錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦エルター3
「刹那斬り――」
必中の法則が放たれたと同時、魔来名も殺害の術理を以て跳び出していた。
今やそこにいるのは一人の人間ではなく一つの理。殺害の擬人化にまで極まった男が死地を駆ける。
瞬間、エルターはなにを思っただろうか。
いや、思うことすら出来なかっただろう。
この世界には、刹那と呼ばれる少単位がある。
同じ少数の単位である弾指の六十五分の一とも呼ばれ、現在では大数と比較して、その数、百京に該当する単位である。
魔来名は駆け、天黒魔を抜き放つ。
それに要した時間、実に〇コンマ〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇一秒。
これを、認識出来る人間がいようか。
「――――」
その圧倒的なまでの速度に、ついぞ魔女すら気が付けなかった。
エルターの首が落ちる。頭部は身体と分断されて、悲鳴の一つも出なかった。
瞬殺。魔来名の手に握られるのは一つの刀。それこそが、
第一のスパーダ、天黒魔。属性は殺害。その殺意は呪いの領域であり条理を超えて対象を殺害する。
零体、概念存在、あらゆるものを切断し、与えた傷は治らず、転生されようが傷は残り続ける。
必ず殺す。凶念に彩られた魔刀こそ、魔来名が持つスパーダだった。
「……フン」
彼女の死を魔来名は見下ろしている。今までの人生を魔術と武術に捧げ極めた達人も彼の期待には応えられなかった。
そんな彼を、背後から強襲するものがあった。
天より裁きよ来たれ断罪の時。
その軌道上は光矢の熱量による余波だけで蒸発、コンクリートだろうが焼失させ、そして放たれた黄金光は魔来名の後方で反転しており、一度は逃した標的を再び狙ってきていた。
魔来名は振り返るよりも早くに横に飛ぶ。それで彼女の最後の矢は掠めることなく夜空に向かって消えていった。
「……術師が死ねば操作した因果律も修正される、か。つくづく詰めの甘い女だな」
魔来名は起き上がり、コートに付いた土を払う。
決着は付いた。エルターは死亡し、立っているのは魔堂魔来名。必中ならば、当たる前に倒せばいいという単純な理屈で魔来名は生き残っていた。
その時、エルターの遺体から光の玉が浮かぶ上がり、いきおいよく魔来名に向かってきた。
「ん!」
それを片手を翳して受け止める。光の玉は魔来名の片手に当たると全身に馴染むように消えていった。
「……ふん」
受け止めた片手を何度か開閉してみる。魔来名は小さく鼻を鳴らしこの場を立ち去った。ここに興味はすでにない。
魔来名は勝利の余韻すらなく、拠点としている廃墟に向かって歩き出した。
沈黙した夜に、一人分の足音が鳴る。
必中の法則が放たれたと同時、魔来名も殺害の術理を以て跳び出していた。
今やそこにいるのは一人の人間ではなく一つの理。殺害の擬人化にまで極まった男が死地を駆ける。
瞬間、エルターはなにを思っただろうか。
いや、思うことすら出来なかっただろう。
この世界には、刹那と呼ばれる少単位がある。
同じ少数の単位である弾指の六十五分の一とも呼ばれ、現在では大数と比較して、その数、百京に該当する単位である。
魔来名は駆け、天黒魔を抜き放つ。
それに要した時間、実に〇コンマ〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇一秒。
これを、認識出来る人間がいようか。
「――――」
その圧倒的なまでの速度に、ついぞ魔女すら気が付けなかった。
エルターの首が落ちる。頭部は身体と分断されて、悲鳴の一つも出なかった。
瞬殺。魔来名の手に握られるのは一つの刀。それこそが、
第一のスパーダ、天黒魔。属性は殺害。その殺意は呪いの領域であり条理を超えて対象を殺害する。
零体、概念存在、あらゆるものを切断し、与えた傷は治らず、転生されようが傷は残り続ける。
必ず殺す。凶念に彩られた魔刀こそ、魔来名が持つスパーダだった。
「……フン」
彼女の死を魔来名は見下ろしている。今までの人生を魔術と武術に捧げ極めた達人も彼の期待には応えられなかった。
そんな彼を、背後から強襲するものがあった。
天より裁きよ来たれ断罪の時。
その軌道上は光矢の熱量による余波だけで蒸発、コンクリートだろうが焼失させ、そして放たれた黄金光は魔来名の後方で反転しており、一度は逃した標的を再び狙ってきていた。
魔来名は振り返るよりも早くに横に飛ぶ。それで彼女の最後の矢は掠めることなく夜空に向かって消えていった。
「……術師が死ねば操作した因果律も修正される、か。つくづく詰めの甘い女だな」
魔来名は起き上がり、コートに付いた土を払う。
決着は付いた。エルターは死亡し、立っているのは魔堂魔来名。必中ならば、当たる前に倒せばいいという単純な理屈で魔来名は生き残っていた。
その時、エルターの遺体から光の玉が浮かぶ上がり、いきおいよく魔来名に向かってきた。
「ん!」
それを片手を翳して受け止める。光の玉は魔来名の片手に当たると全身に馴染むように消えていった。
「……ふん」
受け止めた片手を何度か開閉してみる。魔来名は小さく鼻を鳴らしこの場を立ち去った。ここに興味はすでにない。
魔来名は勝利の余韻すらなく、拠点としている廃墟に向かって歩き出した。
沈黙した夜に、一人分の足音が鳴る。
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