99回告白したけどダメでした

Joker0808

48話

「ふざけんなっ!!」

「誰だ!!」

 誠実は叫んだ後に、ハッと我に返った。
 この状況はまずい、見るからにガラの悪い連中に絡まれるのはもちろん、自分が綺凛と知り合いだとバレれば、口止めに何をされるかわからない。

「ちっ!」

 誠実はその場からダッシュで逃げだす。
 後ろからガラの悪い連中が追いかけてくる、誠実は人通りの多い場所に出ようと、必死に走る。
 何とか商店街にたどりついた誠実は、人ごみに紛れ、逃げることに成功した。

「はぁ……はぁ……もう、大丈夫か」

 商店街のベンチに座り、息を整える誠実。
 先ほど盗み聞いた話を思い出すと、誠実は段々腹が立ってきた。
 何とかしなければ、誠実はそう思うが、何をしたら良いかわからない。
 どうすれば、この事実を綺凛に信じてもらえるか、誠実は必死に考える。
 しかし、誠実はとっくに振られた身であり、しかも綺凛からはあまり信用されていない。

「……どうする」

 誠実は一人悩んだ。
 あの最低男が、綺凛の婚約者だとしたら、なんとしてでもその婚約を止めなければならない。
 そうしなければ、綺凛が何をされるかわからない。
 一人悩みながらベンチに座っていると、誠実は誰かから肩を叩かれた。

「君、ちょ~っと良いかな?」

 肩を叩いてきたのは、先ほどの柄の悪い連中の一人だった。
 誠実はそのまま商店街の裏路地に連れていかれた。

「ぐっ!」

「おいおい、マジかよ。こいつ綺凛と同じ学校かよ」

 腹を殴られ、財布を取られた誠実。
 財布の中に入っていた学生証から、直ぐに綺凛と同じ学校という事がバレてしまった。

「駿、どうする? 口止めしとくか?」

「それも良いが、もっと面白いことしようぜ~」

 駿はニヤニヤ笑いながら、倒れ込んだ誠実の髪の毛を掴み、顔を無理やりあげさせる。

「お前、なんだ? 綺凛が好きなのか?」

「だったらなんだ……この人間のクズが」

「あ? フン!」

「がはっ!」

「調子づくな、クソガキ。別にバラしても良いぜ? ま、お前の話を信じる奴がいれば、だけどな!」

 駿を含めた柄の悪い連中が大声をあげて笑い、その場を去っていく。
 殴られ、蹴られ、誠実はボロボロだった。
 駿の言葉の意味がいまいち良くわからない誠実。

「クソ!! どうする……」

 駿のような男に綺凛を好き勝手されるのが、誠実は我慢ならなかった。
 誠実は殴られた腹を押さえながら、家に帰宅する。

「ただいま……」

「ん、おかえ……どうしたのよ!」

 帰宅した誠実を出迎えたのは、美奈穂だった。
 先に帰宅していたらしく、ラフな部屋着姿でリビングから誠実を出迎えた。
 美奈穂は、誠実のボロボロな姿に驚き、急いで駆け寄って来た。

「あぁ、ちょっと公園で友達とふざけてて……あはは」

 誠実は美奈穂に心配かけまいと、嘘をついた。
 しかし、美奈穂はそんな誠実の嘘を簡単に見抜く。
 
「嘘でしょ? なにがあったの?」

 美奈穂の真っすぐな視線に、誠実はため息をついて笑顔で答える。

「心配してくれてありがと、でも大丈夫だ。心配いらねーよ」

 誠実はそう言って美奈穂の頭をなでる。
 美奈穂は、頭を撫でられ、顔を真っ赤にして誠実に言う。

「な、なに言ってんのよ! 別に心配してないわよ! ただ怪我とかして帰ってこられたら、こっちの気分が悪くなるのよ!!」

 誠実はそんな美奈穂を見て笑みを浮かべ、自分の部屋に向かう。
 誠実の事が心配な美奈穂は、後ろからついていった。

「大丈夫だって、おまえ、最近やたらと俺に優しいな」

「そ、そんな事ないわよ! 明日の約束、覚えてるでしょ? そんな体で行けるの?」

「あぁ、大丈夫だって、眠ればすぐに回復する」

「そう?」

 心配そうに誠実を見つめる美奈穂。
 誠実は昔、自分が怪我をして、美奈穂が大泣きした日の事を思い出す。
 昔から何も変わらない、優しくて良い妹だと誠実は思いながら、もう一度美奈穂の頭を撫でる。

「やっぱり、お前は変わらねーな。変わったのは体だけで安心した」

「何それ? セクハラ?」

「褒めてんだよ、ガチでそういう事を言うな、そっちの方が傷つくわ」

 美奈穂は頭を撫でられ、顔を真っ赤にしながら、誠実にそういう。

「あんま無理はしないでよ! 私のせいで体を壊されても困るし……」

「はいよ」

 美奈穂はそう言い残して、誠実の部屋を後にした。
 部屋に戻った美奈穂は、ベッドの上に寝転がり、頭を抱えて激しくゴロゴロしていた。

(おにぃが私の頭撫でた!! 久しぶりだった!! )

 隣の部屋で美奈穂がそんなことを思いながら、ゴロゴロしているなんて思いもしない誠実は、部屋で着替えを済ませて一人考えていた。

「何とかこの事実を山瀬さんに……」

 そう考える誠実だったが、今の誠実と綺凛の関係は最悪だ。
 とても会って話なんてできないし、きっと信じてはくれないだろう。

「あ、そういえば……」

 誠実はそこで、美沙の存在を思い出した。
 美沙は綺凛の友人であり、何かと学校では良く一緒に居るらしい。
 彼女が話せば、少しはこの出来事をわかってもらえるかもしれない。
 誠実はそう思い、直ぐに美沙に電話を掛けた。

『はいは~い、どうしたの? 早速電話してくれるなんて、うれしいことしてくれちゃって~、お風呂入ってたけど、急いで出てきちゃったぞ~コノヤロウ』

「あ、そうか、なら落ち着いてから掛けなおしてくれ~コノヤロウ」

『良いわよ、面倒だし。どうかしたの?』

「あぁ、実はな……」

 誠実は先ほどの出来事を美沙に話す。

『ふ~ん、そんなことがね~』

「あぁ、だから伝えてくれないか? その婚約相手の事をもっと良く調べた方が良いって」

『……伊敷君はさ、利用されてたのに、なんで怒りもしないで逆に綺凛を助けようとするの?』

「は? そんなの……」

 そんなの当たり前だろう。
 そう言おうとした誠実だったが、言えなかった。
 なんで当たり前なのか、わからなくなってしまったからだ。
 前だったら誠実は言えた。
 綺凛が好きだったから、綺凛の為なら何でもできると思っていた。
 しかし、今は違う。
 綺凛は誠実を利用していた。
 しかも他に好きな奴が居た。
 そいつが最低のクズだったからと言って、誠実が綺凛を助ける理由は無い。

『伊敷君、どうなの?』

「そ、それは……」

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コメント

  • ☆アルス★

    オブラートに包みましょう

    1
  • ノベルバユーザー240181

    こういう展開が一番つまらない

    2
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