99回告白したけどダメでした

Joker0808

84話

 モヤモヤした気持ちの中、誠実は授業を受けていた。
 武司と健の言っていることは正しいと心の中で意識していても、結局誠実はわからなくなっていた。

「俺……何がしたかったんだろ……」

 結局自分は何をした気でいたのか、誠実はわからなくなっていた。
 ただ好きな人に泣いて欲しくなかった。
 それだけのことなのに、なぜこんなにも難しいのか、誠実にはわからなかった。

「誠実君」

「ん? どうかしたの沙耶香?」

 ぼーっと考える誠実の元にやってきたのは、沙耶香だった。
 心配そうな表情で誠実を見つめ、優しく話し始める。

「大丈夫? なんだか朝より元気ないよ?」

「あぁ、大丈夫だよ、そんなの気のせい気のせい! それより、次の授業ってなんだっけ?」

 これ以上沙耶香に心配させたくないと、誠実はわざとらしく笑って見せる。
 しかし、沙耶香も数ヶ月ではあるが、ずっと誠実を見てきたのだ、誠実の作り笑いくらいには気がつくようになっていた。
 誠実が無理をしていることに気がついた沙耶香は、更に表情を曇らせる。

「やっぱり……女の私より………武田君とか、古沢君の方がいいよね……」

「沙耶香、噂信じてなかったんじゃないの?」

 沙耶香の言葉を誠実は全力で否定し、なんとか安心させようと誠実は話し続ける。

「そんな心配すんなって! それよりも今週からテストだろ? 勉強教えてくれよ!」

 話を変えて沙耶香に頼む誠実。
 誠実の言葉に、沙耶香はピクリと反応し、顔をほんのり赤くしながら誠実に尋ねる。

「そ、それって……二人っきりで?」

 その言葉に、誠実は間違った考えを働かせてしまう。
 二人で勉強するより、みんなで勉強した方が教え合いがスムーズに出来て良いのではないかと考えた誠実。

「いや、みんなにも声かけてさ! 二人よりも大勢の方が教え合いとか出来……」

 そこまで言ったところで、沙耶香が口を膨らませてあからさまに不機嫌になる。
 誠実は、変なことを言っただろうか? と自分の言ったことを振り返るが、わからなかった。

「あ、あの…沙耶香さん……どうかなさいました?」

「……二人っきりじゃないんだもん」

「い、いや…あの…だって大勢の方がはかどるかと思って……」

 プイっとそっぽを向く沙耶香に、誠実は困り果ててしまう。
 何が気に入らなかったのか、誠実はわからず、改めて自分の提案を振り返る。

「誠実君、学年一位だし、大丈夫なんじゃない?」

「い、いや、あのときは頑張れるきっかっけがあったからで……俺は基本馬鹿だし……」

 沙耶香は少し困らせてやろうと、意地悪をしていた。
 元気のない誠実に元気になって欲しかったのもあるが、少しは自分に興味を持って欲しかったのだ。
 そろそろ、勘弁してやるか。
 沙耶香はそう思って、誠実の方に笑顔で振り返る。

「冗談だよ、ごめんね、誠実君が私と二人っきりは嫌なのかと思って!」

「そ、そんなことねーよ! 今回は人数が多い方が良いと本気で思ったから……」

「うふふ、なら良いよ。私も声かけて見るね、でも次のテスト勉強の時は二人っきりが良いな……」

 顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに言う沙耶香に、誠実も思わず顔を赤らめる。
 そんな沙耶香の表情や態度を見て、誠実は改めて思う。
 沙耶香もすごく可愛くて優しい美少女なのだと。

「あ、あともう一つだけ!」

「ん? どうかしたか?」

「二回目の告白って……誰からされたの?」

 誠実と沙耶香の間には、先ほどまでの和やかな空気はない。
 今あるのは、凍り付いてしまうようなぐらい冷たい空気だった。





 誠実が沙耶香に美沙のことを説明した後、誠実は午後の授業を受け終え、現在は放課後だった。
 午後の授業中、すさまじい視線を沙耶香から受けた誠実は、見られているという緊張状態が続いた為、いつも以上に疲れていた。

「あぁ~なんかいつも以上に疲れた……」

「なんか、前橋からガン見されてたけど、なんかあったのか?」

「まぁ……いろいろ……」

 帰り支度を済ませた武司は、誠実の机の元にやってきて尋ねる。
 誠実の疲れた様子を見た武司は誠実の肩に手を置き、温かい目で誠実を見る。

「とりあえず、結果は結果だ、今更あがいたって何も変わらん、今はテストに集中しようぜ」

「あぁ………あ、そういえばテストのことで相談何だけどよ、テスト勉強沙耶香とかの勉強出来る連中に教えてもらおうぜ」

「それは良いけどよ、前橋以外のメンバーは誰なんだ?」

「俺と、健、武司、あとは料理部の誰かじゃないかな? あの部頭良さそうな子が多いし」

「そうか? どっちかって言うと、俺らと同類が多そうだと思うんだが……」

 武司と誠実がテストについて話していると、健が欠伸をしながら二人のところにやってきた。

「何の話をしてるんだ?」

「いや、テストのことでな……」

 誠実は健に武司と話していた話を伝える。
 すると健は、無表情のままピクリと眉を動かし、拳を握りしめて言う。

「それは面白……いや、頼もしいな」

「面白いっていった? お前、今面白いって言った?」

「気のせいだ誠実。そんなことよりも今はテストだ」

「絶対言ったよな? 俺の目を見て絶対言ったよな?」

 沙耶香と一緒にと言った瞬間、健は目を輝かせたことを誠実は知っていた。
 健と武司は、誠実と沙耶香の関係がどうなるか常日頃から気になっている。
 それを知っている誠実は、この二人が何か余計なことをするのではないかと不安だった。

「んで、いつからなんだ? 今日はもう火曜だぞ?」

「あぁ、一応図書室で今日の放課後からってことにしてる。まぁ、これる人だけって話だから、そこまで集まらないだろうけど」

 急な提案であった為、誠実は武司と健、それに沙耶香位のメンツだと考えていた。
 誠実たちは約束通り、学校の図書室に向かう。

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