SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

拷問に近い実験2

 獅子王は部屋から出て行き反対側の部屋に移った。そこからはマジックミラー越しに守人が見える。

 また部屋にはすでに武装した職員が数人待機しており獅子王と守人を注意していた。

 獅子王はパソコンの前に座りマイクに口を近づける。

「守人君。今から君に電流を流す。できるだけアザゼルを活動しないよう耐えてくれ。さきほども説明したがこれはどれだけの刺激でアザゼルが活動状態になるのかを計測するためのものだ。はじめにテストを行う。ビリッっとくるぞ」

 獅子王はキーボートの上で指を踊らせ、エンターキーを押した。

「があ!」

 瞬間、守人の全身に激痛が走る。体がはね金網が激しく揺れた。獅子王の表情が「ゲ」と歪む。

 守人はうつむいた顔を上げた。

「今のどこがビリッとなんだ?」

「刺激的だろ?」

 守人の顔が嫌そうに歪む。

「守人君」

「なんだ」

 名前を呼ばれ守人は応えるが嫌々なのが声からも分かる。

「はじめるぞ」

 だが、獅子王の声は真剣なものに変わっており、それを受けて守人も表情を引き締めた。

「やってくれ」

「分かった」

 獅子王は守人から電圧計に顔を向ける。守人も意識を集中させた。

 これは、合意のもとで行われる拷問だ。する側も、受ける側も、緊張を張りつめる。

「アザゼル活動状態、移行テストを開始する」

 獅子王は装置のダイアルを回し始めた。それにより金網に電流が流れ、その威力も上がっていく。

「があああああ!」

 守人から悲鳴が上がる。全身に走る強烈な刺激に体中が震え出す。痺れ、呼吸もできない。

 それを知っていてもなも獅子王は眉すら動かさなかった。冷徹な姿勢を保ち、ダイアルをさらに回していく。

「が、ああ、あああああ!」

 絶叫が部屋中に広がる。守人は叫び、それを見る誰しもが無言で見つめ止めようともしない。

 獅子王は一端ダイアルを戻し電流を停止する。

「はあ、はあ」

 止まった電流に守人は大きな息を吐いた。体が力なくだらりと下がり、しかし固定された両手が倒れることを許さない。

「守人君、いけるか?」

 そこに、非情にも獅子王から次の電流が告げられる。今のでも相当強かった。荒い息を吐き額には冷や汗か大量の汗をかいている。休息が必要だ。

「はやく終わらせてくれ」

 けれど、守人は言った。続行だ。まだ痛む体にさらに激痛を流し込む。守人の目は鋭い眼光を宿したままだった。

「分かった」

 守人の答えを聞いて獅子王の手が動く。ダイアルを回し、さきほどよりも強い電流を流した。

「があああああ!」

 守人は耐えた。体が暴れ、目の奥でなにかが破裂していくのを感じながら。それでもこの痛みに耐えて、耐えることだけを考えた。

「があああ! あああああああ!」

 いずれ思考も感覚も痛みに飲み込まれていく。それだけしか分からない。意識というものすら希薄になっていき痛いということしか感じなくなる。もう、自分の絶叫すら聞こえない。

 死が近い。意識がなくなりそうだ。

 そんな中で、彼が思うものとはなんだったのか。

(瑞希……)

 瞬間だった。守人の体から突如強風が生まれ拘束していたベルトがすべてはじけとんだ。マジックミラーにはヒビが入り、守人は床に倒れ込む。

「守人君!?」

 獅子王は慌てて部屋を飛び出した。背後の男たちも銃を構えながら隣の部屋に急行する。

 扉を開け獅子王が中に入る。守人はうつ伏せに倒れており急いで駆けつけた。

「大丈夫か、守人君! 守人君!」

「ん……」

 獅子王に体を支えられ守人はなんとか起きあがる。表情がもうろうとしているが虚ろな目が獅子王をみつける。

「実験は終了だ、よく耐えてくれた」

「そうか……」

 終了という言葉を聞いて守人は床に座り込んだ。全身が真っ赤になっている。毛細血管は破裂し神経は麻痺してうまく動かない。

「はやく救急室へ。担架だ!」

 背後にいる男たちに獅子王が叫ぶ。さきほどからなにもしないで銃ばかり構えている連中に大声で怒鳴った。

「いや、いい」

 それを守人が制止する。

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