錬成七剣神(セブンスソード)

奏せいや

犠牲3

 でも、戦闘の内容は明らか。星都(せいと)だけじゃこの男には勝てない。

星都せいと、俺も戦う!」

 聖治はゼウシスを構え前に出ようとした。

「止めろ!」

「なぜだ!?」

 けれど、星都せいとは制止してきた。

「誰もこいつに手を出すな、すぐ殺されるぞ!」

星都せいと! それじゃお前が!」

 星都せいとは聖治を見ていない。今も魔来名まきなの視線に耐えている。一人で戦って、一番苦しいはずなのに。

 本当は今だって苦しいはずなのに。それでも、星都せいとは一人で対峙する。

「俺は一人でいい」

「駄目だ星都せいと! 一人じゃ無理だ」

 聖治は必死に星都せいとに呼びかけるが、星都せいとは振り向いてくれなかった。

「大丈夫だって。心配すんな」

 その代わり、星都せいとは優しい声でそう言ってくれた。

「お前が一緒に戦うって言ってくれた時、嬉しかったぜ」

星都せいと……? まさか、止めろ星都せいと!」

 堪らず聖治は手を伸ばしていた。ここで止めないと消えてしまう気がしたからだ。

「そこで見てろよ、間抜け」

 星都せいとは駆け出した。聖治の手を通り過ぎて。明るい言葉を響かせて。

 その速度は最速を更新する最速だった。この時星都せいとの身体自体が風を纏い、風圧によって道端の雑多を吹き飛ばす。

 猛烈な突撃だ、その速度は誰にも止められない。

 だが、それでも、聖治の不安は消えなかった。

星都せいとぉおおおお!」

 むしろこれでも勝てる気がしないのだ、この男には。

 そして、ここにきて魔来名まきなが抜刀する。それは同時に呪いだった。ただ殺すためだけに存在する最恐の一閃。呪殺に等しい一撃が解放される。

刹那せつな斬り――」

 瞬間だった。柄を握ったかと思った直後、いつの間にか魔来名(まきな)の右手は抜刀を終え、振り抜いた後だった。それは速いとかではなく、次の瞬間にはそうなっていたのだ。

 そして。

「あ……」

 視界の端を、星都の手から離れた光帝剣が飛んでいく。同時に吹き出る赤い血が夜空に散った。

 星都は魔来名の前で切られ、ゆっくりと倒れていった。

 悲鳴はなかった。ただ、血だけが今も地面に広がっていく。その胸にあった希望も夢も、零れ落ちていくように。

 その光景に聖治の熱が引いていった。

星都せいと……うそだろ……」

 胸の中でなにかが崩れていく。約束、誓い、明るい未来。そうした思いがぜんぶ、消えていく。
 聖治は両膝を地面についた。視線は倒れている星都せいとをじっと見つめている。

 そんな聖治にゆっくりと魔来名まきなが近づいてくる。それが分かっているのに、聖治は星都せいとから目を放せなかった。

 そんな聖治の前に人影が飛び込んできた。大きな背中が二人に割って入ってくる。

 それは力也りきやだった。聖治に背を向け魔来名まきなの前に立つ。

 それが、どれだけ危険な行為か分かっているはずなのに。このままじゃ力也りきやも殺される。

力也りきや……?」

 聖治は放心状態から声をかける。

「止めろ……止めろ力也りきや、逃げるんだ!」

 それがどういうことかようやく理解して聖治は叫ぶ。

 けれど、力也りきやは逃げるどころかその両手には鉄塊王てっかいおう撃鉄げきてつが握られていた。

「聖治君は、僕が守るぅ!」

「なにを言ってるんだ力也りきや! お前が逃げろ! 早く逃げるんだ!」

 聖治は叫んだ、目の前の大きな背中に。

 けれどそこで気づいた、自分の指先が震えていたのだ。

(恐れているのか、俺は?)

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