【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります
第9話『おっさん、ロロアと過ごす』後編
「ただいま」
「おかえりなさい」
こちら側の拠点はロロアのテントのすぐ近くに設定してあり、敏樹が戻ってくるときはいつもロロアはテントの外で出迎えてくれていた。
随分と居心地がいいのか、敏樹は実家からこちらへ戻ってきたとき、自然に“ただいま”という言葉が出るようになっていた。
「前に田んぼ見せてくれるって言ってたじゃない? あれいまからどう?」
「えっと、もうお昼過ぎですからいまから行くと帰りが遅くなりますよ?」
「田んぼまでは道があるんだよね?」
「まぁ、人が行き来できるぐらいには手入れされてますけど……」
「じゃ大丈夫、行こう」
半ば強引にロロアを連れ出した敏樹は、集落を出て少し歩いたところでヘルメットを取り出し、ロロアに渡した。
「あの、これは?」
「頭にかぶって。こうやって、こんな感じで」
敏樹は自分がまずヘルメットをかぶって見せたあと、ロロアが抱えているヘルメットの偏光バイザーをコンコンと叩いた。
「コイツで顔は隠れるから。あ、フードは脱いだ方がいいよ」
「は、はい……」
敏樹に背を向けたロロアがフードを脱ぐと、その下から緑がかった青い髪の毛が姿を現した。
「へええ、ロロアの髪って青いんだね」
「あ、あんまり見ないで……」
ロロアは慌ててヘルメットをかぶった。
少し手間取ったが、ただすっぽりとかぶるだけなので、失敗するということはなかった。
「ほい鏡」
「あ、ありがとうございます」
敏樹に背後から手渡された手鏡を後ろ手に受け取ったロロアは、自身の姿をそれに映してみた。
「な、顔見えないだろ?」
「そう、ですね」
振り向いたロロアの顔は偏光バイザーで見えないが、普段ローブとフードで隠れている青緑の髪がヘルメットの端からはみ出ていた。
「トシキさん……それ、なんですか?」
「バイクだよ」
「ばいく……?」
トシキの傍らにはすでにオフロードバイクがあった。
「ま、馬みたいなもんだと思ってくれていいよ……っこらせっと」
おっさんくさいかけ声とともにトシキがバイクにまたがる。
「じゃ、乗って」
「え? 私が、これに?」
「うん。これだとたぶん田んぼまですぐだよ」
「わ、わかりました……。あの、暴れませんか?」
「ん? ああ、大丈夫。ゴーレムみたいなもんで、俺が動かさないと微動だにしないから」
「そうですか。で、では……」
恐る恐るバイクに近づいたロロアは、何度かシートに触れ、勝手に動き出さないことを確認したあと、少し飛び乗るようなかたちでシートにまたがった。
「だ、大丈夫、でしょうか……?」
「大丈夫大丈夫。じゃ行くよ」
敏樹がスタータースイッチを押してアクセルを回すと、バルンッっと音を立ててエンジンが始動した。
「キャッ!!」
突然の音に驚いたロロアが、短い悲鳴をあげて敏樹にしがみついた。
「おぅ……」
背中に柔らかな感触を得た敏樹は、思わず声を上げてしまう。しかしロロアはそんなことを気にしている余裕はないようである。
「トシキさんっ、大丈夫ですか!? この子、怒ってませんか!?」
ドッドッドッドッとうなりを上げるエンジン音は、確かに荒ぶる魔物の鼻息のように感じられなくもない。
「大丈夫、これが普通の状態だから。じゃあスタートするからそのまましっかりつかまってて」
敏樹とロロアを乗せたバイクが、ゆっくりと走り始めた。
水田へ続く道は2メートルぐらいの幅で、木はちゃんと伐採され、草も刈り取られていた。
人の足で踏み固められたのと、台車か何かでできた轍とで一応道としての体裁は保たれているようである。
