99回告白したけどダメでした

Joker0808

96話




「う~む、あいつらがそんな関係だったとは……」

「まぁ、おかしくはないんじゃない? 男と女なんだし」

 誠実と美沙は食事を終えて、図書館に戻る途中だった。
 先ほどの武司と志保の関係が気になる誠実。

「でも、武司にもついに春が……」

「今は夏よ?」

「そういうことじゃねーよ」

 そんな話をしている間に、二人は図書館に到着する。
 先ほど同様に並んで座り勉強を開始する。

「ん? なんだか外が騒がしいな……」

「あぁ、なんか近くの自然公園で撮影やってるみたいよ。何の撮影かは知らないけど」

「ふーん、まぁ俺には関係ないな、勉強しないと夏休みが無くなっちまう」

「でも、誠実君って前回学年一位でしょ? どうせ今回も楽勝なんじゃ……」

「前回のテスト終わってから、全く勉強して無いからな」

「少しは、その努力を生かそうとか思わなかったの……」

 外には人が集まって来ており、少し騒がしかった。
 撮影だと言うのだから、ドラマかなんかの撮影だろうかと考える誠実。
 しかし、誠実にはそんな事を気にしてられる余裕はないので、勉強に集中する。

「はぁ~、やっぱり休まないで勉強ってのもきっついな~」

 勉強を再会してすでに二時間、流石に休憩でもしようと誠実と美沙は飲み物を買いに自販機に向かう。

「なんで、俺がお前と一緒に休憩しなくちゃいけないんだよ」

「まぁまぁ、誠実君もそろそろ休憩しようって思ってたくせに~」
 
 自販機で飲み物を買い、誠実と美沙は外のベンチに座って休憩する。
 館内は飲食禁止の為、暑い太陽の下で二人は休憩していた。

「あっついな~、これって汗が出るから、休憩にならないんじゃ……」

「仕方ないわよ……それにしても本当に暑い……」

 ぱたぱたとシャツの襟を動かす美沙の仕草に、誠実は少しの間見入ってしまった。
 また見ている事がバレたら面倒だと思い、誠実は美沙とは反対方向を向く。
 すると、向かいの自然公園の方にまだ人だかりが出来ている事に気がつく。

「まだやってるのか」

「ちょっと気になるね……行ってみる?」

「まぁ、生き抜くも必要か……少し見て帰ってこようぜ」

 そう言って誠実と美沙は自然公園に向かう。
 人が多くなかなか公園内が見えないが、なんとか見える位置まで来た誠実と美沙。

「撮影って、これって何の撮影だ?」

「多分、雑誌のモデルさんの屋外撮影じゃない? ほら、さっきから写真撮ってるよ」

「あぁ、そうだな。それにしても、それだけでなんでこんなに人が?」

 そんな疑問を浮かべていると、公園近くに止まっていたマイクロバスから、モデルが一人出てきた。

「あ、きたぞ!」

「おぉ、今日も可愛い~」

「顔小さいな……」

 ここに集まっている野次馬のほとんどが、そのモデルが目的の用で、スマホのカメラなどで出てきたモデルを撮影したりしていた。
 一体どんなモデルさんなのだろうと、誠実もみんなが見ている方を向く。
 するとそこには……。

「み、美奈穂?!」

 そこには、いつも以上に美少女になった美奈穂が、おしゃれな服を着てマイクロバスから下りて着ていた。

「え……あれって確か誠実君の……」

「あぁ……妹だ」

「だよね? すっごく可愛い~」

 なにやら興奮した様子ではしゃぐ美沙をよそに、誠実は早くこの場を離れなければと、美沙の手を引いて公園から出て行く。

「え、見なくて良いの? 妹さんの撮影だよ?」

「いや、そろそろ行こう……こんなところが見つかったら……」

「見つかったら何なの?」

「え?」

 公園を出ようとしていた誠実だったが、すでに遅かったらしく、美奈穂に見つかり後ろから声を掛けられる。

「あ……み、美奈穂さん……お疲れ様です」

「勉強してるんじゃないの? ひ・と・り・で」

「あ……いや、これは……その……」

 気がつくと、誠実と美沙、そして美奈穂の周りを取り囲むように野次馬が3人を見ていた。 誠実はこうなるから、直ぐにこの場を離れたかったのだ。
 最近、なぜか誠実が女子と一緒にいると最近不機嫌になる美奈穂。
 そんな美奈穂に美沙と一緒に居るところを見つかってしまったら、更に機嫌を損ねてしまう。
 誠実はそう考えて、見つからないように公園を離れようとしたのだが……。

「で、勉強って何の勉強してたの?」

「まて、俺の話を……」

 明らかに怒りをむき出しにしている美奈穂に、誠実はとりあえず落ち着いて話を聞くように促す。
 しかし、誠実が説明をする前に、美奈穂の後ろから大声が聞こえてくる。

「もぉ~、どうしたの美奈穂ちゃん! 急に野次馬の中に入っていって! 撮影始まるのよ!」

「中村さん、少し待ってください」

「だめよ! もう! 久しぶりやっと撮影に来たと思えば、何をしてるの!」

「じゃあ、モデルやめます」

「カメラさ~ん、休憩はいりまーす!」

 突然現れた、おねぇ系のおじさんによって、緊迫した空気は消えた。
 他の野次馬は、一体何が始まったのかと、誠実達を見て困惑している。

「とりあえず、こっち来て」

「い、いや……俺たちは……」

「良いから」

「はい」

「あはは、兄弟仲いいなぁ~」

「美沙、頼むから少し黙っていてくれ……」

 誠実と美沙は、美奈穂に連れられマイクロバスの中に案内される。

「いいのか? 俺らがこんなところに居て?」」

「まぁ、外に居て話すよりは良いわよ。それよりも、随分仲が良いのね」

「だから、これは……」

 車の中には誠実と美奈穂、そして美沙だけなので気にせずに話が出来るのだが、誠実はそもそもどうして美奈穂がこんなに不機嫌なのかがわからなかった。

「なんで、お前がそんな怒るんだよ!別に俺はお前に迷惑なんて掛けてないぞ?」

「女遊びが趣味の兄なんて私は嫌なだけよ。ちゃんと返事もしないまま、色々な女の子にいい顔して……そのうち刺されるわよ?」

「誰にだよ……」

 自分に限ってはそんな事は絶対に無いと思っていた誠実。
 そういうのは、イケメン俳優とかアイドル張りに顔のいい人にしかない事だと思っていた。
「美奈穂ちゃん! 入っても良い?」

 話の途中で、車の外から先ほどのおねぇ系のおじさんが声を掛けたきた。

「どうぞ」

 美奈穂が許可すると、そのオネェ系のおじさんは満面の笑みで車内に入って来た。
 一体この人は誰なのだろうか?
 誠実の中では、この謎のおじさんと妹の関係が気になって仕方なかった。

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