99回告白したけどダメでした

Joker0808

113話

「まぁ、その気にしないでよ! やっぱり好き嫌いはあるし!」

 彼は私の表情を伺い、慌ててそんな事を言う。
 どうやら、彼は本当に私の事を諦めたのだと、私は気がついた。
 ほっとすれば良いのか、悲しめば良いのか、よくわからない感情が私の中にはあった。
 そして彼は、私に続けて言う。

「だからさ……その……友達にはなれないかな? 俺たち」

「え?」

 突然の彼の提案に、私は顔を上げて彼を見る。
 照れくさそうな顔で彼は笑いながら、私に向かって話しを続ける。

「いや……もう俺たちってその……他人とは呼べない関係って言うか……俺たちの関係って 説明するのが難しいじゃん? だから、改めて友達になりたいなって……」

 それは告白前になっておく関係ではないのだろうか? などと思った私だったが、全然嫌な感じはしなかった。
 今まで、彼には迷惑を掛けっぱなしだった。
 その借りを今度は友人として少しづつでも返せればと、私は考えていた。
 しかし、私は彼に一つ確認して置かなければならない事があった。

「伊敷君は良いの? その……私は貴方をなんども振ってるし、それに貴方の私にへの想いを踏みにじったのよ? それでも貴方は私と友達になりたいの?」

 私がそう言うと、彼はやっぱり笑顔で私に返答してきた。

「俺はもっと山瀬さんと仲良くなりたいかな? 確かに振られちゃったけど、それで今までの関係を忘れて、他人として過ごすのもなんか嫌だし、どうせなら友達になりたいなって……」

 本当に彼は優しい、そう改めて私は思った。
 普通は、あんな事をした人間とはもう話しもしたくないはずだ。
 なのに彼は、いつもと変わらない笑顔で私にそんな話しをしてくる。

「え! ちょっ! 山瀬さん?!」

 気がつくと私の目からは涙があふれていた。
 今までの人生でここまで他人に思われた事があっただろうか?
 そう考えると、私はいままで彼にしてきた事を思い出し、酷く後悔した。
 なんでこんなに優しい人に、あんな事をしてしまったのだろう、なんであんな酷いことを言ってしまったのだろう、なぜ彼を信じなかったのだろう。
 そんな事をばかり考えてしまう。
 気がつくと、彼が私にハンカチを渡してくれた。

「そ、その……あの……そんなに嫌なら……嫌って言ってくれれば……」

 どうやら勘違いをしているらしい彼。
 私以上に涙を流している。
 ハンカチが必要なのは、彼ではないか? なんて思いながら、私は笑顔で彼の誤解を解く。
「私で良いなら喜んで」

 彼はそう言った私の顔を見た瞬間、どこかほっとした様子で、床に座り込む。

「はぁ~よかったぁ~……また気持ち悪がられたかと思って、ひやひやしたぁ~」

 私は彼から受け取ったハンカチで、涙を拭く。
 そして安心する彼を見て、私は強く思った。
 彼に少しづつでも償っていこうと、彼の為に出来る事を探そうと。
 私は床に座る彼に手を差し出す。

「私、結構面倒くさいよ?」

「大丈夫! 俺も面倒くさいから!」

 そう言って彼は私の手を握って立ち上がる。
 もっと早くに彼とこうなりたかった。
 本音を言えばそうだが、私はこうも思った。
 今からでも遅くはないと…。

「で、早速なんだけどさ」

「どうかしたの?」

「美沙の事教えてくれません?」

 彼は今現在、美沙に告白されて返事を保留している。
 きっとアドバイスが欲しいのだろう。
 しかし、私も美沙と出会ったのは高校に入学してからなので、正直そこまで力になれるかわからない。

「私に出来る事なら、協力するよ」

「マジですか、お願いします! 正直あいつがからかってるのか、本気なのかもよくわからなくて……」

「美沙はそういうところあるからね、でも……良い子だよ?」

「悪い奴ではないんだろうけど……う~ん……」

 こんな感じで、私たちは友達としての関係を始めた。






 誠実は上機嫌で新聞部の部室に向かっていた。

「いや~よかったよかった!」

 今までモヤモヤしていた事に決着がついたのと、綺凜と友達になれた事が誠実はうれしかった。
 まだまだ解決していない問題も多いが、それでも一番の問題が解決し、誠実は内心ほっとしていた。
 鼻歌を歌いながら、誠実は新聞部の部室の扉を勢いよく開ける。

「遅れてすんませーん!」

 そして扉を開けた誠実は、一瞬のうちに元気がなくなり、目の前の状況を見て言葉を失う。
「ど、どうしたんだ! お前ら!!」

 床に倒れる健と武司。
 顔色は真っ青で、泡を吹いて倒れていた。
 一体何があったのか、誠実は周囲を確認する。

「そういえば、吉田先輩は!?」

「ここにいるわよ」

 暁美はまど際で椅子に座って写真を眺めていた。

「こ、これは一体!」

「あぁ、伊敷君が来る間、私が撮ったスクープ写真を見せてたんだけど……ちょっと刺激的過ぎるものがあってね」

「な、何だと! 一体どんな写真なんだ……」

「見る? 正直伊敷君もこの二人みたいになるわよ?」

 正直健と武司のようにはなりたくない誠実、しかし写真一枚で人が気絶して泡を吹くなんてありえあない。
 逆にどんな写真なんだと興味が勝ってしまった。
 誠実は暁美の元まで行き、写真を受け取りおそるおそる写真に目をやる。
 そして……

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

 誠実は泡を吹いて倒れた。

「あーあ、だから注意したのに」

 誠実が見せられた写真には、現代社会の教師である富美登米子(ふみ とめこ)先生63歳が、臨海学校の時に着た、ビキニ写真が写っていた。
 年齢的にも相当無理があり、その年の臨海学校で男子生徒は皆元気がなかったらしい。
 それからしばらくして、誠実達は意識を取り戻した。

「あぁ~、死ぬかと思ったぜ」

「年を考えて欲しいものだ」

「ビキニって、着る人によっては兵器になるんだな……」

 三人が若干トラウマを刻まれたところで、暁美は本題に入る。

「良く集まってくれたわ! それじゃあ、新聞部再建の作戦会議を始めましょうか!」

「「「うぃー」」」

「あんたらやる気出しなさいよ?」

 不抜けた声で返事をする三人に、暁美は口元をぴくぴくさせながら言う。

「んな事言われてもなぁ~来週から夏休みだし」

「時間がなさ過ぎる」

 ホワイトボードの前に用意された椅子に並んで座る、誠実達三人。
 その前で立って話しをする暁美に、健と武司は力なく言う。

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