甘え上手な彼女

Joker0808

♯33




 高志は文化祭の準備で使う道具の買い出しに向かっていた。
 優一にもたされた、買い物メモを持ち高志は近くのホームセンターに向かっていた。

「えっと……ガムテープにマジックペン……後は……」

 メモを確かめながら、高志はホームセンターに向かっていた。
 そんな道すがら、信号待ちをしていると、前方に見知った人物が居る事に気がついた。

「ん、あれって……」

 その正体は、高志の後輩であり、優一に思いを寄せる、ちょっと変わった女の子、秋村芹那だった。

「秋村さんも買い物?」

「あ、八重先輩! こんにちは……優一先輩は一緒じゃないんですか?」

「残念ながら、今日は俺一人だよ。秋村さんも文化祭の買い出し?」

「はい! 絶対に勝ちたいので!」

 優一も燃えていたが、芹那もかなりのやる気だった。
 目には炎を灯し、優一に負けたくないという気持ちが高志にも伝わってくるようだった。
 二人は目的地が一緒と言うことで、二人揃ってホームセンターに向かっていた。

「そう言えば、秋村さんのクラスは何をやるの?」

「フッフッフッフ……それはもちろん、メイド喫茶です!」

「もちろんって……そんな文化祭ならメイド喫茶! 見たいなノリで言われても……」

「でも、一番集客も望めそうですし、何より注目を集められます!」

「まぁ、確かに一理有るか…」

「先輩達は何をするんですか?」

「あぁ、俺たちは……」

 ここで高志は言葉を詰まらせた。
 テンションを売る店と言って、わかってもらえるだろうか?
 高志は自分で言葉を考えていても、どう言う意味か説明が難しい事を感じていた。

「えっと……願いを叶える店……って言ったらいいのかな?」

「なんですかその素敵な店! 行きます! 私絶対に行きます!!」

「あぁ、そうは言っても、公序良俗に反する事とか、違法行為はダメだよ? それに出来る事は、俺たちが出来る範囲でだし……」

「じゃ、じゃあ……優一先輩に、二人っきりで虐めて貰うことは!?」

「ごめん、多分あいつが全力で拒否すると思う」

「やっぱりですか……それなら、勝つしか無いですね!」

「勝ってもあいつはしないと思うけど……」

 高志は肩を落としながら、苦笑いで芹那に答える。
 そうこうしている間に、二人はホームセンターに到着し、目的の物を購入し学校に戻って行く。

「ねぇ、聞いても良いかな?」

「なんですか?」

「秋村さんって、なんでそこまで優一にこだわるの?」

「こだわる? う~ん……こだわるって言うか好きだから、好きになって欲しいって思うのは、当然じゃないですか?」

「そうなのか……いや、秋村ならその……なんだ……性癖的な事を直せば、モテるんじゃないか?」

「それは私にM属性を捨てろと!?」

「いや、そうじゃなくて……優一意外にもいい人はいるんじゃ無いかと言いたくて」

「そうかもですね……でも、私は……優一さんを好きになっちゃっいましたから」

 芹那は笑顔で高志に答える。
 そんな芹那の言葉に、高志は更に芹那に尋ねる。

「じゃあ、好きって……どんな気持ちなのかな?」

「え? 確か先輩って彼女居ますよね?」

「うん……でも、正直わからないんだ……俺は彼女が好きなのかどうか……」

「? どう言うことですか? 好きだから付き合っているんじゃぁ……」

「好きだよ……でも、この感情が友達としての好きなのか、異性としての好きなのか……和からないんだ」

 高志の言葉に、芹那は考える。
 なんと説明したら良いのか、どう言えばわかってもらえるか、芹那は頭を悩ませる。

「う~ん……えっとですね……人を好きになると、その人の事をずっと考えて夜も眠れなくなって……」

「毎晩ぐっすりだな……」

「じゃ、じゃあ! 彼女さんが他の男の子と話してたら、そわそわしたり、気になったりしませんか?」

「まぁ、人付き合いは人それぞれだしな……」

「う~ん……じゃあ、話しが出来なくて寂しいとか……」

 そう言われた瞬間、高志は最近の事を思い出した。
 紗弥と突然話しをしなくなり、寂しさを感じていた。

「それは……あるかもな…」

「そ、それですよ!!」

「うわ! びっくりしたぁ……急にどうしたの?」

「それですよ!! 好きっていう気持ち!」

「え?」

「いつも一緒にいて、話しをしていたのに、突然それがなくなって、先輩さみしいんですね!」

「ま、まぁ…」

「心配しなくても、先輩は彼女さんにちゃんと恋してますよ! だから、わからないなんて言わないで、自分の気持ちに正直になってください!」

「自分の気持ちに……正直にか……」

 芹那にそう言われ、高志は考える。
 紗弥と一緒居るのは楽しい、それになんだか安心感もある。
 それが急に無くなり、なんだか毎日がつまらなく感じた。
 数ヶ月前は、これが当たり前だったのに、いつしか高志は紗弥と一緒じゃ無ければ、毎日がつまらなく感じるようになっていた。

「そうか……俺は……」

「わかりましたか?」

「あぁ……なんとなく……」

 高志は芹那に微笑みながらそう言う。
 自分の気持ちがわかり、なんだか安心した。
 ほどなくして、高志と芹那は学校に戻ってきた。
 高志はなんだか、無性に紗弥と会いたくなった。
 会って、少しでも話しをしなくてはいけない気がした。

「優一」

「お、帰ってきたか、待ってたぜ~」

 高志は芹那と校門で別れ、自分の教室に戻ってきた。
 頼まれた物を優一に確認してもらい、高志は代金を受け取った。

「なぁ、紗弥ってどこにいる?」

「ん、宮岡なら、さっき屋上の方に……」

「そうか……悪いけど、俺は少し休憩してくる」

「あぁ、いいぞ。俺はお前が買い出しに行ってる間に、休ませてもらったからな」

「そうか、あんまり無理すんなよ」

「へいへ~い」

 高志は、教室を後にし屋上に向かう。
 学校は文化祭の準備で、何処もお祭り状態だった。
 放課後にもかかわらず、校舎には多くの生徒が残り、高志はそんな生徒の中を早足で歩いて行く。
 そして、高志は屋上のドアの前に到着した。
 高志は一呼吸ついて、ドアを開けた。

「………」

 そして、高志は見てしまった。
 紗弥が見知らぬ男子生徒とキスをしている瞬間を……。 

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