家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

50話 文化祭1



 いつも以上に騒がしい朝。
 いつも以上に盛り上がる教室。
 今日は俺の通う楽大高校校内文化祭当日だ。

「いよいよだな春鷹!」
「おう。ていうか、もう熱は大丈夫なのか?」
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだ」
「運動が出来る馬鹿」
「酷いっ!!」 

 昨日熱を出していた亜紀斗も今日のためにきっちり治してきたようだ。顔からは元気が伺える。

「おはようございます〜」

 亜紀斗や大星達と他愛のない話をしていると、担任の宇佐美先生が入ってきた。
 いつものように朗らかだ。

「今日は校内文化祭当日です〜。皆さん、トラブルのないよう楽しみましょ〜う」
「「「はーい!」」」
「朝のホームルームが終わったら、開会式があるので体育館に集合で〜す」
「「「は〜い!」」」

 当日だからこその張り切り。みんなこの日が楽しみで準備を頑張っていたのだから、盛り上がるのも当然か。

「春鷹、早く行くぞ」
「おう。今行く」





 ぞろぞろと体育館に集まる楽大高校の全生徒達と教師達。
 今この場に集まっている人達はこう思う人がいるだろう。
 暑い。
 7月となった今の時期はもう夏だ。扇風機もエアコンもない体育館に約480人以上の人が密集すれば、当然暑い。
 俺は早く終わってくんないかなぁと思いながら右手で顔にぬるい風を送った。

「えぇ続いて生徒会長の挨拶です」

 生徒会の一人の女子生徒が司会をしている。
 開会式の第3項目生徒会長挨拶か。
 まぁ学校の顔の里姉はしっかりしてるから安心だな。しかも生徒会長というレッテルも貼られているんだ。変なことはしないさ。
 壇上に登壇する里姉。
 歩く姿モデル並、佇まいは女優並。
 ここだけ観たら、普通の美少女なんだけどなぁ。

「いよいよこの日がやって来ました。どのクラスも2週間ほど前から、放課後遅くまで出し物の準備をしてきたと思います。今日は高校生活の思い出の1ページになるよう、楽しみましょう」

 うん、真面目だ。
 良かった。
 そこで礼をし、里姉は壇上に降壇した。
 この生徒会長挨拶で開会式は終わりである。
 そうか、いよいよか。
 内面少しは楽しみだった春鷹も少しずつテンションが上がってきたようだ。
 教室に戻ると、パンフレットのようなものを配られた。
 そこには、他の学年の出し物の一覧が載っていた。
 映画館やお化け屋敷、マジックショーなんかもあった。
 結構盛りだくさんだな。

「春鷹、最初はどこ行く?」
「うーんそうだな。......大星と柔風は?」
「私達は最初仕事だよ」
「あ、そうだ。俺も仕事だった」
「ちょっとー。何で忘れてんのー?」
「このまま忘れとけば良かった」
「いや駄目にきまってるでしょ」
「えーなんだよ、つまねぇなぁ。みんな仕事かよー」
「すまん亜紀斗」
「まぁいいけどよ」

 せっかくの文化祭で一人にさせてしまうなんて、亜紀斗には申し訳ないことをしてしまったな。後でジュースでも買ってやることにしよう。
 俺の仕事は午前中だけ。

「......ま、気楽にやるか」

 




 

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