錬成七剣神(セブンスソード)
幹部戦エルター2
「因果律の操作。結果を確定して矢を射ぬく必中の魔技よ。回避も防御も不可能。それが私の魔術。抵抗は無駄よ。あなたは私に射抜かれるだけ。でも安心して頂戴。あなたは殺さない。ただ、今の内に教えたかったのよ。私の強さを」
そう言ってエルターは弓矢を見せつける。己が費やしてきた修練の結晶。血の滲む苦行と気の遠くなる時間を経て行き着いた一つの境地。あらゆるものを射抜く必中の弓士は、誇るように見せつけていた。
「フッ、フフ、フッハハハハ!」
だが、エルターが語る誇りを魔来名は笑った。左手を顔に当て、腹の底から笑っていた。
輝く金髪が揺れ美貌を誇る魔来名の顔が醜悪に歪む。表情に、悪魔を彷彿とさせる笑いを見せた。
「……なにが可笑しい?」
魔来名の哄笑にエルターが怒りをあらわに睨んでくる。
「なるほど、女だ。発想が脆弱に過ぎる」
「なに?」
闇夜の静けさすら引き裂く笑い声は身を潜め、魔来名は辛辣に突き放す。
「必中? くだらん。必要なのは相手を倒せる力だ。当てただけで悦に入るとは愚かだな。お前の考えは、根底から弱者のものだ」
魔来名はエルターを批判する。辛辣に。酷評に。彼女が精根込めて育て上げた花を踏みつけるように。
「殺せなければ意味などあるまい」
魔来名の物言いに、エルターの表情がさらに歪む。
「貴様ァ……!」
「かかって来るがいい弱者。強者の所以を教えてやろう」
魔来名はそう言うと腰を落とし、右手を柄の上に添えた。居合の構え。
そして、呟いた。
「こい、我が力」
己が魔刀、スパーダに魔力を注ぎ始める
勝つとは殺すこと。殺せば必勝。故に必殺とは必勝である。勝つため殺すため、魔来名は殺害を体現せんと力を込める。
それに対しエルターも最大の攻撃で応じていた。
「天より裁きよ来たれ断罪の時!」
エルターの叫びが夜空に木霊する。エルターが掲げた弓は巨大化しており二メートルを超えていた。
木製の弓幹は竹のように太く、頑丈な造りに意匠を凝らした装飾を持つこの弓は魔導弓士が扱うことが前提の、武威と魔術、そして芸術の融合体だ。
だが、そこには肝心の矢がない。いくら弦を耳の後ろまで引こうが矢がなければ空振りである。
けれどもエルターは弦を引いており、殺意に満ちた瞳で標的である魔来名を定めている。
その瞬間、エルターの後方で空間が歪んだ。水面に水滴が落ちたが如く波紋を立てるとそこから穴が開き、距離を隔てた別の場所と繋がっていた。
魔来名からは、穴を通じてその先が見える。
それは――宇宙だった。
穴から覗く先は漆黒と星屑。ここと宇宙を繋ぐ穴では気圧差から台風さながらの暴風が吹き荒れており、エルターの長髪が引っ張られるように乱れている。
廃墟に散らばるゴミや石ころが穴に吸い込まれていく。
その穴から出現するのは輝きを放つ巨杭。太さだけでも三十センチになり弓矢というよりもミサイルだ。
エルター最大の攻撃。星々の輝きにも劣らぬ必中の光弾。最後の矢。
エルターは弦を引き、己を愚弄した魔来名を断罪するかのように叫んだ。
「落ちろ魔来名ァアアア!」
エルターは叫び、必殺必中、黄金の矢を発射した。エルターが弦から手を離し、それと連動して矢が動く。
大気圏外から放たれた裁きの矢、天からの強襲。ここ一帯をすら破壊する猛威が、必中の衣を纏って魔来名に突き進む。
だが、
魔来名は、
動じない。
代わりにうねりを上げるのはなにか。対象を殺させろと、殺意を呪いの域にまでして叫ぶものはなにか。
ここに、最強最悪のスパーダが吠える。
「喰らえ、天黒魔」
魔来名が持つ刀が鳴動する。
そして、
そう言ってエルターは弓矢を見せつける。己が費やしてきた修練の結晶。血の滲む苦行と気の遠くなる時間を経て行き着いた一つの境地。あらゆるものを射抜く必中の弓士は、誇るように見せつけていた。
「フッ、フフ、フッハハハハ!」
だが、エルターが語る誇りを魔来名は笑った。左手を顔に当て、腹の底から笑っていた。
輝く金髪が揺れ美貌を誇る魔来名の顔が醜悪に歪む。表情に、悪魔を彷彿とさせる笑いを見せた。
「……なにが可笑しい?」
魔来名の哄笑にエルターが怒りをあらわに睨んでくる。
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「なに?」
闇夜の静けさすら引き裂く笑い声は身を潜め、魔来名は辛辣に突き放す。
「必中? くだらん。必要なのは相手を倒せる力だ。当てただけで悦に入るとは愚かだな。お前の考えは、根底から弱者のものだ」
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「貴様ァ……!」
「かかって来るがいい弱者。強者の所以を教えてやろう」
魔来名はそう言うと腰を落とし、右手を柄の上に添えた。居合の構え。
そして、呟いた。
「こい、我が力」
己が魔刀、スパーダに魔力を注ぎ始める
勝つとは殺すこと。殺せば必勝。故に必殺とは必勝である。勝つため殺すため、魔来名は殺害を体現せんと力を込める。
それに対しエルターも最大の攻撃で応じていた。
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エルターの叫びが夜空に木霊する。エルターが掲げた弓は巨大化しており二メートルを超えていた。
木製の弓幹は竹のように太く、頑丈な造りに意匠を凝らした装飾を持つこの弓は魔導弓士が扱うことが前提の、武威と魔術、そして芸術の融合体だ。
だが、そこには肝心の矢がない。いくら弦を耳の後ろまで引こうが矢がなければ空振りである。
けれどもエルターは弦を引いており、殺意に満ちた瞳で標的である魔来名を定めている。
その瞬間、エルターの後方で空間が歪んだ。水面に水滴が落ちたが如く波紋を立てるとそこから穴が開き、距離を隔てた別の場所と繋がっていた。
魔来名からは、穴を通じてその先が見える。
それは――宇宙だった。
穴から覗く先は漆黒と星屑。ここと宇宙を繋ぐ穴では気圧差から台風さながらの暴風が吹き荒れており、エルターの長髪が引っ張られるように乱れている。
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その穴から出現するのは輝きを放つ巨杭。太さだけでも三十センチになり弓矢というよりもミサイルだ。
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エルターは弦を引き、己を愚弄した魔来名を断罪するかのように叫んだ。
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エルターは叫び、必殺必中、黄金の矢を発射した。エルターが弦から手を離し、それと連動して矢が動く。
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魔来名は、
動じない。
代わりにうねりを上げるのはなにか。対象を殺させろと、殺意を呪いの域にまでして叫ぶものはなにか。
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