二人乗りに適さないオフロードバイクではあるが、それでも問題なく走れる程度には整備されているのだった。
「きゃあああっ!! トシキさん、速いぃ……っ!!」
バイクは時速30キロメートル程度で走っていた。
公道を走る原付の法定速度と同程度ではあるが、騎乗の経験すらないロロアからしてみれば信じられない速度なのだろう。
「んー? 楽しいっ? じゃあもうちょい飛ばすねー」
「ま、また速くなってるぅっ!? いやああぁぁっ……!!」
速度は上がり、時速40キロメートル。森の中を走る速度としてはかなりのものであり、自動車に慣れ親しんだ現代人であっても恐怖できるスピードである。
そしてバイクの上で会話をするのは非常に難しいのだった。
「うぅ……。トシキさん、ひどいです……」
徒歩で2時間近くかかる距離を十数分で到着した敏樹だったが、同乗したロロアはかなりの恐怖を覚えたようで、バイクを降りるなりその場にへたり込んでしまった。
「ごめんごめん。なんかはしゃいでるように聞こえたから」
「怖がってたんですっ!!」
怒ったような声を上げて敏樹のほうを見たロロアだったが、偏光バイザーのせいで表情は読み取れなかった。
たぶん口をへの字にして涙目になっているんだろうな、と想像した敏樹は、くすりと笑みを漏らした。
「もう……笑い事じゃありませんから」
「ほんとごめんって。ほら」
立ち上がろうとするロロアに敏樹は手を貸してやった。
「へええ、見事だね」
目の前には山の斜面を利用した棚田が広がっていた。想像以上の規模で米が生産されていることに、敏樹は素直に驚いた。
「うふふ、すごいでしょう?」
集落の棚田を褒められたことで、どうやらロロアは機嫌を直してくれたようだった。
「ああ。しかしこの広さの田んぼをあれだけの人数で、となると大変なんじゃない?」
集落の人口は100人にも満たず、農薬もトラクターなどの農機もないとなるとかなりの負担なのではないかと予想されるのだが……。
「いいえ。私はともかく集落のみなさんは特に食事を必要としませんからね。無理のない範囲でやってますよ?」
「いや、でも害虫とかさ」
「害虫? 風で飛ばせばいいんじゃないですか?」
「風で……? あとほら、これだけ広い面積を耕すとかさ」
「ああー。もしかしてトシキさん、水精人が水魔法しか使えないと思ってます?」
「へ?」
「水精人はその名の通り水魔法が得意ですけど、土や風の魔法もそれなりに使えるんですよ? ちゃんと農地として整えられていれば耕すぐらいはできますし、害虫を風で飛ばすぐらいのこともできますから」
「そっか、魔法……ね」
魔法というものが存在する以上、敏樹の住む世界とこの世界との間で安易に文明を比較するのは避けた方がよさそうである。
「そろそろ帰ろっか」
その言葉に、ロロアが後ずさる。
「また、あの子に乗るんですか?」
よほど怖かったらしい。
「はは、しょうがないな。じゃあ手、出して」
「あ、あの……はい」
敏樹が指しだした手に、少し遠慮がちにロロアは手を重ねた。なにやら随分と照れているが、さきほどへたり込んで立ち上がるときに手を貸されたことやバイクの上で敏樹の腰にしがみつき、背中に胸を押し当てていたことはすっかり忘れてしまっているらしい。
敏樹は重ねられたロロアの手をぎゅっと握った。
「あっ……。え……?」
敏樹の手を握られたことに少し驚いたロロアだったが、直後に景色が変わったことで大いに戸惑った。
真っ白になった視界が色彩を取り戻し、キョロキョロと辺りを見回した結果、ここが自身がいつも寝起きしているテントのすぐそばであることに、ロロアは気付いた。
「あれ? なんで?」
「転移だよ」
「あっ……!! ごめんなさい……」
不安に駆られて敏樹の手をぎゅっと握り返したところに突然声をかけられたため、ロロアは思わず手を引いてしまった。
