は、魔王?そんなのうちのブラコン妹の方が100倍危ないんだが

プチパン

19話 注がれる視線、哀れみと疑い



 ハクヤは今、多くの視線を浴びながら指にインクを付けていた。
 その中には面白いものが見れると嘲笑を浮かべる者、可哀想だと哀れみの目を向ける者など様々な者がいる事だろう。


「はぁー⋯⋯」


 一つ、周りに聞こえないほどの溜息をつく。


(本当にクレアの奴なんて事してくれてんだ⋯⋯俺が先に登録しとけば良かったかな)


 今更ながらに後悔の念が押し寄せて来ていた。
 こうして一高校生であったハクヤに視線が集まっているのは、クレアのせいである。
 驚く事に、クレアは常人よりかけ離れた高ステータスだったらしく、それに加え特別なスキルを二つまで持っていたのだ、騒ぎになってもおかしくないのは当然だった。
 しかし、問題はその後だった、クレアはあろうことか宣言してしまったのである。
 私なんかより、全然兄の方が強い──と。


「はぁー⋯⋯」


 何度目かわからないため息が漏れた。
 そうしてるうちに、カードに指を押し当て登録を終わらせる。
 するとお姉さんがカードを取り、早足でこの空気から逃れるかのように、ギルドの奥にある部屋に持って行った。


 クレア達のところに戻るとユリアとレイラは心配するように、クレアはニコニコとした満面の笑みでハクヤを迎えてくれる。


「みんな今から絶対びっくりするね!」


 クレアがハクヤの右腕にぎゅっと抱きついてくる。


「っ⋯⋯!」


 いきなり腕に加わる柔らかな圧、程よい大きさのそれが押し当てられ、温かな体温が直に伝わってきてハクヤは何も考えられなくなる。


「クレア、一応人前⋯⋯ですよ?」


 ユリアが信じられないものを見るかのように言い、それに合わせてレイラも頷く。
 その声で止まっていた脳がようやく動き出した。


「お、おい! クレア!」


 そう言って腕を振り解こうとするが、二歳も年下のはずの妹の力は意外にも強く、振りほどく事が出来ない。


「ハクヤお兄ちゃん❤︎ 照れてるのぉ? いつもしてる事なのにぃ?」


 そう問題はそれなのだ⋯⋯。
 日本にいた時にもこうやってクレアに抱きつかれる事がよくあった。
 確かにテンパりはするし頬も赤くなってたりしていた、なんだかんだ言ってクレアはハクヤでも認めるほどの美少女だし、歳も二歳しか離れてないのだ。
 いくら妹とはいえ何も感じないわけがなかったわけだ。
 だが今は、正直に言って有りえないほどに心臓が早く鼓動していた。
 ここまで感情が高ぶる事は無かったはずなのだ。


「ハクヤとクレアってやっぱり⋯⋯」
「付き合っているんですね」


 ユリアとレイラの2人が続けて言ってくる。
 確かに側から見れば十分付き合ってるように見えるだろう。
 それほどに兄妹とは思えないほどに密着しているのだ。


「いや、違う! 俺たちは付き合って無いぞ!」


「ま、まさかっ⋯⋯ もう、子供も!?」


 レイラがそう言うとユリアも「そうでしたの?!」と目を見開いた。

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