錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦半蔵2
魔来名は感嘆するかのように、目の前の達人を見て呟いた。
「己が攻撃したものと同じ攻撃が別の場所から襲撃する。自分が二人いるならばともかく、お前は一人しかいない。ならば答えは決まってくる」
魔来名は答えに至り、半蔵は不動のまま固まっている。そして、魔来名は自身がたどり着いた解答を口にした。
「平行世界からの急襲。別次元にいる自分が行った攻撃をこの世界に重ねたか。同時多元攻撃。よく出来ている」
「団長となるべき男からの賛辞だ、素直に受け取っておこう」
半蔵は魔来名の言葉を否定することをせず麗句を述べる。だが、表情は一切緩まず、むしろ固く結ばれていた。
平行世界からの同時多元攻撃。平行世界とは自分たちが生きている宇宙と似た別の宇宙であり、そこにはもう一人の自分が生きている。
そうした宇宙が無限に存在しているのだ。その宇宙の中には今の自分と同じ状況の自分もいる。
半蔵の場合、正面から攻撃した自分、背後から攻撃した自分、左右から攻撃した自分など。
そうした他の平行世界で行われた攻撃を次元の壁を越え、自分の次元と重ねることで同時攻撃を行なったのだ。
「二度の攻撃だけで看破したのはさすがだ。だが、分かったところでどうしようもない」
半蔵の投擲が魔来名(まきな)を襲う。正面から二本のナイフが弾速で飛来する。しかも、今度は四方から同じ攻撃が襲っていた。前後左右、月光を反射した刃が魔来名に迫る。
だが、逃げ場のない死地を駆ける純白の疾風があった。
魔来名が、絶体絶命の逆境を疾走する。天黒魔に魔力を込めて人の限界を超える。刹那に至るまでの魔力は注げなかったが、今の魔来名は音速を超えている。
鈍速な暗器を掻い潜り、半蔵へと直進する。
「ッ!」
マッハの単位で肉薄する魔来名に半蔵が反応する。一息で術式を編むと魔来名を迎える。
翻る天黒魔の裂光、返す暗器の彩光。両者は激突し、可能な限りの攻防を繰り返してから間合いを離した。
「すごい……」
傍から見ている佐城には今しがた起きた戦闘を理解出来ない。
分かったことは、魔来名と半蔵が戦いを始めた途端暴風が起こり、二人が三人分の残像を映して戦っている姿だった。
そして魔来名の加速と同等の加速魔術。否、それ以上の速度で半蔵は魔来名を返り討ちにしていた。
魔来名は目の先にいる半蔵を無言で直視する。頬からは、一筋の血が流れていた。
「魔来名、今のお前では私を倒すには至らない」
「ツっ!」
突如加わる痛みに魔来名が片膝を付いた。目線を下ろすと、左太ももに深々と暗器が刺さっている。まるで予期できぬ奇襲に、構えることすら出来なかった。
「諦めろ。私の攻撃は防げない。お前はただ完成することだけを目指せばいい」
そこで、初めて半蔵が魔来名から目を逸らした。
その視線の先、そこには今まで両者の戦いを見つめていた佐城がいた。そこへ、半蔵は片手で暗器を投げつける。
魔来名に行った殺意と比べればダーツのような気軽さで。だが、練磨した肉体と加速魔術による補助で投擲は弾丸と変わらない。
また、今この時別の世界で佐城に投げつけた暗器をこの世界に呼び込むことで、一つだった暗器は三つに増えている。
「――――」
半蔵から視線を向けられ佐城の心臓が跳ねる。瞬間的に殺されると察してしまい、恐怖に声も出ない。その、時間すらなかった。
(殺される!?)