「でも、転移は1日1回しか使えないんじゃ……」
「実家みたいな遠くへ行くにはね。歩いて二時間ぐらいの距離なら自前の魔力でも……っとと」
敏樹は一瞬立ちくらみを覚えよろめいてしまう。
「あっ、大丈夫ですか」
「っと……ごめん」
よろめいた敏樹の身体を脇から抱えるかたちでロロアが支えた。密着した部分から、女性特有の柔らかな感触が、衣服越しに伝わってくる。
「あ、ありがとう。もう大丈夫」
敏樹は慌てて体勢を立て直し、ロロアから離れた。
「はは、思ったより魔力を消費したみたい」
「無理しないでくださいね? あの子に乗るのは怖かったけど、トシキさんに無理してもらってまで避けようとは思ってませんから」
「お、おう……、ありがとうね」
バイクに乗ったときの背中に伝わる感触や、今しがた支えられたときの感触を思い出し、おっさんは年甲斐もなくドキドキしていた。
「こういう生活も悪くないな」
突然大金を手に入れ、訳もわからず異世界に飛ばされ、最初はサバイバルや戦闘に苦労したが、与えられた膨大なポイントやほぼ好きなだけ習得できるスキルのおかげで、スリルも含めて随分楽しめたように思う。
そして始めて訪れた人里では、狩りをしながらのまったりとしたスローライフのような生活を送れており、これはこれで日本にいたのでは味わうことのできない貴重な体験だ。
もちろん不便なこともあるが、それはそれで楽しめばいいし、その気になれば日本から便利な物を持ち込めば、大抵の不満は解消されるというのもありがたい。
「実家に帰れるってのは、ほんとありがたいよな」
このように、日本と異世界とを行き来する敏樹の生活は、それなりに順調であった。
このときまでは…………。
**********
「ただいまー」
実家に帰っていた敏樹はいつものようにロロアのテント近くに戻ってきた。
しかし、いつものように出迎えてくれるロロアの姿がそこにはなかった。
「おかえりなさい」
こちら側の拠点はロロアのテントのすぐ近くに設定してあり、敏樹が戻ってくるときはいつもロロアはテントの外で出迎えてくれていた。
随分と居心地がいいのか、敏樹は実家からこちらへ戻ってきたとき、自然に“ただいま”という言葉が出るようになっていた。
「前に田んぼ見せてくれるって言ってたじゃない? あれいまからどう?」
「えっと、もうお昼過ぎですからいまから行くと帰りが遅くなりますよ?」
「田んぼまでは道があるんだよね?」
「まぁ、人が行き来できるぐらいには手入れされてますけど……」
「じゃ大丈夫、行こう」
半ば強引にロロアを連れ出した敏樹は、集落を出て少し歩いたところでヘルメットを取り出し、ロロアに渡した。
「あの、これは?」
「頭にかぶって。こうやって、こんな感じで」
敏樹は自分がまずヘルメットをかぶって見せたあと、ロロアが抱えているヘルメットの偏光バイザーをコンコンと叩いた。
「コイツで顔は隠れるから。あ、フードは脱いだ方がいいよ」
「は、はい……」
敏樹に背を向けたロロアがフードを脱ぐと、その下から緑がかった青い髪の毛が姿を現した。
「へええ、ロロアの髪って青いんだね」
「あ、あんまり見ないで……」
ロロアは慌ててヘルメットをかぶった。
少し手間取ったが、ただすっぽりとかぶるだけなので、失敗するということはなかった。
「ほい鏡」
「あ、ありがとうございます」
敏樹に背後から手渡された手鏡を後ろ手に受け取ったロロアは、自身の姿をそれに映してみた。
「な、顔見えないだろ?」
「そう、ですね」
振り向いたロロアの顔は偏光バイザーで見えないが、普段ローブとフードで隠れている青緑の髪がヘルメットの端からはみ出ていた。
「トシキさん……それ、なんですか?」
「バイクだよ」
