99回告白したけどダメでした

Joker0808

198話

「……まぁ、伊敷君の性格上、それは難しいのかもしれないけど」

「それは褒めてるの?」

「貶してるの」

「今日の古賀さんは俺にも厳しいんですね……」

 誠実は志保の言葉を聞き肩を落とす。

「ん? それはそうと、お前らは二人でなにしてんだ?」

「え! あ、いや……わ、私達は……」

「デート?」

「ち、違うわよ!!」

 頬を赤らめて答える志保。
 誠実はうずくまる武司にも尋ねる。

「そうなのか?」

「あ、あぁ……俺はただの荷物持ちだ……お前みたいに綺麗なお姉さんと買い物なら、まだ俺だって元気でいるよ」

「綺麗じゃなくて悪かったわね!」

「あうっ!!」

 またしても武司が余計な事を言ってしまい、志保から殴られる。
 なんで学習出来ないんだろうと思いながら、誠実は武司を椅子に座らせる。

「とりあえず、お前らは静かに座ってろよ。店に迷惑だ」

 随分と騒いでしまい、あと少しで店員さんが注意に来そうな勢いだったので、誠実は二人に静かにするように言う。

「それもそうね……じゃあ、ここは武田のおごりで」

「人に暴行した上に、奢れとか……お前は山賊か!」

 武司と志保は席に着き、メニューを確認する。
 期間限定のお店だからか、結構良い値段がする。

「高!! こんなすんのかよ!」

「まぁ、こんなもんでしょ?」

「無理だぞ! 俺一人分でもやっとなのに、お前の分なんて出せるか!」

「男のくせに情けないわねぇ~」

「高校生のお財布事情は厳しいんだよ!」

 隣の席でワーワー騒ぐ二人を見て、誠実は溜息を吐く。
 相変わらずだなと誠実が思っていると、恵理が誠実に笑顔で尋ねてきた。

「ねぇねぇ誠実君。この二人は付き合ってるの?」

「付き合ってないですよ。どっちかって言うと、あまり仲の良い感じでは無いですね」

「ふーん……とりあえず一つわかったわ」

「何がですか?」

「誠実君って結構鈍感なのね」

「え? なんで俺?」

「ウフフ、そのうちわかるわよ。じゃあ私達はそろそろ行きましょうか」

「そうですね、早く帰りま……」

「さぁ! 今度は帽子を買いに行くわよ!」

「まだ行くんですね……」

 誠実と恵理は武司達に別れを告げて、店を出ようとする。
 すると武司は誠実に一言声を掛けてきた。

「あぁ誠実、健も来てるみたいだぞ」

「え、健が? 一人でか?」

「いや、女と一緒だったんだが……なんか訳ありっぽい」

「ふーん……わかった、会ったら自分で聞いて見るわ」

「おう」

 誠実は武司と志保と別れ、外に出て再び恵理の買い物に付き合う。

「恵理さん……早く帰りたいです……」

「おいおい、お姉さんとのデートが嬉しく無いのかい?」

「ここまで来ると嬉しくないです……」

 誠実と恵理は買い物を再開した。
 誠実は肩を落としながら、恵理の後をついて行く。





 健はショッピングモールに戻って来ていた。
 色々な事があり、気分は最悪で今すぐ帰って、集めたCDやDVDを処分したかったが、どうしても同じ趣味を持った仲間達に何も言わずに帰ることが出来なかった。

「おう、お前ら」

「あ、リーダー。なんかゲリラライブは中止みたいですよ」

 やっぱりかと健は思った。
 それもそうだ、健はその原因を作ったのに一役買っていたからだ。

「あーあ、残念だったっすね~」

「まぁ、中止なら仕方ないだろ?」

 話しをしながら帰路につく仲間を見ながら、健は心を痛める。

「まぁ、でもまたどこかであるだろ」

「そのときはまた全員で行きましょうね、リーダー!」

「ん……あぁ……そのことなんだが……」

「どうかしたんすか?」

「いや……突然で悪いんだが……俺は今日からファンをやめようと思う……」

「「「「え!?」」」」

 健の突然の話しに、一同は驚く。
 それもそのはずで、健はこのメンバーの仲で一番『エメラルドスターズ』を応援していた。 応援してきた期間も参加したイベントの数もこの中では一番だ。
 そんな健が突然ファンをやめるなんて言い出したら、メンバーはもちろん驚く。

「一体何があったんですか!?」

「まさか、今日のカラオケで何か!!」

「いや……まぁ……ちょっと個人的に色々あってな……悪い」

「でも、リーダー居なくなったら、このグループ成り立ちませんよ……」

「リーダーほどリーダーシップがある人間なんて居ないしな……」

 折角出来た同じ趣味を持った仲間なのに、裏切るような形になって申し訳ないと健は健は心の中で思っていた。

「さてはリーダー、新しい推しでも見つけました?」

「あ……いや……」

「あぁ、そう言うことか……なら仕方ないな、推しが変わったら」

「そうだな……でも、また皆でライブとか行きましょうよ!」

「え……い、良いのか? 俺はこのグループを抜けるつもりなんだぞ?」

「いや、それ以前に俺らは同じ趣味を持った人間じゃないですか」

「まぁ、これだけで疎遠になるのはもったいないよな」

 健はそう言われて、心の底でホッとしていた。
 また一人で趣味を楽しむ生活が始まるのかと、内心怖かった。
 このメンバーとのつながりは消えてしまうと思っていた。
 だが、健の予想は大きく外れた。
 それは健に取っては願ってもないことだった。

「………そうだな」

 確かに今日は最悪な日だった。
 しかし、健は本当に大切な何かに気がつけた気がした。

「じゃあ、今日は解散だ、全員気を付けて帰れよ」

「「「はい」」」

 健の言葉で、みんなそれぞれ家に帰って行く。
 健はみんなが帰ったのを確認した後、自分も帰路につこうと歩きだす。
 すると、健は近くの店で見知った顔を発見する。

「ん? あれは……」

 そこに居たのは、疲れ果ててベンチにもたれかかる誠実の姿だった。
 今日は知り合いに良く会う日だと思いながら、健は誠実のもとに近づく。

「おい、何やってんだ?」

「んあ……健か……武司の言うとおりだったな」

「あぁ、なんだ聞いてたのか……お前は何してんだ?」

「日曜日のお父さん……」

「相変わらず意味がわからんな……その買い物袋の山はなんだ?」

「一緒に来てる人が買ったもんだよ、今はトイレに行ってるけど」

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