貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

大進行21.5

「アルト様、貴方の意思は受け取りました。今より精霊王を一時的に露顕します」

イヴナはキウンに手をかざし詠唱をはじめる。

「我 生命神レナムの眷属なり 主なる生命神の力を拝借し 汝キウンに一時の生命を与える」

温かみのある太陽のような光を発した一筋の剣は、横たわっているキウンの心臓に突き刺さる。
肉を抉ることなく吸い込まれるかのように静かに突き刺さったその剣は、澄み切ったブルーの魔法陣をキウンの胸に展開し、そして消えた。

血に染ったキウンは、ゆっくりと起き上がる。

「主よ……すまない」

起き上がったキウンがまず一言目にアルトに謝罪をした。

「何故謝る」
「主に、迷惑をかけた。戦闘を止めてきたのだろう? 」

そういう事かと、アルトは納得する。
キウンは、自らの主の手を止めさせてしまった事に負い目を感じているのかと。

「そんな事か、気にするな。それよりも、奴はどうした? 」
「あれは、責任をもって我が止めた」

キウンの「あれ」という言い方に違和感を覚えた。
名前で呼ばずに、まるで物をさすかのように「あれ」と言ったのだ。

だが、少し暗い顔をしたキウンに無理には聞かない。
ちょうど別の話題があったのでそちらに話を逸らす。

「キウンは、どうしたい?」
「我は......」

キウンはアルトの目をじっと見つめる。一瞬もずらすこと無くただじっと。

数秒だった頃だろう。何故か長い時にアルトは感じられた。
キウンは口を開く。

「我は、主と共に歩もうぞ。我が仕えると決めた主だ」

イヴナは優しく微笑む。

「ようやくですね、精霊王」
「そうだな。イヴナよ」

キウンは、何度も代替わりをしているのだろう。その度にイヴナと合っていたのだ。

亜神にとって最上級とも言える選択肢ではないだろうか。
神になり、長い時を過ごすよりも、定めた主について行く。


「では、神器の儀を始めますね」

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