甘え上手な彼女

Joker0808

♯15

「あ、あった」

 CDショップに到着した紗弥は、お目当てのCDを探し始めた。
 高志は紗弥の後ろについて、適当にCDを見ていた。

「あった?」

「うん、最近出たやつだから、すぐに見つかったよ」

 お目当てのCDを発見した紗弥は、CDを手に取り高志に見せてくる。
 来る途中で聞いた、紗弥が好きなバンドのニューシングルらしい。

「高志はCD買わないの?」

「俺はダウンロードして聞くから、あんまりCDは買わないな、そっちの方が安上がりだったりするし」

「最近の人だね〜、私はやっぱりコレクションしたいって言う意味もあるから、こうやって買いに来るんだよね」

 お目当てのCDを見つけた紗弥は、早速CDをレジに持って行った。
 高志は紗弥がお会計をしている間に、適当にCDを眺めていた。
 すると、突然誰かに肩を叩かれた。
 高志は紗弥の会計が終わったのかと思い、後ろを振り向くと、そこには紗弥では無い別の人物がいた。

「よ! 何やってんだ?」

「なんだ優一か」

「なんだとはなんだよ!」

 そこに居たのは、私服姿の優一だった。
 恐らくCDを買いに来たのだろう、片手にはCDが数枚握られていた。

「高志がこんなところに居るなんて珍しいな、何してんだ?」

「いや、ちょっと……」

 なんとなくデートと言うのが恥ずかしく、高志は言葉を詰まらせる。
 そんな高志を見て、優一はニヤニヤしながら、高志に言う。

「あぁ、そう言うことか……わかってるわかってる、だからこの店なんだよな?」

「は?」

「ここは、DVDやブルーレイも置いてあるうえに、年確も無い……しかも店員は男の店員ばっかりだ」

「それがなんだよ?」

「隠すなよ、同じ男だ気持ちはわかる。かく言う俺もそれが目的だ」

「だから、なんなんだよ!」

 一体何の事を言っているのか、高志には検討もつかない。
 不思議そうな顔の高志に、優一はやれやれと仕方なさそうに耳打ちする。

「AV買いに来たんだろ?」

「ちげーよ!」

 思わず大声を上げてしまった高志。
 優一は驚き、咄嗟に後ろに半歩下がった。

「隠さなくても良いっての、お前は猫耳とか犬耳とか好きだもんな? そう言うのを探しに来たんだろ?」

「た、確かに好きだけど……AV買うほどじゃ無いわ!」

「あぁ、ネットでダウンロード派か……まぁ、その方が管理しやすいしな」

「だから、そう言う事じゃ無くてだな……」

「どういうこと?」

 高志が優一と騒いでいると、会計を終えた紗弥が高志のもとに帰ってきた。
 買ったばかりのCDの入ったビニール袋を持ち、きょとんとしながら高志に尋ねる。

「さ、紗弥……いつからそこに?」

「今さっきだよ? あ、那須君」

「え?! 宮岡?! えっと、もしかして……」

「うん、デート中」

 紗弥の姿を見て驚いた優一が、そのまま紗弥に尋ねる。
 すると、紗弥は高志の腕を掴んで、優一にそう言う。
 優一は、この世の終わりみたいな顔をしながら、その場で固まってしまった。

「お、おい……大丈夫か?」

「高志がデート……高志が……あの高志が……」

 虚ろな目をしながら、優一はぼそぼそと呟いていた。

「おい、しっかりしろ!」

 高志はそんな優一の肩を揺らし、優一の目を覚ます。

「はっ! お、お前! どんだけ俺の精神に攻撃を加えれば気が済むんだ!」

「別に攻撃してるつもりはないんだが……」

「やかましい! クソ! リア充爆発しろ……」

 そう言いながら、優一は高志と紗弥のもとを去って行った。

「どうしたの?」

「気にしなくて良いと思う、いつもの事だから」

 状況がつかめない紗弥は、首をかしげながら高志に尋ねる。
 そんな紗弥に高志は溜息を吐きながら言う。
 紗弥は高志の腕に抱きつきながら、真顔で返答する。

「猫耳好きなの?」

「本当にいつから居たんですか……」

 高志は顔を片手で隠しながら、紗弥に尋ねる。
 軽く性癖がバレてしまい、高志は紗弥にからかわれながら店を出た。

「ねぇ、猫耳付けてほしい?」

「い、いや……別に……」

「フ~ン、本当に良いのかなぁ~?」

「紗弥さん……楽しそうですね……」

 すっかりお馴染みになってしまった紗弥の小悪魔のような表情に、高志は目を反らしながら、頬を赤く染めて返答する。

「楽しいよ、高志で遊ぶのは」

「せめて俺でじゃなくて、俺とにして欲しいです……」

 その後、二人はショッピングモールを歩きながら、目に付いた店を見て回って過ごしていた。
 そして現在、二人はクレープ専門店に入り、二人でクレープを食べていた。
 店内は少し混み合っていたが、ギリギリ入る事ができた。
 高志はコーヒークレープ、紗弥はストロベリークレープを注文し、店内で食べていた。

「高志、なんでコーヒー注文したのに、コーヒー味のクレープ頼んだの?」

「甘い物にはコーヒーが一番合うからな」

「じゃあ、違う味にすれば良かったのに」

「コーヒー味が好きなんだよ」

「それならまぁ……じゃあ、はいあーん」

 紗弥はそう言うと、高志の口に自分のクレープを押しつけて来る。

「え? あ、あーん……美味いな……」

 恥ずかしがる暇もなく、高志は人生初の「あーん」を体験する。

「よかった、じゃあはい私にも…」

「え? あ、あぁ……」

 口を開いて、高志のコーヒークレープを催促する紗弥。
 高志は頬を赤く染めながら、自分のクレープを紗弥の口元に持って行く。

「ん……コーヒーも美味しいね」

「咄嗟にしたけど、俺ら凄い事しなかった? しかも店内で……」

「良いじゃない、あっちのカップルもやってるし」

 よく見ると、店内の半数がカップルのようだった。
 一部ではあるが、高志達に触発されてか、あちこちでカップルが「あーん」をしている。
 その様子を見ると、恥ずかしさが軽減されたが、やっぱり恥ずかしいのは恥ずかしかった。

「私たちもカップルだから、別にやっても不思議じゃないでしょ?」

「ま、まぁ……そうだけど、やっぱり人前は恥ずかしいだろ……」

「じゃあ二人っきりだったら良いの?」

「……その時による」

「じゃあ、良いんだね」

「なんでそうなるんだよ……」

「そう言う顔してたよ?」

 高志は思わず、両手で顔を隠した

コメント

  • 榎倖生

    こういうのいいなぁ

    0
  • ノベルバユーザー240181

    素晴らしい

    2
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