家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

39話 妹と本当の過去




「............誰?」
「......やっぱり、覚えてませんでしたか......」

 ?この子は何を言っているのだろうか?

「いいでしょう。では、真実をお伝えします♪」
「本当に......今言うのね?」
「はい♪そのために来ましたから」

 何なんだ、母さんとこの子は何を話しているんだ?
 今から何を話されるのか俺には分からない。でも、とても大事な事なのだと思った。母さんや姉さん達の真剣な表情、殺伐とした空気、そんな事は気にせずニコニコしている少女。

「お兄様♪」
「う、うん?」
「お兄様の名前は何ですか?」

 ん?何だ急に?

「春鷹だけど......」
「名字は?」
「近衛」
「その答えはいなです」
「い、稲?」
「否です」
「え?何が否なの?俺の名字は近衛で合ってるだけど......」
「いいえ。お兄様の本当の名前は............泉 春鷹なんです」
「い、泉?......待って、まったく話が掴めてこない」
「春ちゃん......」

 いや、本当は分かっていたのかもしれない。この少女は俺の事をお兄様と呼んでいて、俺の家族達は不思議と俺に好意を寄せてくれている......。嫌でも察しはつく。でも、俺は認めたくなかったんだと思う。この真実を、この事実を、認めてしまったら......今までの事はこれからの事は、いったいどうなるんだろうか。

「お兄様は............近衛家の長男ではないのです」
「........................ぇ、え?」

 しかし、この子は真実を突きつける。それを受け入れなければいけない、と。

「お、俺が近衛家じゃない?そ、そんな冗談、信じるわけ......」
「これを見てください」

 そう言って、少女は一枚の書類をテーブルの上に置いた。

「これは、戸籍謄本こせきとうほん?」
「はい」

 それは、泉家の戸籍謄本だった。
 見る限り、泉 春鷹という奴と泉 奈々という人が血縁関係をもっていると分かる。他にも知らない名前が二つ。おそらくこれは両親だろう。

「え、えっと、君の名前は?」
いずみ 奈々ななです」
「あは、あはは......」

 つまり、この子は俺の実の妹ってことか。生き別れた妹。俺の本当の家族。
 なんだよこれ......。本当になんなんだよ。
 いくらなんでも急すぎるだろ。今まで暮らしてきた家族が、実は家族じゃないでーす、なんて信じられるわけないだろ。

「春くん......」

 瑠美姉が心配の眼差しを向ける。
 もちろん、瑠奈姉も、里姉も、母さんも、真子も、親父はそっぽ向いてるが表情から心配しているのは分かった。
 全員知ってたのか......。
 まぁ、そうだよな。血縁関係がないからこそあぁやって好き好き言えたわけか。

「いきなりの事でお兄様には申し訳ないとは思っています。でも、私はこの日を10年間も待ち望んでいたのです」
「じゅ、10年......もしかして、10年前に何かあったのか?俺はその時の記憶が無いんだけど......」
「それもそうです。お兄様は一度、幼少期に記憶喪失になっていますから」
「え、記憶喪失!?そうか......だから。でも、幼少期の記憶なんてみんな覚えてないもんだろ」
「お兄様にそんな事はありません。お兄様は優れた記憶力をお持ちで、一度覚えたことは忘れない方でした。なので、お兄様に限って覚えてないなんてことは無いんです」

 もしかして、俺が授業内容を完璧に覚えていたのも、そういうことだからか?





 えっーと、急でごめんなさい。謝らなければいけないことがあります。
 今作の第14話「女子会の告発」で春鷹の実の母親は春鷹を出産した後に病気で亡くなってしまった。という設定にしましたが、そしたら奈々は誰の子なの?どうやって生まれたの?という矛盾が生まれました。僕も今気づきました。本当にすみません。
 第14話「女子会の告発」
「・・・妻の方は春くんを出産した後に病気で亡くなって」を「妻の方は春くんを出産した2年後に病気で亡くなって」に変更させて頂きました。
 ご確認の方よろしくお願いします。

では、続き






「10年前、正確には11年前です」

 奈々は話し始めた。

「お兄様が2歳の時、私が1歳の時です。お母様の持病が悪化し、そのまま25歳という若さで他界しました。そこからお兄様は、お父様に迷惑はかけたくないとまだ幼少期なのに色々な物事を覚え始めました。4歳の頃にはもうかけ算を完璧に覚えていました。それからお兄様は、自分の未来を考え始めました。学力一番の者には、学費を免除する高校や予備校のために幼稚園児から勉強を始めたんです」
「まじか、俺がそんな事を......」
「春ちゃんはそんなに凄かったの?」
「お兄様は圧倒的でした。保育園の先生まで論破してましたから」
「oh......」
「お兄様は本当に一生懸命でした......。あぁ、あの頃のお兄様の顔は本当にかっこよかったです♪あの顔でののしられたら、私本気でMに目覚めてしまいそうです♡」
「え、えっとー、話の続きを......」
「......すみません取り乱しました」

 こほんっと一度間を開け、再び話し始めた。

「それでも......お兄様が5歳、私が4歳のときでした。今まで、一人で慣れない子育てを頑張っていたお父様も遂に力尽き、過労で他界してしまいました」
「叔父や叔母の力は借りなかったのか?」
「お父様なりに親としての責任があったんでしょう。お爺様とお婆様の力は借りなかったんです。その結果、支えきれず、亡くなってしまった......。そのショックで、お兄様は記憶を無くしてしまったんです」
「なるほど......」

 作り話にしては出来すぎてる、やっぱり......本当なのか。

「そして、お兄様はお父様の妹である近衛家に預けられ、私は祖父の家に行くことになりました」
「どうして、離れ離れになったんだ?」

 近衛家に預けなくても、俺も一緒に祖父の方に預けなかったのは何でだ?

「あぁ、あれも言わないとですね♪お兄様、[泉]っていう名字に聞き覚えはありませんか?」
「え?泉......?泉......泉......」

 どっかで聞きたことあるような無いような。
 どこで聞いたんだ?テレビか?学校か?
 うーん。もう少しでわかりそうだ気が......。






 さて、泉とは誰の名字でしょうか、皆さん考えてみて下さい!前の話を読み返せばわかるかも知れません......(´∀`)


ではまた。



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