SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

拷問に近い実験

 意識を集中させる。自分の体に備わった異能を感じ、それを念じる。

 守人は力を入れた。装置がかける負担を押しのけ、ダンベルは持ち上がった。自分の胸の位置にまで持ち上げる。

「いいぞ。そのまま。上げていくぞ?」

「いつでもいい」

 装置がさらに負荷をかけていく。プレス機のように押しつぶす力が働いている。

 だが守人の表情に異変はない。真剣な顔つきだがまだ余裕がある。

「六百。六百五十。七百」

 獅子王から圧力が告げられる。まだ変化はない。そのまま数値は上がっていきついには大台を突破した。

「五トン。……五トン五百キロ…………六トン」

 さらに数字は上がっていく。獅子王はデータ画面とカメラを同時に見つめていく。

「九トン」

 このころから装置の方が震え出した。音が最初のころより大きい。古いエンジンみたいに揺れがどんどん大きくなっていく。

「終了!」

 獅子王の声が部屋中に響きわたった。装置は活動を止め守人は力を抜く。息をゆっくり吐いた。

 獅子王はデータに映し出された結果に目をやる。装置の活動限界は十トンであり、画面はその数値をわずかに越えていた。あのまま続けていれば装置の方が壊れていただろう。

 守人はバーを下ろし装置から離れる。

「調子はどうだ」

「問題ない」

 守人は何事もなかったように返事をする。持ち上げていた腕を揉んでいた。

「では次の部屋に入ってくれ。私も行く」

 扉が開く。こことは違い薄暗い部屋だった。守人は入っていくとそこには金網が壁際に設置されており四肢を固定するベルトが付いている。

 獅子王も同じ部屋に行くため席を立つ。扉に向かうため振り返ったその時、男たちと目があった。

 武装した幾人もの兵士たちだ。全員がいかつい顔をしている。そんな彼らを無視して獅子王は別室へ歩いた。

 守人は金網を見上げながら獅子王が来るのを待っていた。この部屋はまるで拷問室かとさつ場のような雰囲気がある。

 それに加えベルト付きの金網とくればこれからどうするかなど察しがつく。

「待たせたな」

「いいや」

 守人は金網に背を預けた。ガシャンと音が鳴る。獅子王はしゃがみ守人の両足首を固定し始めた。

「これから安全性のテストを行う。君の能力、アザゼルは普段は非活動状態であり、意識的に活動状態にできる。また肉体的精神的な刺激でも活動状態になることが分かっている。このテストではどれだけの刺激で活動状態になるのかを測る」

 口調は淡々としている。しかしそれは冷徹なのではなく意図的に意識しないようにしているように聞こえた。

 両足を締め終えた後獅子王が立ち上がる。その顔は案の定暗く、獅子王は大きなため息を吐いた。

「私をひどい人間だと思うかね?」

 そう言いながら獅子王は両手を縛り始めた。言葉と行動が乖離している。それだけに彼自身が痛々しく見えた。

 守人は正面を向き獅子王の問いに答える。

「ああ」
 これから自分がされること。彼がしようとしていること。それを思えばひどい以外なんと形容できるだろう。

 血も涙もないと言う人もいれば、マッドサイエンティストと蔑む者もいるだろう。

 その自覚があるから、獅子王はなにも言い返せなかった。

「あんたの実験は退屈だからな」

 が、次に聞こえてきた言葉に獅子王は顔を上げた。そこには獅子王を見下ろし、小さく笑う守人の顔があった。

 余裕を見せつけ獅子王に挑発的な笑みを見せる。

 それで、獅子王も小さく笑った。

「ふ。今度のは痺れるぞ」

「期待させてもらおう」

 両手の固定が終わる。ベルトをきつく締め付け守人の体は金網に縛られる。

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