SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

誓い2

「フン」

 形勢が逆転された事実に牧野は表情を苦くしながらも、再び活動を始めた守人を止めんと立ち向かう。

 対異能の呪術師であるならばここでこそ真価を発揮すべき。

 そのため牧野は全力で守人に向かい吸収の呪術を発動する。

 だが、一向に力を簒奪さんだつ出来ずにいた。

「異能耐性だと……?」

 異能を受け付けない異能。牧野は対異能者ではあるが、行っているのは吸収という異能でしかない。

 守人に異能は効かない。全身に宿る聖なる力が守人を守護し干渉を弾き返している。

 どれだけ呪力に力を入れても吸収の実感が湧かない。

「ちっ」

 自身の力が通じないことに牧野の表情が激しく歪む。

 特戦にとって、これはまずい事態だった。そもそも第三世代兵器では通用しないことを目的に作った第四世代兵器だ。

 それが敵に回った以上通常兵器では太刀打ちできない。そうなるように作った。

 だが、ここで取り逃すという損失はあってはならない。今後の未来のため。国防のため。もし、ここで取り逃がし他国に捕獲でもされれば最悪。

 あってはならない、あってはならないことだった。

「室長!?」

 牧野の心臓が跳ねる。見れば、賢条が守人に近づいていた。

「室長、危険です!」

 牧野は叫ぶ。だが彼女の制止を気にも留めず賢条は歩み寄っていた。その姿勢は無防備だ。武装もしていない。

 ただの一般人だ。守人が本気を出せばすぐにでも倒されるほどに無力な存在。

 それでも、賢条は守人の前に立った。

 守人が身長一七五センチほどに対し賢条は一八〇センチはある。守人は鋭い視線で見上げ、賢条は静かな瞳で見下ろしていた。

「なにしに来た!?」

 麗華は地面に伏しながら賢条を睨み上げるが、賢条の視線は守人だけを見つめていた。

「素晴らしい力だ。しかし、それを君はどうするつもりだ」

「…………」

 特戦のトップからの質問。守人は答えず、視線に鋭さを保つ。対して、賢条も真剣な面持ちで対峙する。

「ここで逃げれば君は逃亡者だ。国の最重要機密事項を知った君を我々は全力を以て捜索する。私たちだけではない。彼女が所属している教会も、SCP財団も血眼になって君を探すだろう。力だけしかない君では逃れられない」

 賢条の言う通りだ。仮にこの場を切り抜けられてもその先は? スパイ映画の主人公ならいざ知らず守人はただの高校生だ。

「そこで聞かせてくれ」

 守人もそこは自覚していた。ここで逃げても、問題の解決には至らないと。

「君は、その力をなに使うつもりだ。それでなにを成す。その力の意味を、君はどう考えている」

 賢条からの質問に、守人は悩んだ。

「俺は……」

 力。今や守人は第四世代兵器の超人だ。強大な力が自分の体には宿っている。

 では、その力の行方は? この力をなにに使う? これからさき逃げる自分のために?

 追いかけてくる敵を退け、終わらない逃走を続けるために使うのか?

 もしくは――

 守人は思案した後、決意を固めた瞳で賢条の目を見る。

「力とは、道具でしかない。使い手の問題だ」

「と言うと?」

 守人の真意を聞き出す。

 それに、守人は質問で返す。

「彼らをどうするつもりだ?」

 彼らとは、ここで倒れている聖法教会の騎士たちだ。特戦の銃弾によって倒れ、苦しそうな声を出している。

 急所はなんとか防いだようだがこのままでは危険だ。それは麗華も同じ。すぐに治療しなければ命に関わる。

 守人からの問いに賢条は興味なさそうに周りを見渡した。

「彼等とは現在敵対関係にある。交戦は止まっているものの、再開する可能性はあるだろうな」

「特戦……!」

 彼の答えに麗華が怒気を含んで睨み上げる。

 賢条の意図は見え見えだ。もし彼ら、白河麗華を助けたくば投降しろと、そう暗に言っているのだ。

 いわば人質だ。卑劣な手でも使えるものは使う。それが麗華には許せなかった。

「分かった」

 だが、守人の表情は精悍で、声には芯があった。

「連れていけ。しかし、もう鹿目さんたちには手を出すな」

「守人君!?」

「……ほう」

 守人の答えに麗華は驚き、賢条は小さく唸った。

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