99回告白したけどダメでした

Joker0808

177話




 誠実はバスに乗って、恵理の家に向かっていた。
 右手には海に行った際のお土産を持ち、太陽の下を猫背で歩く。

「あっつ……」

 先ほどまでクーラーの効いた自室で寝ていたせいか、外が以上に暑く感じる。
 早く行こう、そう思いながら誠実は足を進める。
 ようやく恵理の家のアパートが見えて来た。
 誠実は、もう少しでつきますと恵理にメッセージを送り、歩みを進める。
 後数メートル、そんな時だった、誠実のスマホが音を出して鳴り始めた。

「なんだよ……恵理さん?」

 スマホをポケットから取り出し見てみると、電話の主は恵理さんだった。

「もしもし、なんですか?」

『あぁ、誠実君? 悪いんだけど、暑いからアイス買ってきて~』

「………」

 誠実はその言葉に、炎天下の中の道路の真ん中で立ち尽くす。
 あと数メートルで目的の場所だったと言うのに、まさかのこのタイミングで買い物を頼まれてしまった。
 コンビニは、今居る場所から道を引き返して、約五分。
 それほどの距離では無いが、この暑さでしかももうすぐゴールと言うところで簡単にそう言われると腹が立つ。
 しかし、急にお邪魔して良いかと聞いたのは誠実だったので、ここは怒りをグッと堪える。
「わ、わかりました……何が良いですか?」

 誠実は買ってくるアイスの種類を恵理から聞いて、道を引き返してコンビニに向かう。

「何がイチゴ系のアイスだよ……全く」

 誠実はアイスを買い終え、再び恵理の家の前まで来ていた。
 これでやっと休める。
 そう思った誠実の元に、またしても恵理からの電話が来る。
 嫌な予感がしながらも、誠実は電話に出る。

「もしもし?」

『あ、誠実君? ごめん、ちょっとお茶も買って来てくれない?』

「oh……」

 まさかの言葉に、誠実は思わず口から言葉がこぼれる。
 本当にこの人には一言言ってやろうかと思ったが、誠実はまたしても怒りをグッと堪える。
(いや、他に買ってくる物が無いかを聞かなかった俺が悪いな……)

「わ、分かりました……」

『ごめんね~、お願い』

 誠実は電話を切り、スマホを握って再びコンビニに戻って行く。
 
「あの店員……また来たのかこの人、見たいな目で見やがって……」

 誠実はお茶を購入し、再び恵理の家の前に戻って来ていた。
 しかし、誠実はなんだか嫌な予感がした。
 念のためスマホの電源を落としておこうと、誠実はポケットからスマホを取り出す。
 誠実がスマホを取り出した丁度そのとき、再び恵理から電話が掛かってきた。

「………」

 誠実は静かにスマホをしまい、深呼吸をした後で恵理の家の前までダッシュする。
 無言で恵理の部屋のドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。

「は~い」

 恵理の声が聞こえた後、部屋のドアが開き、恵理が姿を表す。
 その瞬間、誠実は叫ぶ。

「いい加減にして下さいよ!」

「うわ! ビックリしたぁ~……何を怒ってるの?」

「アンタが何回も俺をコンビニに戻そうとするからだろ! この炎天下の中! さっさと室内に入れろよ! 熱中症で倒れるぞ!」

「え! そんなにお姉さんの部屋に入りたかったの? そ、そんな必死に言われると、お姉さん身の危険を感じちゃう……」

「アンタの体なんかどうでも良いんだよ! 俺は暑いの!」

「な……ど、どう言う意味よ! お姉さんの体より、うちのクーラーが目的ってわけ?!」

「そうですよ! 炎天下の中を何回往復したと思ってんだ!」

「あ、そうそう、ついでにお菓子も買ってきて貰おうと思ってたんだ、買ってきて」

「自分で行け!」

 そんな会話を繰り広げた後、誠実はようやく恵理の部屋に入れて貰った。
 クーラーが効いた部屋、それだけで誠実にとっては天国だった。
 正直クーラーさえあれば、後はどうでも良い。
 女子大生の部屋だとか、モデルの部屋だとかは今の誠実にはどうでも良かった。

「あぁ……生き返る……」

「誠実君、女子の部屋でその言葉が危ないと思うわよ?」

「あ、大丈夫っす、恵理さんになんと思われても気にならないんで」

「そ・れ・は! どう言う意味かな? 誠実く~ん」

「イダダダダ!! ヘッドロックをしながら、ペットボトルでこめかみをグリグリしないで下さい!」

 部屋に入れて貰い、誠実は座ってくつろいでいた。
 恵理の部屋は、女性らしい部屋で、大きな姿見が置いてあったり、化粧台が置いてあったりしていた。
 あまりジロジロ見るのも悪いと思い、誠実は恵理はお茶を準備してくれている間、スマホを弄って暇を潰す。

「まったく、急に来たいなんて言うから、お姉さんビックリしたよ」

「それに関してはすみません。でも、この前の約束覚えてますよね?」

「覚えてるわよ、お姉さんとまたデートしたいんでしょ?」

「違います」

「そんな冷めた目で言わなくても……冗談よ、買い物でしょ? なんで私に付き合って欲しいの?」

 恵理は誠実の正面に座り、麦茶を出す。

「実は、八月って美奈穂の誕生日なんですよ。だからプレゼント選ぶの手伝ってほしくて」

「ほうほう、なるほど~、そう言えばそうだったわね。ちなみに私の誕生日は……」

「じゃあ、お願いします」

「話しを最後まで聞かないのはなんでかな?」

「正直どうでも良いんで」

「お姉さん、急に買い物に付き合いたく無くなって来たかも~」

「………はぁ……この人めんどくさ」

「あ! 今面倒くさいって言った! 年上の女の人に向かって、面倒くさいって言った! 男はいつもそうだよ! 何かあると面倒くさいって!」

「なんすか恵理さん急に……」

「そうですよ~、私はどうせ面倒くさい女ですよ~だ」

「はぁ……謝りますから、相談にのって下さいよ」

 なんとか説得と、謝罪を繰り返し、誠実は恵理の機嫌を戻した。
 相談する相手を間違えたかとも思ったが、今更もう良いですとも言えないので、誠実は恵理と美奈穂の誕生日プレゼンについての話しを始める。

「アクセサリーは? ネックレスとかなら良いんじゃ無い?」

「そう言われても、男の俺には何が良いのかさっぱりで……」

「う~ん……これなんかどう?」

 恵理は女性雑誌を取り出し、アクセサリーの紹介ページを見せる。

「こう言うのが流行なんですか?」

「まぁ、正直無難なところね、これをあげれば、とりあえず女の子は嬉しいっていう商品かな?」

「なるほど……って! この値段なんすか! 四万って!」

「まぁ、普通はこれくらいよ? ブランド物だし」

「却下です! 高校生のお財布事情くらい考えてください! 旅行に行ってあんまり金もないんですから!」

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