現代地獄

アーカム

言葉の真相


「……。」

あれから何日かたった。
僕があの声を聞いてから三日、四日は経つ。
あれ以降、あの声は聞こえない。
あれは、なんだったのか?
声の主は誰なのか?
本当に地獄などあるのか?
あるとしたらあの声は死神の様なものなのか?

「……。」

考えても分かるわけがない。
それに死神って確か海外とかだった気がするし、地獄なら閻魔とかなのだろうか?
それとも日本にも死神みたいなのがいるのだろうか?

「……。」

馬鹿げてる。
そんな空想の様なものに怯えるなんてどうかしてる。
あの声だってもしかすると、幻聴の可能性だってある。
あまり思い出したくはないがあの時の僕は誰から見ても取り乱していたし、こんな事ばかりおきていたから彼の言葉がまるで聴こえてたかのように思ってしまったのかもしれない。

「……。」

誰かに相談したい。
でもダメだ。信じてもらえる訳がない。
クラスの友達や親に相談しようものならショックで頭がおかしくなったと思われる。

彼の言葉を聞いたAに相談したとしても多分、考えすぎ、疲れてるんだよ、とか言われそうだ。

でもこのままでは、なんとなく前へ進めない気がする。

「……。」

僕は、徐ろにベッドから起き上がり、何か方法が無いかと、机のパソコンを開く。
調べる事は決まっている。
心霊現象やUMAなど実際いるのかいないのかわからない生物や普通では起こりえない事などを議論する場所。
いわゆるオカルト掲示板だ。

僕は、インターネットの検索画面を開き“オカルト掲示板”と打ち込んだ。

「結構出てくるな…。」

検索して見ると思った以上に検索結果が出てきた。
ちょっとだけ鬱な気持ちになったが気をとりなおし、上から1つずつ見ていく事にした。

「オカルト掲示板クトゥルフ」
「心霊現象 最恐掲示板」
「幽霊屋敷 行ってみた」
「ゴーストライター まとめ」

「ゴーストライターは、関係ないだろ。」

検索しているとたまに自分の調べていることと関係ないものが出てくる事もある。
僕は、少しこういうのが好きだったりする。

そしていくつか調べていく中で1つ気になるものを見つけた。

「心霊心理学。どういう意味だろう?」

僕は、そのサイトが気になり、開いて確認する事にした。

「心霊現象を人間の感情や心理などから起きていると考える人達のまとめ掲示板か。」

どうやらこのサイトは、幽霊や心霊現象は人間の恐怖の感情や思い込みによって見えたり、起きている様に感じているのではないか?という考えを持った人達が議論をするサイトらしい。

このサイトでは、以前行ったあらゆる議論をまとめ、管理者が独自にジャンル分けして過去のものも閲覧出来るようになっている。

「よし。」

僕は、自分に気合を入れ、まずは過去のまとめから確認していく事にした。
そこで気になったものをいくつか見ていくに連れて議論をしている1人の書き込みがとても気になった。

地獄についてである。
この書き込みの主は、どうやら地獄を人間の欲として例えている様だった。

欲と言えば、外国には七つの大罪という考えがある。
産まれた時点で人間が持つ七大欲求で、確か怠惰、色欲、暴食、嫉妬、憤怒、強欲、傲慢の七つだった筈だ。
最近は、アニメとかでよく使われているので覚えている。

この書き込み主は、議論の中で人間の欲は無数にあると言っている。
その分、地獄も沢山あると書いてある。

僕は、この書き込み主のコメントを見ていくうちにこの書き込み主が他にも何か書いていないか興味を持ち、サイト中を見て回った。

僕は、それからひたすらに探してついに、
僕が探していた彼の言葉についてのヒントになるであろう書き込みを見つけた。

“人は小さい時、よく親とか絵本とかで「悪いことをする子は地獄に落ちるぞって言われて育った人が多いと思う。”

それは、よく子供に対して使う教育の一つだ。
大きくなるに連れてそれが子供騙しだと言うのは誰でも分かる。
だが僕が気になったのは、この次だ。

“人は産まれながらに色々な地獄を見る。体験する。例えば、いじめ。やられてる本人は、なんとも言えない感情になるだろう。
痛くて、苦しくて、悔しくて、憎くて、孤独で、色々な感情が入り混じる。そして絶望する。最後には、死にたくなる人もいる。”

孤独…絶望…最後。
全て彼が言っていた言葉だ。
やはり彼は誰かにいじめられていたのか?
僕は凄く胸が苦しく、息が詰まりそうになる。
一旦深呼吸をして続きを見る。

“私は思うんです。多分いじめられている人は、いじめてくる人が悪魔、もしくは鬼に見えているのではないかと。そしたらこの世は、拷問で溢れてる。この世は地獄。現代社会は、地獄なのだと。

地獄と言う言葉。
彼の言葉にもあった。
多分あれは、そう言う事だったのか。

「最初は地獄の一丁目。」

いじめの始まり。

「つぎは孤独の二丁目。」

誰からも相手にされない。

「それから絶望三丁目。」

終わらないいじめへの絶望。

「そして最後は四丁目。」

そして…死

僕は、彼を知っているつもりだった。
わかってあげているつもりだった。
友達でいるつもりだった。

全てつもりだった。

僕は、孤独になった気がした。
僕はこれ以上、彼の事を友達だと思ってはいけない様なそんな気がした。


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