SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

報せ2

 目を動かせば、麗華が駆け寄ってきていたのだ。

「鹿目さん、どうしてここに?」

 聞きながら頭に手を当てる。なにやら感覚がおかしい。麗華の声がまるで頭の中から聞こえてくるような感じだ。体もまだ重い。

 麗華は目の前で立ち止まり、心配そうに守人を見つめていた。守人は手を離し再会できたことにホッとする。

「なんとかね、隙を見て離れることが出来たの。よかった、見つかって」

「さすがだな……」

 麗華もほっと息を吐き、守人は苦笑して答える。

「だけど、どうして俺の後を?」

「だって、心配じゃない。一人きりじゃどうなるか」

 そう言ってくれるのは嬉しいが、反対に守人は心配してしまう。

「それは嬉しいけど、でも、聖法教会は鹿目さんの所属だろ? 反対を押し切って、その、俺のところに来て良かったのか?」

 自分を追って来たせいで彼女の立場は悪くなってしまったはずだ。

「うん。君のそばにいたかったから」

 しかし、麗華は頷いた。

 彼女の返事に守人は一度面食らったが、合せるように小さく笑う。

「……ありがと」

 こうしてまた彼女と会えたことに、安堵が胸に広がる。

「ううん」

 守人のお礼に、麗華は顔を振る。

「むしろ、ごめんなさい。聖法教会の考えは私のそれとは違っていた。今守人君が聖法教会に掴まってしまったら大変なことになるわ」

 さきほどの出来事を思い出す。現れた部隊は麗華の仲間だが自分を捕らえようとしてきた。しかも連行しようと。

 そこでなにをされるかは分からないが、拉致されるだけでも危険なことだ。特戦とやろうとしていることがこれでは変わらない。

「特戦も君を追ってる。なんとかしないと」

 守人は今や日本政府からも世界的な宗教団体からも狙われる逃亡者となってしまった。昨日まではただの高校生だったというのに。

 世界が変わったようだ。そう思って、守人は内心で顔を振る。

 違う。瑞希が死んだその日に、自分の世界はすでに終わっていたのだと。

 瑞希。彼女がもし生きていればそれはどれだけ幸福なことだろう。

 すべてを賭けていい。すべてを失ってもいい。

 それでもし彼女にまた会えるなら。

 守人はすべてを犠牲にできるのに。

「それでね、守人君。君に言わなくてはならないことがあるの」

「え?」

 そんな時だった。いつになく真剣なな表情で麗華が見つめてくる。なにごとかと守人も身構える。

「実は――」

 麗華が口にすること。それは、守人の胸を揺さぶった。

 希望が蘇る。

 意識が変わる。

 世界に、光が戻った。

「瑞希さんが、生きてるわ」

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