SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

G4始動!2

 第二陣だ。守人は前進した。道を走り建物の角を曲がる。いくつもの建物が立つこの場所では道が複雑に入り組んでいる。

 土地勘がなければすぐに包囲されてしまう。耐久性に優れているといっても長時間の被弾は避けたいところだ。

 すると突如銃撃を受けた。左側面からだ。見れば建物や車を遮蔽物にして五人もの男たちが銃を構えている。

 守人は向かい来る銃弾の中を走った。足や胴部に当たるが無視する。回避行動は無用と判断して敵の制圧にかかる。

「なんだあれは!?」

「なぜ死なない!?」

「死ね! 死ねええ!」

 止まる気配のない守人に敵も驚きながら後退していった。もしくは信じられない顔をしながら祈るように引き金を引いている。

 守人は車に隠れている男に接近すると車をつかんだ。そのまま机を動かすようにどかし、男を蹴り飛ばす。逃げる連中には今の車を投げつけ倒していった。

『ファースト、上!』

 通信から聞こえる大声に守人はすぐさま顔を上げる。居住区だったことからマンションがずらりと並んでいる。
 
 その三階から男が守人をねらっていた。また武装が今までとは違う。

『RPG! 十時!』

 麗華が再度叫ぶ。守人を狙っているのは携帯式の対戦車ロケットランチャーだ。肩に担ぎ照準を守人に向けている。

 その弾頭が、発射された。

「!?」

 こちらに向かってくるのが目に見える。守人は間一髪で体をずらしそれを回避した。通過していった弾頭は後方で建物に着弾し爆発する。

 かわせた。だが危なかった。もし直撃していたらどうなっていたか。

『ファースト!』

 不安が脳裏を過ぎる。だがそんな暗い気持ちを払うように麗華の声が聞こえてきた。

 それで守人も気を持ち直す。

 まずは敵の排除が先だ。だが相手は建物の三階。ここから走っていっても次弾の装填は防げない。

 また銃器の類は携帯していない。そもそもそんなものに頼っていてはG4とは言えない。

 ではどうするか。

 守人は敵めがけ手をかざした。

 すると敵の体が持ち上がった。体が宙に浮かんでいる。不可解な現象に敵も慌てている。顔を左右に動かし手足をばたつかせているが浮上は止まらない。

 体はそのまま窓の外に放り出され落下していった。

 守人は手を下ろす。

 アザゼルの力は身体強化だけでない。念動力も佐宝事件で確認されている彼の能力だ。

『敵の排除を確認。その調子よ、でも油断しないで。体に異変は感じる?』

「いや、今のところ問題ない。このまま任務を継続する」

『了解。気をつけて、続々来るわよ。さっきの爆発音を聞きつけたようね』

 麗華の通信を聞くが早いか守人も複数の声を聞いていた。だが今度は今までとは違う。大勢の足音の中に明らかに違う音が混じっている。

 瓦礫を踏み砕き前進を続ける駆動音。キャタピラの音が百メートル先からでも聞こえてくる。

 守人は後方に振り向いた。そこには町の色にとけ込むベージュ色をした戦車と、それを取り囲むように進む武装兵の集団だった。

『あれは、M1エイブラムス! 破壊対象よ!』

 ヘリで聞いていた重要破壊対象が目前に現れた。強固な装甲、悪路を踏破する機動力に主砲の火力は脅威的だ。その大きさもあって圧巻だった。

 また随伴歩兵の数が多い。もともと運用コストから数が少ない戦車だが彼らからすればさらに貴重品だ。

 それを守るため大勢が固まるように集まっている。

 まるで御輿だ。日本のお祭りよろしく戦車の周りを男たちがぐるりと囲っている。

『ファースト、回避を優先して!』

 麗華から指示が飛ぶ。ざっと見て二十人はいるか。さらに戦車の主砲と機銃がある。この集中砲火を直に受ければ無事で済む保証はない。

 敵から銃撃が始まった。一斉射撃だ。逃げる隙すら与えない段幕が容赦なく守人を襲う。これでは回避どころではない。数が多すぎる。

 しかし、その銃弾はただの一つも守人に当たることはなかった。

 守人が片手を前に出す。第四世代兵器の所以、その真価をここに発揮する。

 発砲された銃弾、そのすべてが守人の前方で止まっていた。空間に固定されたまま、時が止まっているかのように止まっているのだ。

 敵の銃撃がやむ。こんな光景を見せられれば誰だって手を止めるだろう。驚愕に声すら聞こえない。

 守人は念動力で止めていた弾丸を反射させた。同じ速度で飛んでいった銃弾は数人に命中した。

『散開! 囲い込め!』

 敵は展開していった。正面からやりあっても無駄だと悟ったようだ。全方位から攻撃し死角を突くつもりだ。

 前方に残った者が制圧射撃を続けその間に左右に展開している。戦車からも機銃を受ける。

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