SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

ISIS本部襲撃1

 翌日。

『作戦内容を確認するわ。目標はISIL本拠地と見られるビル。ここを襲撃し特異戦力に関する情報を奪取するわ。

 敵の勢力は広域に展開されておりいくつもの区画によって防衛線が敷かれている。ここを突破するのはG4といえど危険が大きすぎるわ。

 よって、本作戦では君のリミット上限を上げることが決定したわ。出力を50%に設定し、目的地まで飛行行動によって接近、直接攻撃を行って。

 建物に侵入したら情報を捜索し、目的を果たした後は再び飛行行動で撤退を。

 また本任務の行動時間は十分までよ。それ以上は待てないわ。迅速に行動して。

 健闘を祈ってるわ。……君ならやれる。自信を持って』



 イラク訓練施設、その周囲を取り巻く砂漠地帯に守人は一人で立っていた。乾燥した空気と空から降り注ぐ焼けるような光に包まれる。

 エフェクトスーツは展開されておりヘルメットを被っている。通信から聞かされる作戦内容に気を引き締めた。

 これからISILへの直接攻撃を行う。他国のG4に気を取られがちになるが、この組織こそ今最も世界を脅かしている国際テロ組織なのは間違いない。

 そこを襲うという意味の重大さ。これで歴史が変わってもおかしくない。

 守人は一旦気を鎮める。大きめの呼吸をし気持ちを落ち着かせた。大きな局面ではあるが焦りは禁物だ、焦って仕損じるわけにはいかない。

 意識を集中し、守人は空を見上げた。その後アザゼルの力を解放する。

 念動力を他者にではなく自分に使う。相手を浮かせるのではなく自分を浮かせた。

 守人の体がみるみると浮上する。高度を上げていき、目標地点へと顔を動かした。

「ファースト、作戦を開始する」

 守人は一気に加速した。空気の壁を突き進み、その様はまるでミサイルかなにかのようだった。

 青空を突き進む。白い雲を切り裂き目的地へと進んでいく。

『緊張してる?』

 そこで麗華から声が聞こえてきた。これから戦場へ赴く弟へ掛ける言葉は明るいものだった。

 彼女も気が気ではないはずなのに。それでも麗華はあえておどけたような声で話す。

 少しでも彼の不安を減らすために。それが今彼女にできることだから。

『大丈夫よ。君はこれからヒーローになるんだから』

「ヒーロー?」

 子供っぽい表現に小さく笑ってしまう。それをよしとして麗華はさらに言う。

『そうよ、世界を変えてやりましょう!』

 この戦いで世界が変わる。東京駅で起こったテロ事件。またフランスやイギリスのテロや地元の住民も、もうその脅威におびえる必要はなくなる。

 これは自分だけの戦いではない。世界を変える戦いだ。

 守人は急降下し雑居ビル正面に着地した。大きな都市であり周囲には他にも大きな建物が並んでいる。またそこには大勢の武装した男たちが驚きながら銃口を向けてくる。

 そんな中守人は堂々としていた。焦ることも怯えることもなく、向けられる銃口に対し気丈に立つ。

 新たな未来を作るため、次世代の力が戦場に舞い降りた。

『さあ暴れるわよ! クリスマスのジョン・マクレーンのようにね!』

 銃が一斉に発射された。前後左右、すべてからだ。

 如何にエフェクトスーツの耐久性といえど銃弾を受け続ければ機能不全に陥る。守人はすぐさま正面にいる男たちに接近した。

 数メートルの距離ならば一足で近づける。その高速移動で相手に近づくとそのまま殴りつけ壁に激突させる。他の男たちも蹴りで吹き飛ばし掴んで地面に叩きつける。

『右!』

 麗華の声に振り返る。そこにはRPGを持った男がおり打ち込んできた。弾頭が宙を走り守人に向かってくる。

 守人は寸前のところで念動力で軌道を変えた。ロケット弾が側面を通過していき背後で大きな爆発がする。背後から強風を受ける。

 建物の角にいた男は次弾を装填している。守人は視線を動かし停めてあった車を念じて持ち上げた。それを投げつける。

 車は男を押しつぶし建物に突っ込んだ。耳を塞ぎたくなるほどの激しい音が鳴り響く。

「撃てぇ! 撃てぇ!」

「あれが先日の不明敵か!」

「近づけるな! 物量で押しつぶせ!」

 敵も必死だ。倒しても次から次へとやってくる。ここが本拠地なのは当たりのようだ。

 守人はこちらに走ってくる集団をまとめて念動力で浮かし建物に激突させる。さらに反対側から来た敵に近づき近接格闘で吹き飛ばしていく。敵が車にひかれたマネキンのように飛んでいく。

『敵の増援多数! ファースト、このままじゃキリがない。ビルに突入して!』

 守人は片手で男の首をつかみ持ち上げている最中だった。そのまま地面に叩きつけ入り口正面を見つめる。

 見張りの男二人が車を遮蔽物にしてアサルトライフルで撃ってきている。

『了解!』

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