喚んで、育てて、冒険しよう。

島地 雷夢

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『送信者:Summoner&Tamer Online運営  件名:途中経過ランキング(第七回) 』
『※このメッセージはイベントに参加しているプレイヤーの皆様に一斉送信しております。
 ソロイベント、パーティーイベントの上位5位までの途中経過ランキングをお伝えします。

 ソロイベント途中経過ランキング(第七回) 1位 カンナギ   Point 2992 2位 リース    Point 2991 3位 琥太郎    Point 2989 4位 KOTOHA Point 2876 5位 マーガレット Point 2869
 パーティーイベント途中経過ランキング(第六回) 1位 エール(PL)     Point 1516 2位 オウカ(PL)     Point 1488 3位 機甲鎧魔法騎士団アーマードマジカルナイツ    Point 1472 4位 ギーグ(PL)     Point 1354  5位 召喚戦隊サモレンジャー Point 1341
 ※パーティーネームを設定していないパーティーにつきましてはPL様のプレイヤーネームのみを表示しています。

 このメッセージ受信以降、ランキング5位以内のプレイヤーの皆様の獲得ポイントの横に順位が表示されるようになります。 皆様、最後までお楽しみ下さい。            』
 最終クエスト【鬼神の願いと神子の望み】とクエスト【秘宝の異変】をクリアした。 クリアしてから直ぐ、目の前が真っ白になった。そして目の前にモニターが現れ、紙芝居でカウロとフラトの生涯、そして襲撃での真実が流れ始めた。カウロの言っていた通り、フラトの魔法に頼ってスケアリーアングールの襲撃を迎え撃っていた事が全プレイヤーに知れ渡り、しかしそれでもフラトにしか出来なかったと言う事も分かる。 怪我をした者は誰も彼も重傷で、フラトでないと完治出来ないものだった。補助魔法にしても、フラトの魔法は他の者よりも向上し、その御蔭で九死に一生を得ている場合が多かった。 それに、セイリー族も全員がフラトに強要していたのでない事も分かった。自分も死にたくなく、仲間を守りたい。そのような姿勢があってどうしてもフラトの魔法に頼らなくてはならなかった者、死んで逝った仲間の敵を討つ事で頭が一杯で、ついキツイ口調で頼んでしまった者、様々だ。皆が必死で戦い、心に余裕がなくなっていた。 カウロはその光景を見て、後にフラトの死んでしまった要因と捉え、セイリー族に憎悪するようになった。 生き残ったセイリー族も、フラトに頼り切り、結果として死なせてしまった事を悔やみ嘆いた。今後新たな神子が現れてもその人に頼り切らず、協力し合って乗り越えていく事を定めたそうで、そうしたのが現在の大司祭――族長だそうだ。 そして、そんなフラトの魂は【妖精の十晶石】と一体化し、集落でセイリー族を見守っていた。 もし、カウロがその事を知っていれば今回のような事は起きなかったかもしれない。しかし、襲撃が終わってからのカウロは本当に放心状態で、無意識にフラトとの思い出の地を去って行ったので気付かずに終わった。十晶石にパスを引いた際も傀儡を利用し、引き終わると直ぐに土に戻った為、フラトの魂がそこにあるとは分からず仕舞いだった。 紙芝居が終わり、視界が普通に戻り、今度こそ一連のクエストは本当の意味で幕を閉じた。 最終クエストを終えると、ずっと眠ったままだったセイリー族が眼を覚まし、皆がプレイヤーに礼を述べて集落へと戻って行った。 無事に【秘宝の異変】をクエスト達成したので【妖精の十晶石】に魔力が戻り、暴走状態の時よりも輝きは弱まり、正常になっている。ただ、それでも全域に魔力を循環させるまで時間が掛かると言う事なので【縮小化】の呪いは解けない。範囲も狭まっておらず、クルルの森に降りても小さいままだ。 まぁ、イベントが終了するまで【縮小化】の呪いを掛けさせる為の運営の仕様なんだろう、と思う。 最終クエストが終了しても、イベントが終了するまではクエストは受けられるようで少しでもポイントを獲得しようと最後の追い込みをかけるプレイヤーがいっぱいいる。 俺達はと言うと、森の中で休んでいる。何時の間にか2位になっていたので、今からポイントを稼いでも下手すると維持してしまうので、3位に下がってからモンスターでも狩って行こうと画策している。 この2位にまで浮上したのは、緊急クエストに全て参加した事。そして、カウロの願いとフラトの望みの一部を叶えた事が影響している。これら全ては偶然なした事だ。 カウロの願いの一部は、恐らくフラトに出逢えた事を指している筈だ。スケアリーアングール=フラトでは本当のフラトに逢ったと言う事にはならないし。ただ、フラトの望みの一部を叶えたと言うのがよく分からない。結局カウロの凶行は防げたが禁術を発動させてしまい、死なせてしまった。フラトはカウロに生きてて欲しいと思っていたので、これだと望みは叶えられていないように思える。 もしかしたらフラトもカウロに逢いたかったのかもしれない。だからこちらも望みの一部が……と。ただ、こればかりは解釈の違いか。 とまぁ、いろいろ考えるのは置いておこう。今は比較的時間に余裕があるのでこのイベント中に手に入れたレアアイテムの説明文でも読もう。読もう読もうと思って今の今まで放置しっ放しだったからな。いい機会だろう。 俺はメニューを開いてアイテム欄の該当するアイテムをタップする。
