SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

脅威2

 守人を乗せたヘリが訓練施設に到着する。服装は元の非活動状態に戻してある。守人はひとまず無事に戻れたことに胸をなで下ろした。

 またここに来れた。そのことはとても誇らしいものだ。

 ヘリから降りるとそこには麗華が待っており、降りるなり抱きついてきた。

「守人君!」

「姉さん」

 いきなり密着され守人の表情が戸惑う。周りの目もあるので気が気じゃない。

 そんなことはおかまいなしで麗華は回した腕に力を入れ守人の胸元に額を当てる。

「よかった……ほんとうによかった……」

 彼女は心の底から安堵した声をつぶやいていた。戦場で戦い生きて帰ってきた。死んでしまうかもしれない。

 もう会えないかもしれない。そんな不安や心配がこの一時は消えたのだ。家族との再会に喜ぶのは当然だった。

 そんな彼女の気持ちを改めて実感し、守人も彼女の体を抱きしめた。

「ああ。ありがとう」

 心配してくれる家族がいる。自分の無事に喜んでくれる人がいる。それがとても幸せなことなのだと守人は感じていた。

 麗華が腕を解く。それで守人も手を離した。

「守人君、お疲れさま。君が無事で本当によかった」

 彼女は頬を少し緩ませた。感情表現豊かな彼女らしい笑みだ。だが、その表情もすぐに引き締まる。

「本当なら君を休ませてあげたいところなんだけど今すぐ会議室に来て。悪いんだけど」

「いや、俺もそのつもりだ」

 守人は話をしながら歩き出した。施設の入り口へと向かっていく。

 今は休んでいられない。生きて帰ってきた無事を喜びたいところだがそんな余裕もない。

 今まさに、予想外の事態に遭遇しているのだから。

 麗華が横に並び守人は聞く。

「あれの情報は?」

「いいえ。今特戦が調査中。私の側でも調べてもらっているわ」

(教会も。それも当然か)

「あれはいったい……」

「現状ではまだなにも。一番詳しいのは君よ」

 二人は話しながら会議室の扉を開けた。中では戦場かと思うほど職員が慌ただしく動き回っている。

 何人もの職員が電話をしながらキーボードを叩く様はドラマで見る商社の繁盛期のようだ。

「守人君」

 入室してきた守人を獅子王が迎える。生きて帰ってきてくれたことに熱い握手を交わした。

「よく戻ってきれくれた」

「まあな、俺もうれしいよ。本当ならもっと喜びたいところだが状況はそれを許してはくれなさそうだな」

「ああ。正直、今はそれどころではない。興奮と驚愕だよ」

 獅子王はやれやれと両手を上げる。彼も守人の無事を祝いたい気持ちだがこうなっては仕方がない。

「牧野は?」

「向こうだよ」

 言われ守人は振り向いた。職員が慌ただしく動く中、牧野は部屋の奥に立っていた。今も携帯電話で誰かと話している最中だった。

「はい。はい。その通りです。我々以外にも。どこかはまだ特定できておりませんが、特徴から。はい。分かりました、了解です。失礼します」

 牧野は電話を切り守人に振り向いた。この事態だというのにその表情は出撃前と変わらない。仮面でも被っているのか彼女の顔つきは常に引き締まっている。

「守人、まずは無事の帰還おめでとう。よくやった」

「いい。本題に入ろう」

 牧野からの言葉を世辞と切り捨て守人は踏み込んだ。どれだけ褒められようと事態は好転したりしない。

「ISISとの戦闘終了後、あらわれたあいつは俺と互角に戦っていた。間違いなくG4級だ」

 思い出される敵の姿に守人は危機感が上がっていく。

 名も知らないあの男は守人の攻撃を耐え、エフェクトスーツを破壊した。それだけでなくコウモリの群集となって飛行から回避、さまざまな行動を取っていた。

「あいつは何者だッ? なぜここにいる?」

 質問する声にも熱が入る。ISISだけではない、予期せぬ脅威に守人といえど焦りを感じていた。

『それに関しては私が答えよう』

 そこへ別の声がかけられた。

「賢条?」

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