「ばいく……?」
トシキの傍らにはすでにオフロードバイクがあった。
「ま、馬みたいなもんだと思ってくれていいよ……っこらせっと」
おっさんくさいかけ声とともにトシキがバイクにまたがる。
「じゃ、乗って」
「え? 私が、これに?」
「うん。これだとたぶん田んぼまですぐだよ」
「わ、わかりました……。あの、暴れませんか?」
「ん? ああ、大丈夫。ゴーレムみたいなもんで、俺が動かさないと微動だにしないから」
「そうですか。で、では……」
恐る恐るバイクに近づいたロロアは、何度かシートに触れ、勝手に動き出さないことを確認したあと、少し飛び乗るようなかたちでシートにまたがった。
「だ、大丈夫、でしょうか……?」
「大丈夫大丈夫。じゃ行くよ」
敏樹がスタータースイッチを押してアクセルを回すと、バルンッっと音を立ててエンジンが始動した。
「キャッ!!」
突然の音に驚いたロロアが、短い悲鳴をあげて敏樹にしがみついた。
「おぅ……」
背中に柔らかな感触を得た敏樹は、思わず声を上げてしまう。しかしロロアはそんなことを気にしている余裕はないようである。
「トシキさんっ、大丈夫ですか!? この子、怒ってませんか!?」
ドッドッドッドッとうなりを上げるエンジン音は、確かに荒ぶる魔物の鼻息のように感じられなくもない。
「大丈夫、これが普通の状態だから。じゃあスタートするからそのまましっかりつかまってて」
敏樹とロロアを乗せたバイクが、ゆっくりと走り始めた。
水田へ続く道は2メートルぐらいの幅で、木はちゃんと伐採され、草も刈り取られていた。
人の足で踏み固められたのと、台車か何かでできた轍とで一応道としての体裁は保たれているようである。
二人乗りに適さないオフロードバイクではあるが、それでも問題なく走れる程度には整備されているのだった。
「きゃあああっ!! トシキさん、速いぃ……っ!!」
バイクは時速30キロメートル程度で走っていた。
公道を走る原付の法定速度と同程度ではあるが、騎乗の経験すらないロロアからしてみれば信じられない速度なのだろう。
「んー? 楽しいっ? じゃあもうちょい飛ばすねー」
「ま、また速くなってるぅっ!? いやああぁぁっ……!!」
速度は上がり、時速40キロメートル。森の中を走る速度としてはかなりのものであり、自動車に慣れ親しんだ現代人であっても恐怖できるスピードである。
そしてバイクの上で会話をするのは非常に難しいのだった。
「うぅ……。トシキさん、ひどいです……」
徒歩で2時間近くかかる距離を十数分で到着した敏樹だったが、同乗したロロアはかなりの恐怖を覚えたようで、バイクを降りるなりその場にへたり込んでしまった。
「ごめんごめん。なんかはしゃいでるように聞こえたから」
「怖がってたんですっ!!」
怒ったような声を上げて敏樹のほうを見たロロアだったが、偏光バイザーのせいで表情は読み取れなかった。
たぶん口をへの字にして涙目になっているんだろうな、と想像した敏樹は、くすりと笑みを漏らした。
「もう……笑い事じゃありませんから」
「ほんとごめんって。ほら」
立ち上がろうとするロロアに敏樹は手を貸してやった。
「へええ、見事だね」
目の前には山の斜面を利用した棚田が広がっていた。想像以上の規模で米が生産されていることに、敏樹は素直に驚いた。
「うふふ、すごいでしょう?」
集落の棚田を褒められたことで、どうやらロロアは機嫌を直してくれたようだった。
「ああ。しかしこの広さの田んぼをあれだけの人数で、となると大変なんじゃない?」
集落の人口は100人にも満たず、農薬もトラクターなどの農機もないとなるとかなりの負担なのではないかと予想されるのだが……。
「いいえ。私はともかく集落のみなさんは特に食事を必要としませんからね。無理のない範囲でやってますよ?」
