家族に愛されすぎて困ってます!
1話 ただいまの前に
「はぁー。疲れたー」
 ぎこちない溜息をつきながら、自分の家への帰路を歩く。
「はぁー............ふぅー............はぁー............」
 何度も何度も息を吐く。
 別に走っているわけでもない。何か熱いものを冷まして食べようとしているわけでもない。
 ただ......家に帰るとより疲れが増すのだ。
 只でさえ学校が疲れるのに、これ以上俺をボロボロにしないでくれよ......。
 こうして話しているうちに、あっという間に家に着いた。
 普通なら元気よく「ただいま!」というのだが。何というか......「ただいま」を言う隙もくれないんだよな......。
 玄関のドアに手を掛ける。鍵は開いている。後は開けるのみ。
「はぁー。何で俺、家に入るのにこんなに躊躇しなきゃいけないんだ......」
 何で俺がこんなにも困っているのか。その理由は......まぁこのドアを開ければおそらく分かるさ。
「よし......!」
 俺は、思い切りドアを開けた。
そこには............
「みんなー。ただい......」
「お帰りなさい!春ちゃん!ご飯にする?お風呂にする?それとも......わ・た・し?」
「母さん......たまには普通にしてくれよ......」
「ちょっとー。春くん!遅いよ〜。お姉ちゃん凄く待ったんだよ?」
「春。私も凄く待った。けど、大丈夫。春の妄想をして、たっぷり癒されたから」
「瑠美姉、遅れてごめん。それと瑠奈姉、後で話がある」
「うわぁ〜ん。良かった〜。たーくんが事故に巻き込まれたかと思っちゃったよ〜」
「ちょっと里姉、泣かないでよ。はい、ハンカチ」
「春お兄ちゃん!お帰りなさい!ねぇねぇ!早く絵本読んでー」
「分かった分かった。寝る前に読んでやるよ」
 そう。俺、近衛 春鷹は、家族に愛されすぎて困ってます。
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