全財産百兆円の男

星河☆

初デート

 四月、新年度になり会社で人事異動等が行われ、一息ついた頃亨は自宅でタバコを吸っていた。


 「今日何すっかなー」
 今日は亨は休日で自室でのんびりしていた。
 今は午前九時。
 亨はやる事がなく暇を持て余してしまっていた。
 今日は日曜日だが競馬場に行くか考えたが今日は見たいレースがやっていない。




 「そうだ、佐藤さんをデートに誘おうかな」
 亨はそう言うと佐藤に電話をかけた。


『もしもし、甲斐さんどうされたんですか?』
「もし良かったら今日一緒にどこか行きません?」
『私とですか? 別に構いませんがどこに行くんですか?』
「それは――。デズニーロンドなんかどうですか?」
『デズニーですか。良いですね。行きましょう』
「ありがとうございます。俺はてんかん持ってて運転できないので西田に運転してもらうんですが宜しいですか?」
『構いませんよ』
「ありがとうございます。では迎えに行くのでご住所伺って宜しいですか?」
『渋谷区の――』
「分かりました。二十分程で迎えに行きます」
『よろしくお願いします』
「では失礼します」
 亨は電話を切り、おしゃれ着に着替え、西田を呼んだ。


 「今から佐藤さんとデートするから運転頼むよ」
 亨が西田にそう言うと西田は分かりましたと言って車の準備を始めた。




「お待たせ。出発してくれ」
「かしこまりました」
 西田には住所は伝えている。








 二十分程で佐藤の自宅前に着いた。


 亨は車から降りてアパートの二階に行き、佐藤の部屋の前に着いてインターホンを押した。


「はーい」
「甲斐です。お待たせしました」
 すると中から佐藤が出てきた。


「おはようございます」
「おはようございます。行きましょうか」
「はい」
 亨は佐藤を連れて車までやって来た。
 亨はドアを開け、先に佐藤を乗らせた。
 反対側から亨は乗り、西田にデズニーロンドまでと言って車を発進させた。


 「今日はどうして私を誘って頂けたんですか?」
 車内で佐藤が亨に尋ねた。


「うーん。何でかなー。今日休みで、何しようかなと思った時に一番最初に思い浮かんだ顔だったんですよね」
「そんな――」
 佐藤は顔を赤らめ俯いた。
 「でも本当ですよ」
 亨はニコッと笑い佐藤を見た。
 「ありがとうございます。そんな事言って頂けるなんて」
 佐藤は顔を赤らめながらもそう言って頭を下げた。


「佐藤さん失礼ですが恋人はいらっしゃるんですか?」
「いたらこの誘い断ってますよ」
「そりゃあそうだ」
 二人は笑いながら言った。










 一時間半程してデズニーロンドの駐車場に着いた。


「西田、帰ってくる時は連絡入れるから自由にしててくれ」
「分かりました。いってらっしゃい」
 亨は西田にそう言うと佐藤と一緒にデズニーロンドの入り口に向かった。




 「いらっしゃいませ」
 係員が挨拶をした。


「大人二枚、一日フリーパスで」
「かしこまりました。お二人様で一万五千円になります」
「はい」
 亨はちょうど出しフリーパスを貰った。


 「私も払いますよ」
 佐藤がそう言うと亨は笑顔で首を振った。


「今日は俺が誘ったんだから俺に払わせて下さい」
「でも――」
「良いんですよ」
「分かりました。お言葉に甘えさせて頂きます。ありがとうございます」
 佐藤は亨に頭を下げた。




 「じゃあ中に入りますか」
 亨が笑顔で言うと佐藤も笑顔で頷いた。




 亨と佐藤はデズニーロンドに入り、二人で何に乗るか話し合っていた。
 「まずはジェットコースターに乗りますか?」
 亨が佐藤に言うと佐藤は顔を引き攣らせながら頷いた。


