SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

エフェクトスーツ

 守人は灰色がかった白の服を着ている。全身一体型でウェットスーツに似ている。ここに来る前に着用するよう言われて着たが、これがどう関係しているのか。

「その服は異能(エフェクト)スーツと呼ぶ有機金属によって構成された、異能を備えた道具だ」

「異能を備えた道具?」

「そのプロトタイプだがね」

 守人の質問に獅子王が首肯する。

 異能を備えた道具。そんなものがあるのかと守人は初めて知った。特殊な能力を持ったキャラクターはサブカルチャーを探せばいくらでもいるが、そのほとんどが本人が備えた固有の能力だ。

 第四世代兵器も超人化させるという目的から人を対象にしている。

 だがこれは違う。物が、異能を持っている。

「ちょっと待って、有機金属ですって?」

 そこで麗華が割って入ってきた。なにか知っているのか眉を顰めている。

 その疑問に答えたのは賢条だった。

「彼は元SCP財団の職員だ。そこで機械関連の研究を行っていた。財団から脱退する際我々に保護を求め、現在はここで働いてもらっている」

 守人には知る由もないことだったが有機金属という夢の物質はすでにSCPの一部に見られる特徴だった。

 生物と機械の融合を可能にする、それそのものが異能と呼ぶに相応しい代物だ。

「そう、元財団の」

「隠していたわけではないんだがね」

 疑問が解け麗華がつぶやく。対して獅子王は肩を竦めた。

「話を戻そう。守人君。そのスーツは現在非活動状態にある。活動状態に移るためには君の意識下での指示が必要だ。それでそのスーツは変身する」

「待って待って」

 獅子王の言葉に麗華が両手を振って近づいてきた。

「変身? 変身して戦うの? おまけにバイクを乗り回して必殺技は跳び蹴りとか?」

「麗華ちゃん、真剣な話なんだ」

「こっちだって真剣よ」

 獅子王の説明に麗華が茶化してくる。

「話を戻すが、守人君、アザゼルの作用と同じだ。それで起動する」

「そう言われてもな」

 守人は今一度スーツを見るが見た目どころか着心地まで一般のものと変わらない。これでどう起動しろというのか。

「活動状態に入るとその服は変形する。変形しろと念じてみろ」

(本当かよ)

 そう言われても半信半疑だ。いや、疑いの方が九、一で高い。

 すると獅子王が鋭い声で言ってきた。

「聞こえてるぞ」

「なにがだ」

「顔に書いてあった」

 守人はやれやれと顔を振った。

 守人は渋々従うことにして頭の中でスーツの起動を念じる。とはいえこれでどうなるとも思えないが、仕方が無いと観念した。

(起動)

 一応念じてはみるが期待はしていなかった。

「ん?」

 だが、スーツに変化が起きた。生地がオセロの駒がひっくり返るように裏返ると次々と組み上がっていく。

 胴部にはいくつものパーツに分かれたアーマーが現れ、両腕、両足、胸部、両肩部がアーマーで覆われている。

 機動性を重視してかスマートな作りをしている。靴と手袋も展開されており、気づけば手にはヘルメットが握られていた。

「わお」

 麗華から声が挙がる。

 見た目はSFに出てくるパワードスーツのようだ。カラーリングは白、部分的に青も見える。

 守人は試しに胴部のアーマーを軽く叩いてみた。しっかりしている。当然といえば当然だが頑丈だ。

「これがエフェクトスーツの活動状態だ。それは君が持つアザゼルの身体能力強化を増幅させる効果がある。実弾による耐久テストはクリア済み。前者の能力と合わせれば並の火力で君を傷つけることは難しいだろう。また自己修復機能も備えており損傷を負っても時間の経過とともに回復する」

「すごいな」

 守人は空いている五指を開閉してみる。悪くない。しっくりくる。それだけでなく能力の向上はありがたい。

 自己修復機能は有機金属ならではだ。人間の自然治癒力と変わらない性能だ。

「そのスーツにはさらに映像障壁と記憶妨害機能もある。カメラやビデオなどの撮影器機で撮られてもモザイクがかかるようになっている。衛生カメラも安心だ。また直に見られても記憶には残らない」

「全身R指定ってわけ」

「麗華ちゃん、勘弁してくれ」

「そうだ姉さん、その言葉は俺にも刺さる」

 エフェクトスーツの多機能ぶりに感心する。

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