『ビーワスの卵:ビーワスの卵。孵化させる事によってパートナーモンスターとなる。 ※譲渡不可能』
『クイーンハビニーの守護結晶×1:生命力が0になる攻撃を受けた際、守護結晶が身代わりとなり一度だけ1残る。 ※譲渡不可能。PvPでは消費されません』
『幻人の塊:幻人の核が欠けた物質。加工する事によって召喚具となる。 ※譲渡不可能』
「……おぅ」 結構、凄くないかこれら? まず【ビーワスの卵】だが、これはそのままパートナーモンスターの卵と言う事になる。つまり、これを孵化させればパートナーが二匹になる。けど、確か連れて歩けるパートナーは一匹だけと説明書にも明記されていたので、孵化させる場合は今連れているパートナー――俺の場合はリトシーだが――がどうなるか分からない。 二つ目【クイーンハビニーの守護結晶】は不意の一撃を受けても一度だけ踏ん張れる消費型のアイテム。説明文から自動でしようされるもののようだ。これがあるとないとでは戦闘において生き延びる確率が変わってくる。ただ、一個しか持っていないのでなるべくは消費しないように戦闘を心がけるべきだな。 で、【幻人の塊】。これは加工する事によって召喚具になるらしい。しかし、素材アイテムではないので【初級錬金】など、プレイヤー自身で加工する事が出来ない。なので、加工が出来る特定のNPCを見付けない限り、召喚具として扱う事は不可能。 これらを入手しただけでもイベントに参加してよかったと思う。普通にプレイしてたらこれらは手に入らないか、もっと先に進まないと入手出来ないかもしれないからな。 ただ、これで満足して気を緩めたりはしない。このイベントに参加した目的は三位入賞のアイテムを手に入れる事だ。だから今は三位に降格するようにポイント表示に目を光らせないとな。
『Ranking 3 Point 1488』
「お」 三位に落ちたので、このまま後は順位をキープしていくだけだ。 俺達は適当にモンスターを狩り、三位から変動しないように注意する。
『イベント終了まで残り00:05:00』
 ゲーム内時間で午後一時五十五分になると、視界の左下に時間が表示される。もうイベントも残す所あと僅かとなった。長かったが、現実では三時間しか経ってないんだよな。不思議だ。これが技術の進歩ってやつか。 この表示で焦り出すプレイヤーもいるだろうが、俺達は焦らずじっくりと順位をキープする。
『Ranking 3 Point 1521』
『イベント終了まで残り00:02:34』
 森の中を歩いていれば俺達と同じようにモンスターを狩っているプレイヤーにも出くわすので、モンスターだけと遭遇する事は意外と少ない。
『Ranking 3 Point 1523』
『イベント終了まで残り00:00:18』
 残りが二十秒を切った段階で俺達は順位が下がっても直ぐにポイントを入れられるようにセレリルを相手している。遭遇したのは本当に偶然だが、こいつをスキルアーツで倒せばそれなりにポイントが入ってくる。なので、生命力をギリギリまで削っている。
『Ranking 4 Point 1523』
『イベント終了まで残り00:00:06』
 順位が下がった瞬間、俺は【蹴流星】を発動させてセレリルを屠る。
『セレリルを一体倒した。 ポイントを4手に入れた。 スキルアーツボーナスにより、更に3手に入れた。』
『Ranking 3 Point 1530』
『イベント終了まで残り00:00:01』
 これで無事に三位となり、目的を果たせる。俺達はそう思って安堵の息を吐いたが、神の気まぐれが起こった。







『Ranking 2 Point 1530』
『イベント終了まで残り00:00:00』







『以上を持ちましてパーティーイベント【クルルの森の異変】を終了いたします。 皆様、お疲れ様でした。                』


「「「え?」」」 文字通り、眼が点となった俺達パーティーは光に包まれてシンセの街の広場に戻ってきた。


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