあるのなら、それは意思。戦う動機だ。

 彼は戦うために戦っていた。道具のように。機能として戦っていた。

 でも自分は違う。

 守人は、自分の意思で戦っているのだ。この場所に来ること、戦うこと。それを自らの意思で選んだ。

 それは兵器に出来ることではない。それは人間の成すべきことだ。

 自分の意思で戦うこと。それが、兵器と人間の違いなのかもしれない。

 その時、この空間全体に震動が走った。天井から埃がパラパラと落ちてくる。

『揺れ……? まさか連中、このビルごと破壊するつもり!?』

 このまま地下ごと崩れれば生き埋めだ。

『ファースト、逃げて! その場からすぐよ!』

 麗華から急かされ守人は走った。来た道を戻り地上へと向かう。揺れがどんどんと激しくなっていく。このままでは間に合わない。

 守人は飛んだ。地上を低空で飛行し急な階段を上がっていく。まっすぐと直進し床を飛び出し窓ガラスを突き破った。そのままビルから離脱する。

 その直後、ビルが崩れ出した。激しい音を立て建物が崩壊していく。土煙が舞い上がる中守人は天高く飛びこの場から離れていく。

『作戦領域からの離脱を確認。任務終了よ、おめでとう』

 麗華のホッとした声が聞こえる。間一髪の脱出劇を成功させた守人だがもうすぐで下敷きだった。油断はないが彼女と同じようにホッとしていた。

 そんな守人にうれしそうに彼女がささやく。

『まさか本当に本部を破壊できちゃうなんて。まるで現代の電撃戦ね』

 敵の防衛線を高速で突破し拠点を叩く。G4の機動力があればこその戦法だ。それで今回の作戦ではそうした運用法も証明されたことになる。

 第四世代兵器の有能性。その可能性を見せつつ守人は作戦から帰投した。

『気をつけて帰ってきて。みんな待ってるわ』

「SCP版 エンジェル・オーバードーズ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く