SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

G4始動!

 そして、時は今に至る。

 守人はイラクの町並みを歩いていた。白や灰色の建物が密集するように立ち並び、砂の道が続いている。

 飲食店やスーパーと思われる店も見えた。路地裏が多くどこから敵が出てくるか分からないマップだ。

『ファースト、すでに敵地よ。どこから現れるか分からない、気をつけて』

「了解」

 守人は道を歩き始めた。慎重に、けれど物陰に隠れようともしないその姿勢は大胆だ。道の真ん中を堂々と歩いていく。

『ここまで来たら私も覚悟を決めるわ。君ならやれる。頑張って』

「分かってるさ」

 通信先から伝わる姉の声に守人は緊張を緩むことなく柔らかい声で答えた。

 ここは戦場だ、戦うしかない。それを麗華も分かってくれた。そればかりかサポートとして自分のそばにいてくれる。これ以上望むことなんてない。

 すべて整った。あとはいよいよ戦うのみ。

 守人が前進を続けていくと前方から大勢の足音とかけ声が聞こえてきた。こちらに向かっている。

『おいでなすったわね。ファースト、歓迎パーティよ。自己紹介してあげて』

「了解。忘れられない日になるな」

 建物の角からAKを掲げた男たちが走ってきた。十数人の男たちはジーンズに迷彩色のジャンパー、または全身が黄土色の迷彩色、全身が白のゆとりのある民俗服を着込んでいる。

 髪は中東特有のちじれがあり、もしくはターバンを巻いていた。

 そんな彼らが守人を見るなり銃口を構えるが一同に表情を歪ませる。なにせここにいるのは全身を白で固めた近未来的な外見のなにかだ。

 はっきり言っておもちゃにしか見えないだろう。どう対処すればいいのか彼らも困惑している。

「引かれてるか?」

『第一印象はよくないでしょうね。手でも振ってみれば?』

「それよりもいい方法がある」

 守人はすぐ近くの常用車に近づいていく。するとそれを片手で持ち上げ、店の入り口に隠れていた男めがけ投げつけた。

「がああ!」

 激しい音とともに扉は壊れその威力に男が吹き飛ばされる。ガラスが散らばる音と土煙が戦場に余韻を残す。

 が、味方の一人がやられたことに、この場は一気に銃撃戦となった。一斉に打ち込まれるアサルトライフルの銃声が空間を暴力的なまでに包み込んでいく。

 その銃口はすべて守人を捉えており彼の全身を蜂の巣にしていく。

 この場は嵐のようだった。それほど苛烈で、激しい音が鳴り響く。

 しかし、その嵐は十秒足らずで去っていった。

 標的として打ち続けてきた白の人物。それが、未だに立ち続けているからだ。しかも、損傷すら見当たらない。

『どう?』

 全身に打ち付けられた銃弾に麗華が聞いてくる。守人は片手で胴部や顔を撫でた。

「ふん、悪くない」

 損傷なし。肉体への負担もなし。十数人からの銃撃に晒されても無傷。

 耐久性はバッチリだ。これなら第三世代兵器相手に十分戦闘ができる。

 守人は走った。防御面の有能性は証明した。なら今度は攻撃面だ。

 戦場を駆ける。速い。一足の飛距離が尋常ではない。そのため瞬く間に男たちに接近し、守人は一人の胴部を叩きつけた。

 男の体が吹き飛び数メートル先の建物に激突する。さらに近くにいた男の足を蹴ると一回転してから地面に落ち、別の男を掴むと反対側にいる男たちに投げつけた。

「うああああ!」

 残った一人が絶叫しながら銃を乱射してくる。表情は戦慄している。

 その銃弾を避けることなく守人は受け止めていた。襲いかかる秒速千メートルの鉄の玉をビクともせず、一瞬で男の前に現れると銃身をつかみ両手でへし折った。

 それに相手は絶句し守人を見上げていた。

 守人は男の腹に拳をたたき込み、胸ぐらを掴むと最後の一人を投げ捨てた。これですべての敵は沈黙。

 制圧完了オールクリア。十数人の武装兵を、たった一人で倒していた。

 第四世代兵器、G4。銃器ではかなわない次世代の力。それが、国際テロ組織相手に発揮された。

『さすがね』

 守人のヘルメット越しに今の光景を見ていた麗華から感嘆する声が聞こえる。初陣でこの戦果、十分過ぎる。耐久性から制圧力まで別次元だ。

 が、さらに別の声が聞こえてきた。

『ファースト、後続がそちらに向かってるわ!』

「了解!」

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