家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

12話 春鷹の成績


「はいっ!お弁当」
「う、うん。ありがとう」
「じゃ、また後でね。鷹君」

 そのままあーちゃんは教室を後にした。
 1年3組が静寂に包まれる。

「え、えっと......」

 只々俺はみんなからの視線を浴びる。
 しびれを切らしたのか、亜紀斗が口を開いた。

「な、なぁ春鷹......」
「な、何?」

 亜紀斗は恐る恐る俺に顔を向ける。
 下を向いているため表情は見ることが出来ない。

「さっきの人って..................」

ーごくりっ

「お前の恋人か!?」

「へ?」

 俺に向けられた顔は満面の笑み。太陽のように眩しい笑顔。目はキラキラと輝かせている。

「さ、さっきの人は何て言うか......恋人じゃないと言うか、そうじゃないと言うか」
「おいおい隠すなよぉ。俺とお前の仲じゃないかぁ〜」
「このノリ結構きついな......」

 そうだ......思い出した。
 亜紀斗は............どうしようもなく恋話が好きなやつだった。今思い出した。
 俺の恋事情がどうしても知りたいやつなのだ。何故なのかは誰も知らない。

「そ、その......そう!俺の従姉妹いとこなんだ!」
「従姉妹か〜。へぇ〜」

 とりあえず従姉妹ということでこの場はしのぐしかない。

「いいな〜。美人の従姉妹とかいいな〜」
「あ、あはは......」
「近衛ってハーレム過ぎない?」
「どんなハーレムだ!」
「だって......姉が三人いて、妹もいて、美人の従姉妹。最高じゃん!」
「はいはい......」
「近衛君......女の子に囲まれて幸せだね......」
「え?大星。なんて言った?」

 かなり小さい声だったので聞き取れなかった。

「い、いや何でもない!何でもないよ」
「そ、そうか」

 なんか気になるなぁ......。
 まぁいいや。

「飯食べようぜ」
「そうだな」

 大星とは少し気まずい空気で昼食を食べた。









ー放課後

 今日は文化祭の事については話し合わず、すぐに下校となる。
 訳は知らん!

「じゃあね〜」
「おう。また明日」

 柔風、大星ペアにさよならを告げ、俺も亜紀斗と一緒に帰ろうと席を立つ。

「亜紀斗。早く帰ろぜ」
「な、なぁ春鷹......」
「そんな変な顔してどうした?」

 亜紀斗は下を向いている。表情は見えない。なんか深刻な告発でもするのだろうか......?

「俺たち......大事な事忘れてないか?」

 二人の間に緊張が走る。

ーごくり

「期末テスト2週間前じゃねぇーかぁ!!」

「............」


「だから何?」
「は?......だから何?じゃねぇーよ!」

 別にテストなんて気にした事ない。
 自慢じゃないが勉強は出来る。俺には余裕だ。

「それは聞き捨てならないわね」

 横から聞こえてくる女声。
 夜空のような黒髪にすっきりとしたスタイル。
 成績学年2位。
 伊藤 かなでさんがいた。

「ど、どうしたの伊藤さん?」
「あなた、この学校の期末テストを舐めてるの?」
「うん」
「うん!?」
「春鷹。お前って頭良かったけ?」
「え?いや、何でお前知らないんだよ」

 数十年の付き合いですよね?

「い、いや、何て言うか。テスト返しの日はさ、自分の点数に絶望してお前の点数なんて気にしなかったんだよ」
「ったく。酷いやつだな」
「悪い悪い」
「で!近衛君の順位はどのくらいなのかしら?」
「教えなきゃいけないのか?」
「ま、別にいいけど。私は学年2位だから!貴方が勝つには1位以外にありえないわ!おっほほほ」
「どこぞのお嬢様キャラかお前は」
「さぁ言ってみなさい」
「ほらほら言えよ〜春鷹〜」

 なんなんだこいつらは......。

 ふぅ〜。

俺はゆっくりと口を開く。






「1位」

「「......へぇ!?」

 二人は驚愕の目を向ける。

「ごめん春鷹。今なんて言った?」
「だから、1位だって。学年1位だよ」

 伊藤さんの手はぶるぶると震えている。

「お、おーほっほほ!冗談が面白いわね。近衛君は」
(う、嘘よ。このアホだらが私の上な訳ない!ありえないわ!)

「別に信じられないのは百の承知だよ。どうしても気になるんなら、俺の姉にでも聞いてくれ」

「なぁ、俺に............勉強を教えてくれないか?」
「ああ。別に良いけど」
「か、神様ぁあぁぁぁ!」
「痛いきもい!くっつくな!」
「こ、近衛君......本当に学年1位なの?」
「そんなに信じられないなら、後で中間テストの結果表でも見せてやるよ」
「え、えぇ」
「それじゃあ、じゃあな!」

 俺は伊藤さんを後にし、亜紀斗を抱えながら帰った。



「家族に愛されすぎて困ってます!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

  • 西東 北南(さいとう ぼくなん)

    次回も楽しみにしてます!

    2
コメントを書く