SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

救出3

 そして煙も痙攣もなくなり、再び瑞希は動かないまま横になった。

「瑞希……?」

 守人は瑞希の肩に手を置き、軽くゆすってみる。

 すると、彼女の口が動いたのだ。

「あ……」

 横になる瑞希の瞼が、ゆっくりと開かれる。

「うそ」

「瑞希?」

 守人は彼女の頭を優しく撫でて、名前を呼んだ。

 それに応えて、彼女の目が守人を見る。

「守人、くん……?」

「うっ、う!」

 瞬間、涙が、溢れた。

 言葉にならない。この気持ちを表せない。

 守人は瑞希に抱きついた。温かい肌。柔らかい身体。感じる温かさに涙と喜びが止まらない。

 号泣が、止まらない。

「うああああああ! ああああぁああぁああああ!」

 胸では収まり切らない想いが、守人の全身から溢れていた。

「え……なに……」

 瑞希は寝起きのような曖昧な意識で、守人の抱擁を受け止めている。

「守人くん、わたし、いきてるの?」

「ああ! ああ!」

 言葉で答える。抱き締めて応える。

 守人の肯定を受けて、瑞希は小さく笑っていた。

 奇跡だ。これは一つの奇跡。あり得ない。けれどそれを超えた、人の願いだ。

 そして聞くのだ。本当なら聞けるはずのなかった、彼女の言葉を。

「ありがとう」

 その言葉に、胸が震える。

 小さな体を抱き締める。守り抜いた証を両腕で包み込む。

 すべては彼女のために。

 そのために、守人は頑張ったのだから。

 守人の抱擁に瑞希は身を委ね、二人は抱き合った。

 幸せだった。夢のような。幻のような。そんなあり得ないほどの幸せ。

 守人は最大の充実感と至福に満たされて、ずっと瑞希を抱き締めていた。いつまでも、この幸福に満ちた夢の中で。

 それは、まるで幻のような楽園。

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