錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

決戦3

 聖治が立っていた空間がいくつもの断層となったのだ。割れた鏡のように空間がずれている。当然その場にいた聖治の体も空間と共に切断されていた。

 その後、切断された空間が修復を開始する。しかし、ずれた物体までは元通りとならず――

 そこにいた、剣島聖治はバラバラに散っていた。一瞬のことに傍から見れば聖治が爆発したようにも見えただろう。斬られた勢いで血液は弾かれ辺りにまき散っている。

 戦いは、終わった。

 魔来名まきなは納刀する。目の前には十に分かたれた人の部位。敵は死亡し儀式は終了。

 呆気ない。それは拍子抜けするほどの決着だった。

「やはりこの程度か」

 勝利は彼のものとなり、二人の宿命は終わりを告げた。

 はずだった――

「来い!」

 その時、声が轟く。死者にしては活気に溢れ、生者にしては不気味なそれが。

 魔来名まきなはこの時、己の勝利を確信していた。剣島聖治は死んだ。なら勝負はついた。

 だが、神の条理がここに覆る。死という絶対法則すら歪ませて、剣島聖治は、己のスパーダを宿命の戦いでついに発揮する。

 見るがいい。これが七本あるスパーダの内、神を冠するつるぎの力――

 ――其は神に仇名す反逆者。神殺しの大罪を謳い力を振るう者なり。天に向かいて異を唱えよ、神を破るとここに誓え。今こそ現神を屠り、汝こそが新たな神とならん!

スパーダ神剣しんけんゼウシスゥウウウ!」

 聖治は轟大な叫びと共に復活を果たす。体には傷一つなく、また分断された死体もない。だがそれもそのはず。そもそも、『剣島聖治が死んだ事実は存在しない』。

「勝負はまだ終わっていないッ!」

 これが剣島聖治のスパーダ、神剣しんけんゼウシス。属性、神殺し。

 神の業である世界改変や因果律操作が行われた際、時間や過程をそのままに発動をなかったことに修正する反逆の剣。

 剣島聖治は間違いなく殺された。だが、神剣しんけんゼウシスは死後であろうが問答無用で発動し、魔来名まきなが行なった因果律操作を強制修正した。

 過去の事実が書き換わり、剣島聖治はこうして生きていた。

 神に対する、絶対的な支配耐性が神剣しんけんゼウシスの能力。神に対抗出来るスパーダであるが、反面相手が人ならばただの剣という諸刃の剣。

 本来ならば錬成七剣神セブンスソードで使われることのない最弱のスパーダであるが、魔堂まどう魔来名まきなが身に付けた能力が規格外だっただけに発動の機会が巡ったのだ。

「フン。良い気になるな」

 仕留め損ねたことに魔来名まきなの表情が歪む。だがタネは割れている。因果律が修正されたのは把握している。

 今後この相手に対して絶対命中は使えないと分かっていれば殺すことなど造作もない。

「死ね」

 魔来名まきなは駆け寄り天黒魔あくまを一閃する。鋭い剣裁きは達人の技であり、技量は一級。

 だがそれだけではない。平行世界から招いた他の斬撃が同時に攻める。まったくの同時故に全ては防げない。

「甘い!」

 だが、ゼウシスと天黒魔あくまが衝突した瞬間、それは起こった。平行世界からの攻撃が掻き消え、打ち消されたのだ。

 神剣しんけんゼウシスの能力は神殺しであるが、それはあくまで初期能力。所持者のスパーダが増えれば能力は段階的に成長していく。

 そして、剣島聖治のスパーダは今や六本。完成間近であり発揮する力は全能一歩手前の状態。
 神殺しに加えて魔術的超自然的な能力の無効。対象に接触すれば異能をかき消す。

「ちっ」

 これで絶対命中と多元同時攻撃を封じられた。魔来名まきなは苦い思いがざわめくが、すぐに攻撃を再開する。原始的ではあるものの単純で圧倒的。

 魔来名まきなは加速魔術を用いて急襲したのだ。どれだけ支配耐性に優れ魔術に対抗出来ようとも、触れられなければ意味はない。

 音速で放たれる剣撃はソニックブームすら纏い聖治の首元へと食らいつく。まさに急所、必殺だ。

 だが、相手が速度で攻めてくるのであれば、それに相応しい力がある!

「来い、信念スパーダ!」

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