錬成七剣神(セブンスソード)
記憶4
歩き出す魔来名の後ろ姿へ制止の声を叫ぶが、歩みは止まることはなかった。佐城は走って追いつくと、横に並び魔来名に言い続ける。
「どうして分かってくれないの!? あなただって、気づき始めているんでしょう!?」
「…………」
魔来名はなおも佐城には反応を示さず、廃墟の外に出る。佐城も離されないよう追い縋り、魔来名を説得しようと試みる。
だが、一向に歩みを止めない魔来名を見て、先回りして両腕を広げた。それで魔来名も立ち止まる。
「……そこを退け」
「退かない」
静かながらも鋭い言葉が両者から発せられる。
佐城は瞳にダイヤモンドのように固い意思を以て魔来名を見上げた。
「私は、かつてのあなたを守れなかった。悔しがるあなたを止められなかった。結果、あなたを救えなかった……。でも、今なら出来る! あなたの願いを、叶えられる」
一切揺れない視線。絶対に諦めない意志。彼を思う、六十年越しの気持ち。
「あなたには、彼は斬らせない。剣島聖治は私が斬らせない。たとえ、命を捨ててでも」
それは、佐城が己の魂に刻んだ感情。それほどまでに強く、彼女が抱いた彼女の思い。
「私は、あなたを信じてる……!」
佐城香織が、彼を愛していることの証であった。
諦めないはずである。折れないはずである。何故ならば、魂にまで刻まれた彼女の思いは魔来名の願望と同等かそれ以上。
魔来名が折れないで、佐城が諦めるはずがない。
「…………」
無言で二人は睨み合う。互いに退かず平行線が続いていく。
そんな中で、魔来名は何を思っているのか。力への渇望はまだある。止めようとは未だに思わない。
だが、目の前の彼女に魔来名は感じていた。命を捨ててでも止めると言う彼女を見て。
どこか久しく、懐かしい思いを。それこそ毎日毎日、うるさいくらいに、飽きるほどしたやり取りのような。
そうだ。この女は、いつも俺の邪魔ばかりしに来ては、うるさく小言を吐いてくる。そんな日常を、どこかで――
「俺は……」
魔来名は、知らず言葉を出していた。言う台詞は決まっておらず何を言いたいのか自分でも分からぬまま。ただ、目の前の少女を見下ろして思う。
出会った時から、うるさい女だな、と。
けれど、そこに嫌悪の情はなかった。それがまた不思議だった。まだ数回しかしていないこのやり取りを、もう数十回繰り返してきたように感じてる。
「正一さん、私は――」
そんな魔来名へ、話しかけながら佐城が近寄る。手を伸ばし、彼に触れようとした、その時だった。
佐城の後方で空間が歪む。そこから槍が現れ――佐城を刺し貫いたのだ。
「あっ、はっ!」
それだけに留まらず、新たに三つの槍が佐城の胸や腹を突き刺した。
目の前の光景に、魔来名の双眸が見開かれた。
突如起こった出来事はスローモーションのように映り、佐城が痛みに浮かべる表情も、倒れる体も、全てが瞳に焼き付けられる。
そして、心に電流が走った。
「幸子ぉおおおお」
瞬間、魔来名は衝動的に叫んでいた。そして体を動かし崩れる体を受け止める。
腕の中で佐城は苦しそうに呻いていたが、魔来名を見つめると、苦痛に耐えながら笑ってみせた。
「ようやく、私の名前、呼んでくれたね……」
佐城は嬉しそうに言うが、反対に魔来名は混乱していた。この期に及んでまだ、何故自分が彼女を幸子と呼んだのか分からなかった。
「お願い……」
そんな彼に、佐城は手を差し伸ばして願った。
「どうして分かってくれないの!? あなただって、気づき始めているんでしょう!?」
「…………」
魔来名はなおも佐城には反応を示さず、廃墟の外に出る。佐城も離されないよう追い縋り、魔来名を説得しようと試みる。
だが、一向に歩みを止めない魔来名を見て、先回りして両腕を広げた。それで魔来名も立ち止まる。
「……そこを退け」
「退かない」
静かながらも鋭い言葉が両者から発せられる。
佐城は瞳にダイヤモンドのように固い意思を以て魔来名を見上げた。
「私は、かつてのあなたを守れなかった。悔しがるあなたを止められなかった。結果、あなたを救えなかった……。でも、今なら出来る! あなたの願いを、叶えられる」
一切揺れない視線。絶対に諦めない意志。彼を思う、六十年越しの気持ち。
「あなたには、彼は斬らせない。剣島聖治は私が斬らせない。たとえ、命を捨ててでも」
それは、佐城が己の魂に刻んだ感情。それほどまでに強く、彼女が抱いた彼女の思い。
「私は、あなたを信じてる……!」
佐城香織が、彼を愛していることの証であった。
諦めないはずである。折れないはずである。何故ならば、魂にまで刻まれた彼女の思いは魔来名の願望と同等かそれ以上。
魔来名が折れないで、佐城が諦めるはずがない。
「…………」
無言で二人は睨み合う。互いに退かず平行線が続いていく。
そんな中で、魔来名は何を思っているのか。力への渇望はまだある。止めようとは未だに思わない。
だが、目の前の彼女に魔来名は感じていた。命を捨ててでも止めると言う彼女を見て。
どこか久しく、懐かしい思いを。それこそ毎日毎日、うるさいくらいに、飽きるほどしたやり取りのような。
そうだ。この女は、いつも俺の邪魔ばかりしに来ては、うるさく小言を吐いてくる。そんな日常を、どこかで――
「俺は……」
魔来名は、知らず言葉を出していた。言う台詞は決まっておらず何を言いたいのか自分でも分からぬまま。ただ、目の前の少女を見下ろして思う。
出会った時から、うるさい女だな、と。
けれど、そこに嫌悪の情はなかった。それがまた不思議だった。まだ数回しかしていないこのやり取りを、もう数十回繰り返してきたように感じてる。
「正一さん、私は――」
そんな魔来名へ、話しかけながら佐城が近寄る。手を伸ばし、彼に触れようとした、その時だった。
佐城の後方で空間が歪む。そこから槍が現れ――佐城を刺し貫いたのだ。
「あっ、はっ!」
それだけに留まらず、新たに三つの槍が佐城の胸や腹を突き刺した。
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そして、心に電流が走った。
「幸子ぉおおおお」
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腕の中で佐城は苦しそうに呻いていたが、魔来名を見つめると、苦痛に耐えながら笑ってみせた。
「ようやく、私の名前、呼んでくれたね……」
佐城は嬉しそうに言うが、反対に魔来名は混乱していた。この期に及んでまだ、何故自分が彼女を幸子と呼んだのか分からなかった。
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そんな彼に、佐城は手を差し伸ばして願った。
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