SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

非日常の日常3

 麗華も背後にあるテレビに振り向き、守人は目だけを動かし画面を見る。

 そこから知らされるもの、それはこれからの守人のあり方を決定付けさせる、麗華にとっては最悪な、大事件だった。

「さきほど東京駅構内においた爆発が発生しました。犠牲者はまだ確認できておりませんが多数いる模様です。繰り返します。東京駅構内で爆発が発生しました」

「なんですって?」

 映されるカメラ映像には崩れた東京駅と怪我人を搬送している映像が流れていた。現場はパニック状態で泣き叫んでいる人もいる。

 麗華は唖然とした。麗華だけではない、他の職員もどういうことかと画面を食い入るように見ては隣人と話し合っている。

 そんな中、守人だけは動じることなく、鋭い視線で映像を見つめていた。

『緊急招集! 白河守人は至急室長室まで来るように。繰り返します。白河守人は至急室長室まで来るように』

 そこで館内放送で守人の名前が呼ばれる。守人は静かに立ち上がった。

「守人君?」

 麗華が見上げる。そこにいる守人に動揺はなく視線はすでに扉に向かっていた。

「行ってくる」

「待って、私も行くわ!」

 麗華も急いで立ち上がるが守人は片手で制した。

「いや、姉さんはここにいてくれ」

 そう言って守人は走り出してしまった。食堂に麗華は取り残される。彼の制止を振り払って追おうとも思ったが理性が感情を押しとどめる。

 特戦の話し合いに教会がとやかく言うことはできない。麗華は唇を噛んだ。これではアザゼルの実質的な主導権は特戦じゃないか。

 監視者とは名ばかりの自分がひどく情けなかった。

 いったい、自分はなぜここいるのか。

 この二二年間は、なんだったのか。

 麗華は一人残されたまま出口のない自問をしていた。

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