グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第142話 群馬300ズ 前篇


 ――2100年5月19日 09時30分 日光要塞
 日光要塞、かっては世界遺産の日光東照宮があった所である。 かってという事は残念ながら10年前の群馬独立戦争グンマワ―で既に焼失している。
 燃やした人物はグンマー校副首席の赤城朱音あかぎあかねである。 理由としては、【燃やした方が敵さんに憎しみの炎が付くから】という極めて自己中な理論である。 米国等から非難を受けたが、【長崎と広島を燃やした米国に言われたくない】と一蹴している。 不都合な真実を付き当てられ、米国らは口を紡ぐ事になる。
 が、それで止まる朱音副首席では無く【世界遺産で無いなら良い】と在日米軍横須賀基地を襲撃。 横須賀米軍基地のガラスを割りながら、盗んだバイクで走りながら燃やした。 どうやら聞いていた曲の熱さに影響を受けてやった様である。 これ以後、ムカ着火ファイアした在日米軍と全国津々浦々で激闘を繰り広げる事になる。

 さて、それは置いといて要塞内の看護用ベッドで寝ている男が目を覚ます。
 『こ、こは何処ですか?』 「先生!患者さんが目を覚ましました!」
 看護婦が医者を呼びに行く。 白衣を着た男性医師が入ってくると男にライトを向けて瞳孔を確認する。
 「自分が誰だか分かるかな?」 『ハイ、照貴琉男できるおです』 「日本の首都は?」 『東京です』 「大丈夫の様だな、暫く安静にしている様に」
 男性医師は看護婦に何かを言うと部屋から出て行く。 デキルオが自分の体を見ると躰中に包帯や点滴が刺さっている。 彼もメンタルギアを注入されている事には変わりがないが、適合者《フィッタ―》では無い。 健康増進装置ヘルスマシンに入れて簡単に治療が出来るという訳ではない。
 『適合者《フィッタ―》の様に直ぐに回復とは行きませんね』 「両足の骨折に左肩の骨折、全治一カ月といった所だそうです」 『はーそうですか』
 ため息を付いていると窓から多数の輸送車や装甲車が見える。 乗っているのは少し肉付きが良い三十、四十代の男達である。
 「そうそう、今日から明智平に皆さん向かう様です」
 デキルオは壁に掛けられた日を見て驚愕する。 5月19日、12日から既に一週間経っていたのだ。
 そう、日光安全保障局N・S・Aが考えた明智平要塞攻略が始まる日なのである。 準備された兵力は凡そ50万と最新鋭の武器達が追随する。
 ■  ■  ■
 ――2100年5月19日 10時30分 日本ロマンチック街道
 そしてその部隊の先方は、国道120号の日本ロマンチック街道を進んでいる。 そんな彼らを上空から襲うのはグンマー校の航空隊である。
 「敵襲!!!」 「対空砲準備!」
 声を上げるのが早いかダダダッッツと銃撃音が響く。 五例に並んだ少年少女達がマニピュレーターの先に付いた30ミリ機関銃を放つ。 あっという間に装甲車が燃え上がり、隊員達をミンチにしていく。
 「航空支援は!?」 「駄目です!すでに来る途中で戦闘中です」 「糞ったれ!」
 そう言っている間にも航空隊は機関銃を撃ちまくる。 航空隊内の評価では対地評価は非常に悪い……。 だがこれだけ敵が一本の道で展開していれば、彼らは狙う必要が無いのだ。
 マニピュレーターの先に付いた30ミリ機関銃が唸りを上げる。 使っているのは、外装武器ペルソナであり弾が無くなる事は無い。 様は弾薬・燃料が不必要なA-10が飛んでいる様な状態である。
 あっという間に死体の山を造って行く。 勇敢な隊員が対空砲を発射するが外装武器ペルソナシールドで阻まれる。 
 「くそったれ!航空部隊の支援があれば」
 外装武器ペルソナシールドで何とか守られている装甲車の中で誰かが悔しがる。 そう言っているとこんどは大気を引き裂く音と共に多数のミサイルが姿を現す。 最初の数本は大地に刺さり、マギウスジャマーを発動する。 ジャマーにより外装武器ペルソナシールドが弱まった所に本命のミサイルが落下。 装甲車や隊員達が空に文字通り吹き飛ぶ。
 地上で彼が被害を受けているころ航空隊は何処で何をしているかと……。 彼らも同じように栃木県北部の茶臼山で、航空部隊は激しい戦闘を行っている。 眼下にはデコボコの穴が口の様に落下していく者達を待っている。
 「いったいこいつら何処から来たんだ!」
 艦橋の上で艦長が声を上げる。 彼が載っているのはG・Eジェネラル・エジソン製のオオスミ型強襲艦輸送艦【シモキタ】である。 エンジンは精神波動メンタルウェーブを使用し外装武器ペルソナで反重力を実現。 全長は180m、全幅は30m程の艦であり全通甲板が備わっている。 その艦のあらゆる所からは外装武器ペルソナが展開されている。
 およそ10艦の間を縫う様にして戦闘機と人間が飛びまわっている。 戦闘機はF-2戦闘機、人間はグンマー校である。 F-2は2000年から配備をされてから100年様々な改造をされ現役である。 一番の特徴は世界初の精神波動メンタルウェーブエンジンを使用している点にある。 これにより、長時間の飛行を可能にしている。
 対するグンマー校も世界初の精神伝導メンタルトランスエンジンを使っている。 背中に背負っているランドセル型外装武器ペルソナには多数の武器が入っている。
 いずれも、技術国日本が作りだした最新最速の武器である。 
 昔のF-2はF-35にはステレス製で劣っていたが、現在のF-2は操舵性や後続距離が有利である。 乗っているパイロットも自衛隊の年齢制限で乗れなくなった熟練パイロット達である。
 グンマー校は10年間ビーストと戦い、技術や知識を持った最高の操縦者である。 しかも、今回は最も練度が高い嬬恋村に所属している航空部隊である。
 互いに銃撃を行い、ミサイルを飛ばしフレアを出し避ける。 艦からも外装武器ペルソナ製のミサイルやレーザーが照射される。 まさに大空戦である。
 「これで、少しはグンマーも諦めてくれるか……」
 艦橋で艦長が呟いた時、となりの艦が影が出来ると同時に何かが降り立つ。 ベキベキっという音と共に艦橋が破壊され艦がくの字に折れ曲がる。 降下を始める艦には、全長100メートル程の観音像が立っている。
 『スタイリッシュに白衣観音が参戦』
 指先に乗っているのは先日まで能登を開放していた白衣加奈子びゃくえかなこ。 観音像は多数の腕を展開させ翅の様にすると空に飛ぶ。 艦は大地に落ちて行きやがて大爆発を起こす。
 「なんだ!観音像が飛んでやがる!攻撃っだ」
 『次はあの艦をヤロウ』
 観音像が腕を突き出し飛びかかり。 艦の外装武器ペルソナが一斉に襲いかかる。
 同時に爆炎が周りを包む。 空に大地に戦争はまだ始まったばかりだ。

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