SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

ISIS本部襲撃5

『ファースト、薬品を!』

 麗華に言われ守人は咄嗟に床に落ちているビンを見つめた。それを念動力で持ち上げ男の顔面に投げつける。

「ガ!」

 ビンが割れ薬品が男の顔にかかる。劇薬だったのか男は手を離し急いで顔を拭いている。その隙に守人はハサミから逃げだした。

「ありがとう」

『礼はあと! それよりもあのハサミをなんとかしないと』

 距離を再び離し男を見ながら守人は礼を言う。今のはかなり危なかった。だが敵のハサミを無力化しない限り助かったとは言えない。

 敵の攻撃を凌ぐにしても狭いこの場所では時間の問題だ。倒すにしても強固な甲羅がボディを守っている。

「でもどうやって」

『ハサミは閉じる力は強いけどそれ以外の力はそうではないはずよ!』

 なるほど。守人は意識を集中させた。敵の動きに全神経を傾注する。下手に動いて隙を見せるより相手が動いた時の隙を突く。

「ガガ。ガガガ」

 男はおぼつかない足取りが近づき、右腕を伸ばしてきた。全長にもなる巨大な爪の攻撃。挟まれれば一溜まりもない。

 だが守人の集中力は男の攻撃を見切り回避した。敵のハサミは守人の背後にあった台をつかみ遺体ごと真っ二つに切り裂いていた。

 そんな中守人は接近していた。そして伸びきった男の腕を掴み背後に回り込む。男の体を床に倒し肩の関節を締め上げたのだ。

 男が暴れるのを力付くで押さえつける。巨大なハサミが開閉するが密着したこの体勢では切られることはない。

 守人は両腕に体重を乗せ男の腕を引っ張った。ハサミに挟まれた時は両手がかりでも苦戦した敵の腕だが関節技となれば負けられない。

 ついに守人の両腕が敵の肩を破壊する。さらには肩から敵の腕を引きちぎった。そして巨大なハサミの刃先を敵の無防備な首もとへ突き刺した。

「ガ……が……」

 男の意識がゆっくりとなくなっていく。暴れる体はおとなしくなり反対側の腕もぐったりと倒れた。

『敵の沈黙を確認。でも、なんてことなの』

 男を倒した。そのことにホッとするが安堵は長く続かなかった。この男は特殊な者ではなかった。

 この力は後天的に得たものだ。この手術台、SCPによって。

 これを使えば誰しもが彼のような脅威になるのだとすればそれは個体の強さよりも危険なことだ。

 戦争とは兵器の強力さも重要だがなにより数だ。こんなものがぞろぞろと出てくれば戦況が傾きかねない。

 それが、もしかしたらなっていたかもしれないのだ。それを思うと安心よりもむしろ恐怖が沸いてくる。

『ファースト、さきほどのSCPだけどこの場で破壊するよう指示が出たわ』

「了解」

 守人は手術台へ戻った。超人的な兵を量産する台だがこれ自体に戦闘能力はない。

 守人は手術台を手刀で叩き割った。さらに念動力で持ち上げ壁に激突させる。それで手術台は砕け散りガラクタへと変わった。

『もしここでこれを止めていなければ、さらに改造された兵士が作られていたかもしれない。もしそうなれば、さらに被害が出ていたわ』


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