SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

作戦会議

 男の案内で会議室に入る。会議室にはホワイトボードが立てられその前に置かれた組み立て式のテーブルにはいくつものノートパソコンが置かれていた。

 数人が着席し今もキーボードを叩いている。皆が真剣な表情をしているが、中でも守人たちの視線を集めるものがあった。

 壁際に銃器で武装した男たちだ。日本人もいるが数人違う者もいる。現地の人だろうか。日本人には見えない。

 戦闘服姿であり守人をじっと見つめていた。

 ホワイトボードの前には牧野が立っており守人を見て口を開いた。

「彼らは我々の仲間だ。我々がここに滞在する間のボディガード、という設定だ。実際には君の救助を勤める」

「救助?」

「せっかくなので紹介しよう」

 牧野がそう言うと一人の男が守人に近づいてきた。アサルトライフルを肩にかけ、戦闘服に身を包んだ日本人だ。

 まだ若い。守人よりは年上だろうが二十台の後半か三十台くらいに思えた。

「彼は藤森ふじもり宏太こうた。我々特戦の実働部隊の一人で本任務では隊長を勤める」

「はじめましてだな。強いんだって?」

「ほどほどにな」

 藤本はにやりとした笑顔で手を差し出す。守人は苦笑いで握手を交わした。

「彼が率いる部隊が現地の偵察、また君の救助、回収を行う。いざという時のための戦力だ」

「なるほど」

「その男は信頼できるぞ」

「宗作?」

 そこへ扉を開けて獅子王が入ってきた。藤本を見ながら懐かしいものでも見るように笑っている。獅子王の入室に藤本も声を上げた。

「なんだおっさん、あんたも来てたのか」

「お前こそまだ戦場にいたんだな」

「知り合いか?」

「こいつも元財団職員さ。とはいえDクラス職員だがな」

 藤本と面識があるらしい獅子王は陽気に話していく。

「Dクラス?」

 そこで麗華が藤本を見ながら聞いてきた。どうも目つきが鋭いというか、嫌悪しているように見える。

「Dクラスというのは?」

 守人はSCP財団という組織について詳しくない。Dクラスというのもどういうものなのか知らなかった。

「Dクラス職員というのは主に死刑囚で構成された使い捨て職員だよ。危険な任務や実験に参加させられる」

 Dクラス職員については獅子王が説明してくれた。

「嫌な言い方しないでくれ。言っておくが俺は死刑囚じゃない。ヤクザの金に手を出して殺されそうになったところを財団に拾われたんだ。記憶が確かならな」

 本人はなんでもないことのように言うがなかなか大胆な発言だ。もともと破天荒な性格らしい。

「Dクラス職員は危険な任務に当てられることが多いが、三ヶ月で退職できる。前科も帳消しでな。それが唯一の希望だ。が、実態はそうでなくてね。仮に三ヶ月を生き延びても記憶処理され再雇用というのがほとんどだ」

「むごい話だ」

 死刑囚とはいえ死ぬまで働かされる、それも騙して行うのは非道と言える。

「この男はな、そのDクラス職員を一年半続けていたんだ」

「うそ」

 麗華が驚く。守人にはいまいちピンとこないがDクラス職員の実態を知っている者が聞けば驚愕することなんだろう。

 藤本にいたっては「実感はないんだがね」と肩を竦めている。

「こいつは今まで特殊な能力を駆使するSCPと幾度と対峙して生き残っている。適正はピカイチさ」

「どうもありがと」

「今に不満はないのか?」

 守人が質問する。Dクラス職員の惨状は分かったが今もしていることは変わらないように見える。特異戦力対策室の実働部隊となれば内容に差異はないだろう。

 それに藤本はにやりと笑った。

「ここは傭兵よりも金払いがいい」

 本人は嬉しそうに言うがなかなか衝撃的な発言だ。まあ、本人が納得しているならいいことだ。

「自己紹介は済んだか? ではブリーフィングに入る」

 牧野から話が入り彼女に体を向ける。ホワイトボードには地図が張られておりそこには線や印が書き込まれていた。牧野は持っていた棒の先端を地図に当てる。

「当地区は非戦闘地域として住民の拠点となっていたが、数日前からISILの進軍が始まり米軍との衝突もあったが失敗に終わっている。現在この地区はISILが制圧しており多国籍軍や住民はすでに避難している。本任務は第四世代兵器をヘリで運んだ後、当地区で投下。作戦エリア内にいる敵をすべて討伐する。また作戦エリアは人払いの結界が張られている。エリア外に出れば我々の存在が外部に漏れる、留意するように。全兵力の排除を確認した後、その場で回収だ。また本任務から麗華がオペレーターを務める」

「姉さんが?」

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