求夢の平凡な世界

チョーカー

リベンジ地蔵 その④

 「くそっ、電話もメール通じない。人も見かけない。結界みたいなものか……」



 求夢は悪態をつく。

 リベンジ地蔵が攻撃を開始してから、学校まで戻り隠れている。

 しかし、校舎の中で地蔵の破壊活動が進んでいる。

 校舎の窓ガラスという窓ガラスが割られているみたいだ。

 その破壊音で、およその位置が把握できる。

 求夢は、その音から逃げるように2階、3階と校舎を駆け上がる。



 「距離は離した。これで少しだけ休める」



 求夢は呼吸を整え、体を脱力させた。 そのタイミングだ。

 「うわぁ!」と求夢は驚きと恐怖の入り混じった悲鳴を上げる。

 渡り廊下の外、地蔵が浮かんでいた。



 「こいつ、飛べるのか!?」



 石の塊が繰り出す体当たり。

 下手に当たれば一撃で死もあり得る。

 なんとか、それを紙一重で避ける。だが、地蔵の攻撃は止まらない。

 求夢の反応が遅れる。 もう避けられない。



 「……もういい」と求夢は小さな声で呟いた。



 「もう大丈夫だ。ここは僕にとって本拠地ホーム。どこに何があるか熟知している!」



 求夢は飛来してくる地蔵をドッチボールの如くキャッチ。

 しかし、その衝撃は受け止めた適度でなくなるわけもなく、全身がバラバラにされるような痛みを感じる。 まるで車に跳ねられたみたいに求夢の体は吹き飛ばされる。

 だが――――それでも地蔵を離さない。



 「僕の目的地はここ。そして、お前を粉砕してやる!」



 そのまま、求夢は渡り廊下から外に――――3階から転落した。



 「僕は、何度も学校でお前みたいな存在に襲われて、この場所から飛び降りている。下に何があるかも……当然、知っているさ。」



 下は中庭。 そして中庭には小さな小さな池があった。



 「池の底はコンクリート。 落下の衝撃を吸収し切るほどの深さはないけど――――

 最初から僕は、無事で終わらすつもりはさらさらない!」



 鉱物と鉱物が激しく接触するような異音が周囲に響いた。



 ――――3日後――――



 「いやぁ、よくあの水深の池に飛び込んで無事でしたね、先輩」

 「お前には僕が無事に見えるのか?」



 病院のベットの上。お見舞いに来た成美に求夢は言った。



 「それで、結局どうして3階から飛び降りたんですか?」

 「チッ! 地蔵に襲われたんだよ!」



 求夢が言うと成美はゲラゲラと笑った。どうやら冗談だと思ってるらしい。



 「そう言えば先輩。 あの地蔵、無くなったみたいですよ」

 「だろう。きっと僕と一緒に池に落ちてバラバラになったんだろう」



 あの時、バラバラに砕け散ったと信じたい。

 そうでないと――――



 あの地蔵が僕への攻撃をやめた理由。

 僕は何度も3階から飛び降りた事がイジメとしてカウントされたという事になってしまうからだ。

 それだけは、僕のプライドが許さなかった。


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