「いや、でも害虫とかさ」
「害虫? 風で飛ばせばいいんじゃないですか?」
「風で……? あとほら、これだけ広い面積を耕すとかさ」
「ああー。もしかしてトシキさん、水精人が水魔法しか使えないと思ってます?」
「へ?」
「水精人はその名の通り水魔法が得意ですけど、土や風の魔法もそれなりに使えるんですよ? ちゃんと農地として整えられていれば耕すぐらいはできますし、害虫を風で飛ばすぐらいのこともできますから」
「そっか、魔法……ね」
魔法というものが存在する以上、敏樹の住む世界とこの世界との間で安易に文明を比較するのは避けた方がよさそうである。
「そろそろ帰ろっか」
その言葉に、ロロアが後ずさる。
「また、あの子に乗るんですか?」
よほど怖かったらしい。
「はは、しょうがないな。じゃあ手、出して」
「あ、あの……はい」
敏樹が指しだした手に、少し遠慮がちにロロアは手を重ねた。なにやら随分と照れているが、さきほどへたり込んで立ち上がるときに手を貸されたことやバイクの上で敏樹の腰にしがみつき、背中に胸を押し当てていたことはすっかり忘れてしまっているらしい。
敏樹は重ねられたロロアの手をぎゅっと握った。
「あっ……。え……?」
敏樹の手を握られたことに少し驚いたロロアだったが、直後に景色が変わったことで大いに戸惑った。
真っ白になった視界が色彩を取り戻し、キョロキョロと辺りを見回した結果、ここが自身がいつも寝起きしているテントのすぐそばであることに、ロロアは気付いた。
「あれ? なんで?」
「転移だよ」
「あっ……!! ごめんなさい……」
不安に駆られて敏樹の手をぎゅっと握り返したところに突然声をかけられたため、ロロアは思わず手を引いてしまった。
「でも、転移は1日1回しか使えないんじゃ……」
「実家みたいな遠くへ行くにはね。歩いて二時間ぐらいの距離なら自前の魔力でも……っとと」
敏樹は一瞬立ちくらみを覚えよろめいてしまう。
「あっ、大丈夫ですか」
「っと……ごめん」
よろめいた敏樹の身体を脇から抱えるかたちでロロアが支えた。密着した部分から、女性特有の柔らかな感触が、衣服越しに伝わってくる。
「あ、ありがとう。もう大丈夫」
敏樹は慌てて体勢を立て直し、ロロアから離れた。
「はは、思ったより魔力を消費したみたい」
「無理しないでくださいね? あの子に乗るのは怖かったけど、トシキさんに無理してもらってまで避けようとは思ってませんから」
「お、おう……、ありがとうね」
バイクに乗ったときの背中に伝わる感触や、今しがた支えられたときの感触を思い出し、おっさんは年甲斐もなくドキドキしていた。
「こういう生活も悪くないな」
突然大金を手に入れ、訳もわからず異世界に飛ばされ、最初はサバイバルや戦闘に苦労したが、与えられた膨大なポイントやほぼ好きなだけ習得できるスキルのおかげで、スリルも含めて随分楽しめたように思う。
そして始めて訪れた人里では、狩りをしながらのまったりとしたスローライフのような生活を送れており、これはこれで日本にいたのでは味わうことのできない貴重な体験だ。
もちろん不便なこともあるが、それはそれで楽しめばいいし、その気になれば日本から便利な物を持ち込めば、大抵の不満は解消されるというのもありがたい。
「実家に帰れるってのは、ほんとありがたいよな」
このように、日本と異世界とを行き来する敏樹の生活は、それなりに順調であった。
このときまでは…………。
**********
「ただいまー」
実家に帰っていた敏樹はいつものようにロロアのテント近くに戻ってきた。
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