 「じゃああれ乗りましょう」
 亨が指さした先には最高時速二百キロ出るジェットコースターだ。


 ジェットコースターの名前は『アウス』。
 アウスの列に並び、待っていると佐藤が段々顔が青ざめてきた。


「大丈夫ですか?」
「え、えぇ」
 明らかに大丈夫ではない。
 しかしそれを分かっていながら、意地悪な亨はニヤニヤしながら待っていた。








 「次のお客様どうぞ~」
 係員が笑顔で手招きして亨ら二十人の番が来た。
 佐藤の緊張した顔が面白いのか、亨はゲラゲラ笑っている。






 アウスはスタートし、段々と上へ昇っていく。
 最頂点に達したところで一気に落ちていった。


 「ギャー!」
 佐藤は怖がり、大きな声を上げた。
 亨は楽しいのか、手を挙げて叫んでいる。


 アウス目玉の二回転する場所では佐藤の顔は死んでいた。








 アウスが終わり、地面に着いたところで亨が佐藤を見ると佐藤は泣いていた。


「ごめんなさい、意地悪な事しちゃって」
「本当ですよ……」
「でも佐藤さん可愛かったですよ」
「またそんな事を言って」
 佐藤は泣きながらも、照れて顔を赤くしていた。








 「そろそろ昼食にしましょうか」
 亨が佐藤に言うと佐藤ははいと言ってレストランに入っていった。




 デズニーロンドのレストランは全部で五つあり、二人が入ったのはその中でも一、二を争う人気店でイタリアンが美味しいと評判の店だ。
 「いらっしゃいませ。ようこそビシアンへ。お客様席へご案内致します」
 店員が二人に挨拶し、客席へ案内した。


「何にします?」
「どれも美味しそうですね。バーニャカウダならシェアして食べられますね」
「じゃあとりあえずバーニャカウダにしますか」
「はい」
 亨は店員を呼び、バーニャカウダを頼んだ。






 バーニャカウダが運ばれてきた。


「美味しそうー」
「じゃあ頂きますか」
「はい」
「いただきます」
「いただきます」
 二人は手を合わせて言った後、食べ始めた。










 その後色々なアトラクションを楽しんだ二人は夕方になり、最後のアトラクションに乗ろうと話していた。


 「最後観覧車に乗りませんか?」
 亨は佐藤にそう言うと佐藤は同意した。




 観覧車にスムーズに乗れた二人は夕焼けを見ながら上っていった。




 二人の乗る観覧車が頂点に達しようとした時、亨が口を開いた。


「佐藤真奈美さん!」
「は、はい!」
「俺と結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」
 佐藤は予想だにしなかった亨の言葉に呆気にとられていたがすぐに正気に戻り顔を赤らめ返事をした。
 「私なんかでよければよろしくお願いします」
 亨はダメ元だったが意外な返答に顔が固まっている。




「え? 付き合って頂けるんですか?」
「はい」
「やったー!」
 亨は観覧車の中で両手を突き上げた。
 その手が天井に当たり、亨が顔をしかめていると佐藤はふふと笑った。
 「これからよろしくお願いします」
 佐藤は再びそう言うと亨は頭を下げた。
 「よろしくお願いします!」
 その後亨は佐藤の隣に座り、観覧車が下りるのを待った。


 「私男性とお付き合いした事なんてなくて――。ましてや告白なんてされた事なかったんで凄く嬉しいです」
 佐藤は心中を語り、亨を見つめた。
 「俺も告白は初めてです」
 二人は笑いながら観覧車を降りた。






 亨は佐藤と手を繋ぎながら歩いている。
 「じゃあどこかで夕飯食べていきますか」
 亨が佐藤にそう言うと佐藤ははいととても幸せそうな顔で言った。




 亨は駐車場に行く前に西田に連絡し、今から戻ると伝えた。






 二人は駐車場に戻った。
 亨が後部座席のドアを開け、佐藤を先に乗せ、後から自分も入った。


「どこで夕食食べます? 好きなところで良いですよ」
「じゃあ――。文京区にあるもんじゃ焼き屋さんで良いですか?」
「分かりました。西田、出してくれ」
「かしこまりました」
 西田は返事をして車を発進させた。














 四十分程で文京区に入り、お目当ての店に到着した。
 店の名前は『有田もんじゃ』だ。


 車を降りて店に入った。
 「いらっしゃいませー」
 二人は座敷に座り、メニューを見て明太子チーズもんじゃを頼んだ。


「俺もんじゃ作った事ないんだけど佐藤さん作れる?」
「作れますよ」
「じゃあお願いしますね」
「はーい」






 こうして二人は恋人になった。

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