SCP版 エンジェル・オーバードーズ

奏せいや

襲撃2

 だが、後から来る麗華は守人を押し退け前に出た。守人は引き留めようと手を伸ばすが空を掴む。彼女の速度はかつて見た疾走だった。そのまま走り続け、口を開く。

聖装せいそう!」

 麗華の一声を合図に服が裂光となって弾ける。その後、光の下から現れたのは昨夜の戦闘服だった。

 上下共に純白で厚手のジャケットに長ズボン。さらに腰に差した刀を抜き放ち、銃口を突き付ける彼らに切っ先を向ける。

 トリガーが引き絞られるまで刹那の猶予を残し、麗華は道路を横断する。車線を区切る白い柵を飛び越え完走した。

 間合いに入るなり剣風が舞い銃身を切り裂く。二人の間を通って背後に移動すると、刀身の横で後頭部を殴打する。飛燕の早業が炸裂し、瞬く間に二人組を無力化していた。

(すごい)

 その流麗かつ激烈な動きに、守人は命を狙われているのも忘れそうだった。

 いったい、どれほどの修行をすれば身に付くのだろう。どれだけの苦しみを経験してきたのだろう。これほどの技を得るならば、かなりの年月と苦難に耐えてきたはずだ。

 それを、どんな想いで過ごして来たのか。

「守人君、早くこっちに来て!」

「すぐに行く!」

 守人は駆け出し麗華とともに逃げ出した。

 特戦から逃げる最中、守人は意識の片隅で考えていた。

 背中を見せて自分を守ってくれる、年上の彼女のことを。

 考えていたのだ。

 昨日初めて会ったはずの彼女。

 なのに、何故だろうか。

 彼女をどこかで、懐かしく感じているのは。

「ほら、守人君!」

 その時、先頭を走る彼女が手を差し出してきた。

「――――」

 自分に向けられる、年上だけど少女の手。その手を、守人は掴んだ。

 温かい手の感触。自分を導いてくれる、誰かの手。

 この手を、知っている気がした。いつか、どこかで、自分の手を握って導いてくれた温かい手の感触。


 守人は生死がかかっている窮地の中で、懐かしさを感じながら走っていた。

「SCP版 エンジェル・オーバードーズ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く