額、喉、心臓。反応すら出来ない佐城には防ぐことなど出来るはずがなく、――暗器は全て突き刺さった。
「え……?」
「馬鹿な、何故……」
瞬間、佐城と半蔵から驚きと疑問の声が漏れる。半蔵がナイフを投げた先、佐城の目の前。そこになにがあるというのか。
そこには、魔来名が立っていたのだ。半蔵の暗器を背中で全て受け止めて。
「……何故守る。魔来名、説明してもらおう」
「どうして……」
「…………」
「己が攻撃したものと同じ攻撃が別の場所から襲撃する。自分が二人いるならばともかく、お前は一人しかいない。ならば答えは決まってくる」
魔来名は答えに至り、半蔵は不動のまま固まっている。そして、魔来名は自身がたどり着いた解答を口にした。
「平行世界からの急襲。別次元にいる自分が行った攻撃をこの世界に重ねたか。同時多元攻撃。よく出来ている」
「団長となるべき男からの賛辞だ、素直に受け取っておこう」
半蔵は魔来名の言葉を否定することをせず麗句を述べる。だが、表情は一切緩まず、むしろ固く結ばれていた。
平行世界からの同時多元攻撃。平行世界とは自分たちが生きている宇宙と似た別の宇宙であり、そこにはもう一人の自分が生きている。
そうした宇宙が無限に存在しているのだ。その宇宙の中には今の自分と同じ状況の自分もいる。
半蔵の場合、正面から攻撃した自分、背後から攻撃した自分、左右から攻撃した自分など。
そうした他の平行世界で行われた攻撃を次元の壁を越え、自分の次元と重ねることで同時攻撃を行なったのだ。
「二度の攻撃だけで看破したのはさすがだ。だが、分かったところでどうしようもない」
半蔵の投擲が魔来名(まきな)を襲う。正面から二本のナイフが弾速で飛来する。しかも、今度は四方から同じ攻撃が襲っていた。前後左右、月光を反射した刃が魔来名に迫る。
だが、逃げ場のない死地を駆ける純白の疾風があった。
魔来名が、絶体絶命の逆境を疾走する。天黒魔に魔力を込めて人の限界を超える。刹那に至るまでの魔力は注げなかったが、今の魔来名は音速を超えている。
鈍速な暗器を掻い潜り、半蔵へと直進する。
「ッ!」
マッハの単位で肉薄する魔来名に半蔵が反応する。一息で術式を編むと魔来名を迎える。
翻る天黒魔の裂光、返す暗器の彩光。両者は激突し、可能な限りの攻防を繰り返してから間合いを離した。
「すごい……」
傍から見ている佐城には今しがた起きた戦闘を理解出来ない。
分かったことは、魔来名と半蔵が戦いを始めた途端暴風が起こり、二人が三人分の残像を映して戦っている姿だった。
そして魔来名の加速と同等の加速魔術。否、それ以上の速度で半蔵は魔来名を返り討ちにしていた。
魔来名は目の先にいる半蔵を無言で直視する。頬からは、一筋の血が流れていた。
「魔来名、今のお前では私を倒すには至らない」
「ツっ!」
突如加わる痛みに魔来名が片膝を付いた。目線を下ろすと、左太ももに深々と暗器が刺さっている。まるで予期できぬ奇襲に、構えることすら出来なかった。
「諦めろ。私の攻撃は防げない。お前はただ完成することだけを目指せばいい」
そこで、初めて半蔵が魔来名から目を逸らした。
その視線の先、そこには今まで両者の戦いを見つめていた佐城がいた。そこへ、半蔵は片手で暗器を投げつける。
魔来名に行った殺意と比べればダーツのような気軽さで。だが、練磨した肉体と加速魔術による補助で投擲は弾丸と変わらない。
また、今この時別の世界で佐城に投げつけた暗器をこの世界に呼び込むことで、一つだった暗器は三つに増えている。
「――――」
半蔵から視線を向けられ佐城の心臓が跳ねる。瞬間的に殺されると察してしまい、恐怖に声も出ない。その、時間すらなかった。
(殺される!?)
額、喉、心臓。反応すら出来ない佐城には防ぐことなど出来るはずがなく、――暗器は全て突き刺さった。
「え……?」
「馬鹿な、何故……」
瞬間、佐城と半蔵から驚きと疑問の声が漏れる。半蔵がナイフを投げた先、佐城の目の前。そこになにがあるというのか。
そこには、魔来名が立っていたのだ。半蔵の暗器を背中で全て受け止めて。
「……何故守る。魔来名、説明してもらおう」
「どうして……」
「…………」
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