錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

犠牲6

 だけどその時、力也りきやの言葉に意表を突かれた。

「聖治君を、守れた、からぁ……」

 力也りきやは、涙を流しながら笑ってそう言ったのだ。

「馬鹿野郎ぉおお! そんなんじゃない! 俺は、俺は一緒に戦わなかったんだ! 最低だ。俺なんかじゃない、力也りきやが生き残るべきだ!」

 聖治は泣いた。生きて欲しい。そう思う気持ちが沸き起こる。聖治は本当に自分よりも力也りきやに生きて欲しかった。

香織かおりさん! 香織かおりさんのスパーダで力也りきやを治してくれ!」

 聖治は振り向き香織かおりさんに呼びかける。香織かおりさんは聖治の背後におり力也りきやを静かに見守っていた。だが、聖治が振り向くなり視線を足元へと落した。

「あの人の傷は、治せないの……」

「そんなッ!」

 悲痛に歪む香織かおりさんの表情から本当にどうしようもないことを察し、聖治は力也りきやに向き直る。顔色がどんどん青白く冷たくなっていく。

「ねえ、聖治、くん……」

 刻一刻と死期が迫る中で力也(りきや)が声を上げる。それだけで生命力を削る行為なのに、構わず力也りきやは続けた。

「僕は、鈍いし、ノロマだし、よく、いじめられたけど……」

 懸命な声を、聖治も懸命に聞いていた。聞き逃さないように、一生忘れないように。

「ずっと、友達だよねぇ……?」

 聖治は申し訳なくて、自分が不甲斐なかった。けれど、力也りきやから寄せてくれた確認に力強く応えた。

「当たり前だ! ずっと、ずっと、たとえ『生まれ変わっても』、ずっと友達だッ!」

 聖治は力也りきやの手を取り、両手で握った。こんな自分を、今でも友達だと言ってくれる力也りきやに号泣した。

 涙を流しながら、握り締めた手に誓いを立てるように、ありったけの力を込めた。

「あり、がとう……、ね……」

 そう言って力也りきやは安らかに笑った。

 そして。笑みだけ残して、力也りきやは息を引き取った。

 力也りきやの胸の中央が発光する。すると体が光の球体となり聖治の身体へと移っていった。星都せいとの身体も発光し、距離が一番近かった聖治に引かれるように球体が吸収された。

「くっ! うあああああああ!」

 友達が今日、二人も死んだ。それを、聖治は守れなかった。悲しかった。だけど、それ以上に悔しかった。

「くそおおおおおおお!」

 暴れる感情を右手に込めて、聖治は地面を殴った。

 聖治はこの日、大切なものを失った。失う時、自分は無力だった。

 悔しかった。恐怖に屈し、何も出来なかった自分が。無力な自分が。不甲斐なくて、悔しくて仕方がなかった。

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