現代地獄

アーカム

孤独と声


15時46分

Aと連絡を取ってから3時間ほど経つ。
あれから何回かメッセージのやり取りをした。

どうやらAの話によると彼は話の途中などに急に黙り空を見上げては何かをつぶやいていたらしい。
そこで言っていた言葉がどうやら僕の聞いた言葉と似ている。
だが僕の聞いた言葉とAが聞いた言葉は少し違っていた。

「つぎは孤独の二丁目。」

僕聞いた言葉はこれだ。
でもAが聞いたのは少し違うという。

「今は孤独の二丁目。」

僕が聞いたのは“つぎ”だったのだがAが聞いたのは“今”と言っていたらしい。

聞き間違いじゃないのかと思い聞いて見たが間違いないらしい。
それに僕が聞いた一丁目、三丁目、それと四丁目は聞いた事がないらしい。

Aは、この事について聞いてきたが僕が知るはずがない。
なので分からないと送った後は、それなりのやり取りをしてAとのやり取りを終えた。

それからは、ネットでずっと彼が言っていた言葉について調べていて今に至る。
今のところ収穫はゼロ。
これといった情報がない。
僕の聞いたキーワードで調べても地獄の事やアニメや小説などで使われているような事ばかりで関連性が無い。

「はぁ…ダメか。」

僕は呟きながら軽く伸びをした。
色々な事を調べている内にさっきまであんなにあった頭痛が嘘の様に消えていた。
だがその代わりなのか少し耳鳴りがする。

「調子悪いな。少し寝ようかな。」

そう考えているとお腹がグゥと音を立てて鳴った。
そういえばさっきお腹空いていたし頭痛がするから下へ行こうとしていた事を思い出した。
僕は今度こそと思いゆっくりと扉の間に向かう。
ゆっくりと鍵に指をかけ鍵を開ける。
そして左手をドアノブにかけゆっくりと下に下ろした。

「ふうぅ…大丈夫。何も無い。」

僕は扉の前で大きく息を吐きつぶやいた。

扉をゆっくりと前に引く。
僕は何故か目をつぶっている。
僕は扉を僕が通れるぐらいまで開けた。
ゆっくりと目を開ける。

「ふうぅ...」

目の前には見慣れた壁と廊下が映っていた。
僕は安堵のせいかまた大きく息を吐いていた。
僕はゆっくりと廊下に出て階段を降りる。
階段を降りてすぐ右をみるとリビングに繋がる廊下と扉が見える。
僕はリビングに行きテーブルに置いてあった置き手紙を見た。

【冷凍庫に沢山入っているので温めて食べてね。  母より  】

母からの置き手紙だ。

僕の両親は共働きでほとんど家に帰って来ない。
僕がこんな時でも事件があった最初の日だけ帰ってきて次の日からはもう仕事に行った。
いつもの事だから慣れているけれど僕がこんな時でも仕事が優先なのだから少し寂しさを覚える。
でも彼は元々父親が居なかったのだから僕は、恵まれている方なのだと思う。

僕はいつものように冷凍庫から1つドリアを取り出しレンジに入れた。

待ってる間にテレビでも見ようとリモコンで電源を入れた。

いくつかチャンネルを回していると気になるニュースがやっていた。
どうやら僕の住んでいる町で何か事件があったらしい。
少し驚いてしばらく見ていると僕はさらに驚いた。
そして嫌な予感がした。

どうやら事件は僕の家の近くだ。
そして嫌な予感は的中してしまった。

どうやら彼が住んでいたアパートで自殺があったらしい。
死んだのは、彼のお母さん。
あのお母さんだ。

吐き気が襲ってくる。
頭痛がする。
耳鳴りが強くなる。
寒気がする。
怖くなる。

僕はその場でうずくまった。
怖い。
怖い。
怖い。
もう嫌だ。
怖い。
死にたい。
怖い。
死にたい。


何かが囁く。
「今は孤独の二丁目。」
「次は絶望が待っている。」

僕の耳元ではっきりと聞こえた。
僕はハッとした。
確かにはっきりと聞こえたそれは、彼が言っていた言葉。
違う。
Aが言っていた言葉だ

「今は孤独の二丁目。」

僕は怖くなり急いでリビングから部屋に逃げるようにしてかけて行った。

逃げる後ろからレンジのチンという音が虚しく鳴った。


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