錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

決戦7

 ――其は万物の救世主。あらゆる者よ、聖天の玉座に集うべし。束ねる願いはここに一つとなりて、闇を貫く号砲となる。主に勝利をもたらすため、不滅の光を纏い招来せよ!

聖王剣せいおうけん、ミリオットォオオ!」

 聖治の両手に白銀のスパーダが握られる。誰よりも平和を願った少女の祈りが具現化したような、聖なる輝きを放ちながら地上を照らす。

 聖治は構える。ミリオットの能力発動、そのための準備に掛かる。

 聖王剣せいおうけん・ミリオット。属性は収束。初期段階では所持者の魔力を熱エネルギーに変換して放射するだけだが、三本で周囲に漂う魔力を使用可能。

 さらに五本になると平行世界からもマナを取り込むことが出来る。しかし、それらの能力も六本に比べればまるで話にならない。

 高位次元宇宙との接続。

 聖治は聖王剣せいおうけんミリオットを掲げた。夜空に切れ目が走り、そこからミリオットに向かい七色の光が吸い込まれていく。

 存在しないはずの幻の第五元素、エーテル。七色の光は万物を構成する万能元素であればこそ。

 突如この場を襲う異変に魔来名まきなは戸惑いそうになるが、すぐに平静さを取り戻す。聖治は技を行なうための準備に取り掛かりエネルギーを充填している。

 その隙を突くべきとも考えが過るが、

「フン」

 魔来名まきな天黒魔あくまを納刀し同じく魔力を注ぎ始めた。仮にここで半端な攻めをしたところであれは常軌を逸している。

 返り討ちにあうのがオチだろう。ならばこちらも全力で立ち向かい、相手の全力を凌駕するのみ。

「面白い」

 対するは高位次元宇宙の超存在。されどおびえることなく。笑みすら浮かべ。己の魔刀で神魔すら斬り伏せんと愛刀に手を伸ばす。

 互いに力を込める。目の前の敵を倒さんと思いを込める。そして、技を発動した。

「ミリオットォ!」

「絶技絶閃――」

 ミリオットの刀身に七色の光が帯びる。全人類の年間消費電力を上回るエネルギーが、この剣に凝縮されている。

 その脅威に対して、魔来名まきなも全力で立ち向かう。

「――極地!」

 これが、魔来名まきなが行う、最速にて最多の魔技!

「――虚空連斬!」

 同時に聖治の攻撃も放たれた。ミリオットを振るうことにより魔来名まきなを目がけ七色に輝く光が放射される。

 エーテル放射の反動で聖治が立つアスファルトが陥没する。光速を遥かに超える速度で飛来する脅威。

 表面温度は太陽すら上回り、地面が余波で溶解し空気は水蒸気爆発さながらに破裂した。

 だが、その脅威を迎え撃つは魔堂まどう魔来名まきなが極めた殺害の術理。死を目前にしてもなお挑む至高の攻撃だ。

 虚空の速度で行われる、空間断層、そして多元同時攻撃、その連続斬撃。空間が細切れに分断されていく。

 その光景はまるで空間の万華鏡。聖治と魔来名まきな、二人の間合い全てが空間断層で埋め尽くされる。

 その数は膨大だ。なぜなら虚空とは大数で表すとその数なんと一垓がい。百兆の百万倍である。

 一秒間に一垓回の斬撃。光速など話にならない。

 重なりあった空間断層の切れ目がエーテル放射に接触する。しかし、向かい来る七色の光を『少しだけ削っただけだった』。

 だが、目前に控えるのは無数の切断現象。たとえ鱗の一枚だろうが数で削り殺す。

 エーテルが削り取られ散っていく。総体を削りながら進行し、みるみると小さくなっていく。

 七色の欠片が空間を四散する様はまるで紙吹雪のようだった。幾億幾兆という輝きが視界を埋め尽くし、幻想的な軌跡を残しながら魔来名まきなへ迫る。

 両者の全力と全力が衝突する激烈な超速戦、勝負は一瞬で付いた――

「ぐああ!」

 魔来名まきなが吹き飛ばされる。後方に立つビルの壁面に穴を開けて突っ込んだ。

 ミリオットは能力を停止している。そのため高位次元宇宙との繋がりはなくなり夜空は元通りとなっていた。

「はあ、はあ!」

 ミリオットを振り下ろした体勢のまま聖治は息を整える。これまでの戦闘でかなり体力を使った。

 しかし価値はあった。魔来名まきなを吹き飛ばした。無事なはずがない。この一撃を受ければなんであれ蒸発だ、影も残らない。

「勝った……」

 静かな勝利に、聖治は疲れを露わにつぶやいた。

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